第四十八話 黒き獣
古の昔話の中にでも聞いたことがないことがあったという。
王宮で女性が怪物に襲われたのだ、戦士たちは物音がしたので何事だと近くに集まったところ、女性が倒れている、何者の仕業だ?と周囲を見ると怪物がそこにいた。
怪物は赤色に血塗られており、恐るべき姿だった。戦士たちは人間と戦うのが俺の仕事だと怯えたが、怪物の姿はスッと消えるのだった。
戦士たちはほっとしてなんだ、目の錯覚かと終わらせるのだった、実に恐ろしい事件であった。
一方、その頃、別の場所にて、ここは平和な国、アルバム、平和を堪能して笑い合う日々だった。
しかし、それは今の状況においてあまりにも無謀だった、何せ、ミケ将軍がいるのだから、彼はこの場所を占拠しようと考えていた。
なぜならば、クンツの進言もあり、立地的にみて、バツネの勢力圏として入れるにはふさわしい場所だったからだ。
拠点としては悪くない、自前で食糧だって生産できるし、交易もある、素晴らしい場所だった。
さて、奪うことにするか、奪わなければやってられないこの世の中で、なんとしても奪わなければならないのがこの社会ともいうべき悲しき現象ともいえる。
しかし、地政学上は正しいので道理などどうでも良いことなのだと言わんばかりにミケ将軍は奪いに向かうのだった。
それぐらい重要な場所を手に入れるために向かうのだった。
そして、戦争が始まった。
ミケ軍6000名VSアルバム軍1000名の対決である。
戦争は長くなく、短めに決着がつくのだった、戦争の時は来れり、そして、軍隊を進めて、ミケ将軍は高らかに笑うのだった。
「俺様の勝ちだ、全軍進め」
「敵はやる気があります、しかし、舐めているわけではないのですが、なんだか、穏やかすぎて戦う気になれないのでしょう」
「いやいや、穏やかであろうがなんだろうが、全員踏み潰してしまえ、それができなきゃゴミ同然、ゴミ同然の国など気にしてたまるものか」
「おっしゃる通りです、さっさと踏み潰してしまいましょう」
(俺様は今、野望に則って行動している、そのうち占領できることだろうが、この占領は俺様の野望の第一歩だ)
そして、ミケ将軍はにんまりと笑うのだった。
(この第一歩が大切だ、きっと叶えてみせるぞ、リムリアのためだ、リムリアのためにもこの国を変えてみせる、クハハハハハ)
そして、ミケ将軍は青空を見つめるのだった。
(俺様の野望は終わってなどいない、次はスタン、スタンの命を奪い去って、俺様がリムリア統一をしてしまってもいいな)
ミケ将軍にとって、この世界は荒れ果てていたが武力を持って征服をすればいいだけの国に長居は無用、さっさと占拠してしまえばいいだけだった。
そして、必ずや勝利する、それこそが望みだった。
敵軍は押し手は寄せてくる波のように攻めてきた、しかし、それに対してミケ将軍は伏兵を持って勝利するのだった。
圧倒的に強いのはミケ将軍であった。
「俺様に従え、俺様に逆らったのだ、奴隷身分でも文句は言えないな」
「そのようなバカなことが」
「いいか、貴様ら、逆らった以上はどうなるか見せしめとして有力者であろうとどうなってしまうのか、それを見せて見せよう」
「ムゥ、なぜだ、なぜ、こんなことになった、平和を満喫していたというのに、無念だ悔しくて仕方ない」
「悔しくて仕方ないからといってなんだというのだ、お前達は」
「なぜだ、なぜ、平和を満喫させてくれないのだ、それでいいではありませんか」
「それではダメなのだ、俺様が思うにお前達の考えている平和など、たかが歴史の一瞬、人の本質は争いにこそあり、そう、騒乱の中で準備を怠った愚か者、それがお前達だ」
「それは違う、平和の中で笑い合うことこそ、人の本質だ」
「そうか、そうか」
「それが分かってもないのに、なぜ貴様こそ、そのようなことができるんだ、人のことを踏み躙っておいて、なにが将軍だ、貴族だ」
「グハハハ、なんと言おうと結果が全てだ、この俺様が勝利した、そして、それで終わりだ、お前達は奴隷となって働くといい」
「なんということだ、無念だ、実に無念だ」
そういってアルバムの市民は残念がった、しかし、気にするようなミケ将軍ではなかった、彼は一国の将軍として淡々と処理を済ませると勝利を宣言するのだった。
俺様は最強だ、必ずや次の勝利もしてみせよう、そして、セシェスすらも支配してくれる、グハハハと笑うのだった。
「それでこそ、我らが王様、必ずや喜ばしいことになりましょう、素晴らしいことです」
「レイよ、良くぞ言った、褒めて遣わす、褒賞は何が欲しい」
「宝物です、このアルバムの宝物は素晴らしい、素晴らしいので私に一つくださいませんか」
「グハハハ、気に入ったのを一つ持っていくと良い、それぐらい気前よく行かなくてはな」
「ありがたき幸せ、まさしく将軍は神なるお方、素晴らしいことはこの上ないです」
レイは喜ぶのだった。




