【エピローグ:八番目の都市】
一年後。
アル=ヴェルド大陸に点在する七つの迷宮都市は、大きく様変わりしていた。
ザガンの野望が潰え、各都市のトップ会談により「七都平和条約」が結ばれたのだ。
その立役者は、言うまでもなく「世界を救ったEランク冒険者」とその仲間たちだった。
剣の都レガルス。
復興が進む王都の大広場で、盛大な式典が開かれていた。
「――誓います」
純白のウェディングドレスに身を包んだリリアが、少し照れくさそうに言う。
その隣には、慣れないタキシードを着て、ガチガチに緊張しているカイ。
「誓えよ、早く!」
神父役の……代わりを務める獣王ヴォルグが、豪快に叫ぶ。
「ち、誓います!!」
カイが裏返った声で叫ぶと、参列者たちから爆笑と拍手が巻き起こった。
最前列では、聖女の服を脱ぎ捨てて冒険者風の服を着たエルナが、スレンと一緒に満面の笑みで微笑んでいる。
その隣には、商売繁盛でウハウハのザラ。
さらに、影からこっそりと見守る盗賊王コラル(お祝いの品として、どこかの国の国宝が届いていた)。
『やれやれ。我の相棒が既婚者になるとはな。
これからは夜の冒険も忙しくなるな?』
胸元のノクスが茶化す。
「うるせぇ! 余計なお世話だっつーの!」
カイは顔を真っ赤にしてノクスを叩いた。
式の後。
バルコニーで風に当たる二人の姿があった。
かつて商人の都で、二人で夜景を見た時と同じように。
「……信じられないな。俺みたいなEランクが、A級のリリアさんと結婚なんて」
「ランクなんて関係ないって、あなたが証明したんじゃない!」
リリアがカイの隣に並び、手すりに寄りかかる。
左手の薬指には、カイが商人の都でプレゼントしたガラス玉の髪飾りと同じ色の、美しい宝石の指輪が光っていた。
「ねえ、カイ。これからのことだけど」
「ん?」
「私、新しい都市を作りたいの」
リリアは遠く西の空を指差した。
「七つの都市のどこにも属さない、誰もが自由で、誰の指図も受けない街。
……『八番目の都市』。なんて、どうかしら?」
カイは目を丸くし、それから笑った。
それはもう、かつての弱者の卑屈な笑いではない。
未来を見据える、冒険者の顔だった。
「いいな、それ。
俺の『逃げる才能』と、リリアさんの『戦う才能』があれば、どんな荒野でも開拓できる」
「ふふ。頼りにしてるの…ですわ。絶対!」
「ああ。任せとけ、ハニー」
「うふふふ。」
「あはははは。」
二人は笑い合い、そしてキスをした。
空には、どこまでも続く青い空間と、まだ見ぬ冒険の世界が広がっている。
七つの迷宮都市を巡る、長い長い逃走劇。
それは、最高のハッピーエンドで幕を閉じた。
だが、彼らの旅は、これからもずっと続いていくのだ。
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Seven Labyrinth Cities: The Billion-Gold E-Ranker
『七大迷宮都市逃走記──逃げ足だけが取り柄の最弱冒険者なのに賞金首10億ってマジですか!?』
【完】
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