【第11話:騎士団長の憂鬱】視点:ガルド
剣の都レガルス、王城の大広間。
かつてリーゼ王女が舞踏会で踊ったその場所には、今、巨大な棺が安置されていた。
『国葬』。
反乱軍によって殺害された国王と、行方不明となった(と発表された)第一王女を悼む儀式。
喪服に身を包んだ貴族たちが、ハンカチで嘘泣きをしながら参列している。
その最前列に、ガルドは立っていた。
(……茶番だ)
心の中で吐き捨てる。
国王を殺したのはガルドの部下であり、王女を死に追いやったのはガルド自身だ。
だが、この儀式は必要だった。
旧体制の終焉を演出し、新たな統治者――ガルドによる軍事政権の正当性を示すために。
「団長。」
副官が耳打ちする。
「王女の遺体が見つからないことについて、一部の貴族が騒いでいます。
生存説を流布している者も……」
「……粛清しろ」
ガルドは表情一つ変えずに告げた。
「不安分子は今のうちに取り除く。
『王女は反乱分子の卑劣な罠により、遺体も残らぬ最期を遂げた』……それで通せ」
「はっ」
副官が下がると、ガルドは一人、棺を見上げた。
空っぽの棺。
そこには誰もいない。リーゼ王女は、谷底へ消えたのだから。
ガルドは目を閉じた。
瞼の裏に、最期の瞬間の王女の顔が浮かぶ。
「そなたは生きろ」と、あの少年に叫んだ、凛とした表情。
(……なぜだ、リーゼ王女)
ガルドは自問する。
あんなEランクの小僧に希望を託すとは…。
力なき者に世界は変えられない。
力こそが秩序であり、正義だ。だから私は、あなたを斬ってでも力を求めた。
それなのに、なぜあなたの瞳は、私ではなく彼だけを見ていたのか。
「……黒鉄のガルド様」
背後から、不快なほど甘ったるい声が掛かった。
振り返ると、豪奢なローブを纏った男が立っていた。
商人の都から来た使者、ザガンの代理人だ。
「この度は、政権奪取おめでとうございます。
我が主ザガン様より、お祝いの品をお持ちしました」
男が精巧な装飾の宝箱を開けると、あふれんばかりの青いクリスタルが輝きを放った。
「これは?」
「軍資金、および新型兵器提供の証です。
……例の『ノクス』の捜索、難航しているようですね?」
男の目は笑っていない。
「我々も協力しましょう。
あの少年と魔具は、世界の秩序を乱すガンです。
徹底的に追い詰め、排除せねばなりません」
ガルドはクリスタルを受け取った。
冷たい。氷のように冷たく、無機質な感触。
(……商人の都。食えない連中だ)
だが、今の剣の都には資金が必要だ。
復興し、軍備を増強し、七都市を統一するためには、悪魔と手を組むことも厭わない。
「……礼を言う。ザガン殿によろしく伝えてくれ」
ガルドは背を向け、歩き出した。
その背中は、以前よりも大きく、そして孤独に見えた。
王女殺しの罪を背負い、修羅の道を行く。
もう後戻りはできない。
カイという「不確定要素」を消し去るまで、彼の戦いは終わらないのだ。
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