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GREAT HISTORY〜大史伝〜  作者: アイラル
第三部 ミケ将軍タズドット侵略編

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第八十六話 結束

――「支え合う」という言葉ほど、美しく、そして残酷な響きを持つ言葉を他に知りません。


人は一人では生きられない。だからこそ、欠けた部分を埋め合い、互いの背を預け、手を取り合って明日を渇望する。それは人間が持つ最も尊い「美徳」であるはずでした。


けれど、リガナーヴの残照に照らされたこの場所で、レイ将軍という策士が編み上げた「支え合い」の正体は、そんな甘美な幻想とは対極に位置するものです。


知略という名の冷徹な刃、武力という名の剥き出しの牙。


そして、行政という名の血も涙もない搾取の仕組み。


それら異質なピースが、互いの「欠陥」を補完し合い、一つの巨大な『殺戮機構システム』として噛み合ったとき、そこに生まれるのは「絆」などという温かなものではありません。


それは、敵対する者全てを例外なく噛み砕き、平らげるための、逃げ場のない「機能」の完成。


かつて友を失った悲しみも、己の弱さへの不安も、今や全てが勝利のための潤滑油へと変質し、異形の怪物となったミケ軍を加速させていく。


「必ず生きて再会しよう」


その誓いは、明日を共に笑うための約束ではありません。


標的となった敵を一人残らず殲滅し、完全なる勝利という祭壇に、新たな犠牲を捧げ続けるための「血の契約」に他ならないのです。

さあ、静かに幕が上がります。


完璧な布陣。完璧な結束。そして、一糸乱れぬ完璧な絶望。


追い詰められたタズドットの将、ボントゥス・エクストランドに捧げられるのは、慈悲なき『機能』による、冷徹なまでの終わりの宣告。


――支え合う手が、誰かの首を絞めるための縄に変わるその瞬間を、どうか見逃さないでください。

 ジギフリット副将軍たちとの異質な団欒と、互いの弱点に対する謙遜と笑いを経たことで、レイ将軍は、戦術的な不安から解放され、やる気も十分に出た。


 彼の表情は、再び冷徹な知略家の顔に戻ったが、その瞳の奥には、指揮官たちへの信頼という、以前にはなかった確固たる光が宿っていた。


 レイ将軍は、全副将軍に対し、自身の本陣へと集合をかけるのだった。


 集まったのは、先程のジギフリット副将軍とレナード大隊長に加え、ビテン副将軍(後方支援と占領行政の責任者)と、リーヴェス副将軍(左翼の武力担当)だった。ミケ軍の主要な「力」と「知」、そして「行政」を司る全ての柱が集結した瞬間だった。


 レイ将軍は、集まった指揮官たちを前に、彼らの個性と能力を最大限に引き出すための、ミケ軍独自の訓示を行った。


 その言葉は、一見、人道的な協調性を説くもののように聞こえるが、その根底には勝利という目的のための冷徹な合理性があった。


「いいですか、皆さん。我々は、この戦いにおいて、タズドットの旧体制が失ったものを、最も完璧な形で持っています。それは、互いの役割への絶対的な信頼です。」


レイ将軍は、ゆっくりと、しかし強い口調で続けた。


「人とは支え合って生きているというものです。 貴殿方の武力なくして、私の策はただの紙切れであり、ビテン副将軍の行政なくして、我々の戦線は飢えに苦しむでしょう、思う存分、互いの不足を補い、強みを預け合い、支え合って生き抜きましょう。 これこそが、我々ミケ軍が、タズドットという巨大な敵を打ち破る、唯一にして最も確実な方法です。」


彼の言う「支え合い」とは、「情」ではなく、「勝利のための機能」として、互いを最大限に利用し合うという、ミケ軍特有の冷酷な論理に基づいていた。


 レイ将軍の訓示に対し、副将軍たちは、それぞれの役割と性格を反映した言葉で応じた。


まず、ビテン副将軍が、生真面目な姿勢で答えるのだった。


「はっ、了解しました。 レイ将軍の仰る通り、兵站と物資、そして占領地行政は、私が鉄の規律をもって担います。後方からの支援が、前線の武力を最大限に支えることをお約束します。」


 ビテンの「支え合い」とは、効率的な資源の分配であり、彼にとっては、奴隷の労働力を極限まで搾取することこそが、この「支え合い」の行政的な実現だった。


 次に、リーヴェス副将軍が、その傲慢な武人としての気質を隠すことなく、余裕綽々といった感じで答えた。


「フン。そんなこと言われなくても分かっているさ。 戦場に出る武人にとって、背中を預けられる仲間がいるのは、勝利の絶対条件だ。我輩たちは、命を懸けて前線を突破する。後方は、お前たち(レイやビテン)が血反吐を吐いてでも支えろ。」


 リーヴェスの「支え合い」とは、武力の絶対的優位性を前提とした、「後方への要求と信頼」であり、彼の武人の哲学が凝縮されていた。


 そして、ジギフリット副将軍もまた、熱意を込めて頷いた。


「レイ将軍!我々の武力は、貴殿の頭脳に命を懸けて応えます!マルク隊長の忠誠は、決して無駄にはしない!」


 レイ将軍は、全ての指揮官が、この「勝利のための結束」を理解したことを確認した。


「よろしい。 これで、我々は、タズドット軍を打ち破る、完璧な態勢を整えました。全軍、各自の持ち場に戻り、作戦を開始せよ。」


 そして、彼らはお互いに健闘を祈りあって、その場は別れるのだった。その「健闘」の言葉には、「必ず生きて再会し、勝利を分かち合おう」という、ミケ軍指揮官たち独特の、冷徹な信頼が込められていた。


 この結束の訓示の後、ミケ軍の各部隊は、レイ将軍の指示通りに分散し、次なる標的であるボントゥス・エクストランド副将軍率いるタズドット軍を、完璧な包囲殲滅の陣形へと追い込んでいくのだった。

はい、というわけで! 激闘(?)のセシェス編、無事に幕引きでございます!


いやあ、今回のあとがきで一番言いたいのは、もうこれに尽きますね。


「ミケ軍の皆さん、マジで仲良すぎじゃないですか!?」


見てくださいよ、あの作戦会議。


知略の塊で氷のようなレイ将軍が「自信がないんです……」なんて弱音を吐いて、それをジギフリットが「ガハハ!」って笑い飛ばす。そこに冷静なレナードがツッコミを入れて、不遜なリーヴェスや生真面目なビテンまでが「まあ、お前の策なら信じてやるよ」みたいな顔で並んでいる。


これ、やってることは「包囲殲滅」っていうエグい作戦なんですけど、空気感だけ見れば完全に「放課後の部活動」とか「仲良しグループの旅行計画」のそれなんですよね。作者、書いてて途中で「あれ? これ微笑ましい青春物語だっけ?」って錯覚しそうになりました。嘘です、確信犯です。


でも、ここが作者的な「大好きポイント」なんですけど。


彼らがこれほどまでに仲良く、互いを信頼し、背中を預け合っている理由。……それが、死んだマルクへの「復讐」と、敵を一人残らず「殲滅」するためっていうのが、もう最高に歪んでいて素敵だと思いませんか?


「俺たちは仲間を信じてる! だから、お前らは一匹残らず死んでくれ!」


この純粋すぎる善意の牙! 仲間内ではあんなに温かくて、あんなに「良い奴ら」なのに、その輪の外側にいる人間に対しては、これ以上なく冷徹で機械的な「死の機構」として振る舞う。


この、内側への「愛」が深ければ深いほど、外側への「残酷さ」が際立つ二面性こそが、ミケ軍という組織の真の魅力だと思うわけです。


ジギフリットを胴上げしたあの手の温もりを忘れないまま、彼らは平然とタズドットの兵士たちを泥の中に沈めていく。……いやあ、本当にひどい連中ですね! 大好きですよ!


さて、そんな「仲良し殲滅チーム」の次の標的はボントゥス副将軍。


完璧な信頼関係で結ばれた彼らの前に、バラバラな旧体制の軍隊がどうやって立ち向かうのか。あるいは、立ち向かうことすら許されずにすり潰されるのか。


友情パワー(※ただし用途は殺戮に限る)全開のミケ軍。


その「絆」という名の暴力が、どこまで加速していくのか、作者も今からワクワクしています!


それでは、次話。


さらに深まる絆と、さらに積み上がる屍の山の上でお会いしましょう!

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