【第12話:魔法都市の影】
数日の旅路の果てに、二人の視界に異様な光景が飛び込んできた。
荒野の先にそびえ立つ、巨大な螺旋状の岩山。
その周囲を、重力を無視して浮遊する無数の尖塔群。
空には箒に乗った影が行き交い、街灯の代わりに色とりどりの魔石が輝いている。
第二の都市――『魔法の都アークルーン』。
「……すげぇ。物理法則が仕事してねぇ」
カイは呆気に取られて見上げた。
剣の都の重厚な石造りとは全く違う、幻想的で、どこか狂気じみた美しさ。
「ここが、魔法の都……」
リリアも感嘆の声を漏らす。
だが、すぐに表情を引き締めた。
「気をつけなさい、カイ。
ここは学術都市だけど、同時に排他的な場所でもあるわ。
身分証のない余所者は、即座に魔力感知網に引っかかる」
『その通りだ。
上空に見えるあの薄い膜……あれは高密度の魔力スキャナーだ。
我のステルス機能でも、完全に誤魔化すのは難しい』
ノクスが警戒を促す。
「じゃあ、どうやって入るんだよ?
正面ゲートは検問があるし、空から飛んで入るわけにもいかないだろ」
カイたちは都市の外縁部、人気のない廃墟エリアに身を潜めた。
ここから都市内部へ侵入するルートを探さなければならない。
その時。
「――おやおや。ネズミが一匹、いや二匹かな?」
頭上から声が降ってきた。
カイとリリアは弾かれたように上を見上げた。
廃墟の崩れかけた壁の上に、白いローブを纏った人物が座っていた。
フードを目深に被り、顔は見えない。
だが、その手には不釣り合いなほど巨大な杖が握られている。
「誰だ!?」
リリアが剣を構える。
ローブの人物は、フッと笑うと、音もなく地面に着地した。
フードをゆっくりと外す。
現れたのは、中性的な顔立ちの小柄な人物だった。
片方の目には、複雑な術式が刻まれたモノクル(片眼鏡)を装着している。
眠そうな垂れ目だが、その奥にある瞳は、獲物を見つけた猛禽類のように鋭く輝いていた。
「ボクを知っているだろう?
……君たちの懐にいる『黒い球体』が、ボクを呼んだんだからね」
カイの心臓が跳ねた。
「……もしかして、あんたが」
その人物は、ニヤリと唇を歪めた。
「ようこそ、アークルーンへ。
そして初めまして、逃亡者諸君。
ボクの名はスレン。……君たちが探している、天才魔術師さ」
その笑顔は、味方のようでもあり、同時にカイたちを実験動物として見るマッドサイエンティストのようでもあった。
カイたち2人に新たな試練の幕が、今、上がろうとしていた。
第1章:剣の都 レガルス 【完】
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