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GREAT HISTORY〜大史伝〜  作者: アイラル
第三部 ミケ将軍タズドット侵略編

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第五十三話 ギーラピの地、開戦の露払い

レナード大隊長が率いるミケ軍の部隊50名は、静かなセシェスの北西、ギーラピの地を探索していた。


 彼らの任務は、タズドット軍の会合予定地を探り当てることだ。霧がわずかに立ち込める平坦な道を進むうち、彼らはついにその目標を発見した。


 人影が群れをなしている。その数は、こちらのおよそ十倍、500名。掲げられた旗は、紛れもないタズドットの軍旗だった。


 レナードは馬上から、冷徹な声で威圧した。


「そこにいるやつら、止まれ」


 その声が静かな平野に響き渡ると、タズドット軍の隊列が一斉にざわめいた。


 タズドットのフィリップ・フリーデン副将軍は、露払いの役目を担うはずが、敵に発見されたことに顔を蒼白にさせた。


 彼の背後には、彼が護衛していたガプペ連合の馬車隊が隠れている。


「最悪だ、バレてしまった!」


 フィリップは冷静さを失い、即座に叫んだ。


「みんな抵抗するんだ、攻撃すればいい!」


 命令は乱暴だった。


 だが、ミケ軍の精鋭に察知された焦りから、フィリップは反射的に戦闘を選択した。


 次の瞬間、タズドットの兵士たちの中から、数人の魔術師が前に飛び出した。


 空気が急激に冷え込み、辺りの水分が凝縮される。そして、水の魔法による激しい弾丸の雨が、ミケ軍の隊列に向けて放たれた。


 レナード大隊長は、その唐突な攻撃に驚きを隠せない。


「しまったな!」


 戦闘が不可避となったことを悟りながら、レナードは口元を歪めた。


「戦争か。最悪の方向に揺れちまったってわけだ。敵さんもあんまり強くないのに、何考えてるんだろうな」


 これは、法的な開戦から数時間後、実質的な戦端が切られた瞬間だった。静かなギーラピの平野に、水の飛沫と兵士の雄叫びが響き渡った。


 フィリップ・フリーデン副将軍が率いるタズドット軍500名は、決して国境防衛の正規部隊ではなかった。


 彼らはつい先ほどまで、タズドットの領内を進むガプペ連合産の大量の馬車を護衛していたのだ。


 タズドットの拠点であるブヌの地へ到着する予定のその馬車隊を、円滑に迎え入れること。それが彼らの任務であった。


 ブヌを出発したばかりの彼らは、いわば、ガプペ連合という大国の商隊を迎えるための「露払い役」。


 その任務の裏には、タズドットと、常にリムリア情勢に目を光らせるガプペ連合との間の、複雑な外交的配慮が透けて見えていた。


 タズドット兵の多くは、ガプペ連合との関係を重視した、この地味で、しかし重要な任務に就いていた。


 まさかその任務の途中で、ミケ将軍の精鋭部隊と遭遇するなど、フィリップ副将軍の計算には微塵も入っていなかったのだ。


 その遭遇が、この後に続く壮大な戦乱の引き金になるとは、この時の誰も知る由もなかった。

露払いの兵士たちが隠した、友好という名の欺瞞。ギーラピの遭遇が、戦乱の時代の真実を暴き出す。

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