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沈黙の革命

作者: 豆苗4

 〇〇とは何かという問いに対して我々の提示し得るひとつのまともな回答。それが沈黙だ。しかもただ沈黙するのではなく、自ら進んで沈黙しなければならないのだ。それが唯一の選択肢なのだ。逃げの一手。それしかないのなら、そうであらねばならなかったのならば、それは消極的な沈黙なのではないか。いや、そうではない。これは積極的な沈黙なのだ。故に。そうでなければならなかったが故に。しかし、沈黙に何か特別な力があるわけではない。沈黙そのものが直接の答えなのではない。そんなことは決してありえない。断じて違う。弱々しく震える声がだだっ広い大聖堂に虚しく反響する。このようでない仕方があり得ただろうか? 別の仕方でのうのうと暮らしていくことに活路を見出すことが出来ただろうか? ……。あり得たのかもしれない。あり得なかったのかもしれない。そう言えることは何と幸福なことだろうか。あーだこーだ、ぴーちくぱーちく、うだうだと箸にも棒にもかからないような言葉を逐一積み重ねることによって少しでも近づいていると、コアな部分を捉え始めていると、救済されていると無邪気に信じていられる内は!無邪気さは時に何よりも残酷だ。救済が真に人を救うことがないのと同じぐらい。光差す退廃的なあの景色を暫しの間忘れてしまうほどに。


 革命はなにも輝かしいものではない。喜ばしくも何ともない。そんなはずあるわけが無い。知っていただろう? どうであるかなんて。それが始まるずっとずっと前から。光を失った。道を失った。風景を失った。色を失った。音を失った。辞めよう。もう辞めよう。失ったものを逐一数え上げるのは。感傷に浸ったところでそれはもう仕方のないことなのだ。当然得たものもあるだろう? 得たものは? ……。は? まさか何もない? そんなバカなことあるわけないだろう? ……。ならば、我々は何のために? 何のために! ……。


 詰め合わせの語彙。3等分されたいちごのショートケーキ。枯れかけたヨルガオの花の香り。糸をピンっと張ったような静寂があたりを支配する。始まる前に終わりを告げる物悲しい幕開けが。無様で不格好で無意味で無価値な沈黙の革命をここに。

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