【第97話:目を開けてくれ】
【タイムリミット:残り1分】
残り時間、1分。カイはリベレーターのトリガーを引き絞った。
砲身に使われたガルドの大剣『竜殺し』が、黄金に輝く。
込められたのは、エルナの血と、ノクスの魔力と、獣王たちの祈りと、ガルドの魂。
そして、カイの執念。
「リリアさんを……返せェェェェェェッ!!」
ズドオオオオオオオオオッ!!!!
極大のレーザーが放たれた。
それはザガンの展開した多重防壁を紙のように貫き、リリアを封印する水晶の核を直撃した。
パリン。
戦場の轟音の中で、その小さな音だけが、やけに鮮明に響いた。
小さな小さな亀裂。
それが蜘蛛の巣のように一気に広がっていく――
ガシャァァァァン!!!!
外側の大きな青い水晶が粉々に砕け、
中から、力なく倒れ込むリリアの身体。
「リリアさん!!」
カイはリベレーターを放り投げ、全力で駆け寄った。
スライディングで滑り込み、彼女を受け止める。
「……!」
抱きしめた身体は、まだ冷たかった。
息をしていない? 心臓は?
「頼む……頼むよ……目を開けてくれ……!」
カイの声が震える。
世界を救うとか、ザガンを倒すとか、そんなことはどうでもいい。
ただ、彼女が戻ってきてくれれば。
涙が溢れて、リリアの頬に落ちる。
その熱に反応するように。
「……ん……」
微かな声。
そして、長い睫毛が震え、碧色の瞳がゆっくりと開かれた。
焦点が合わない目で、彼女はカイを見上げる。
「……カイ……?」
「……っ!! ああ、俺だ! わかるか!?」
リリアは状況が理解できないようだったが、カイの情けない泣き顔を見て、ふっと小さく笑った。
「……なに、その顔。鼻水、出てるわよ……」
「うるせぇ! 誰のせいだと……」
カイは言葉にならず、リリアを強く抱きしめた。
温かい。心臓が動いている。
彼女は、帰ってきたのだ。
30日間の絶望的な旅の果てに。
「……遅いわよ、バカ」
リリアの手が、カイの背中に回された。
その力は弱かったけれど、確かにカイを信頼し、預けてくれる重みがあった。
「ただいま、相棒」
「……おかえり、リリアさん」
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