第四十二話 無念にして憂鬱
大変高い山から流れる激流に叩きつけられる私の心がある。それぐらいどうしようもないことがあったのだ、そう、それぐらい辛くて悲しいことだ。
私の目の前に二人のカップルがいた、仲が良さそうなのだ、これを邪魔してやりたいが、そうすると大概酷い目に遭うかもしれないと思っていた。
そんなことを考えているうちに長い年月が経過したな、あの恋路邪魔すればよかったな。
だが、邪魔したところで何が起こったのだろうか、きっと不思議な怪物が現れて私を襲っていたのだろうか、いや、あのカップルを襲っていたことであろう。
一方、その頃、ミケ将軍はレイを仲間にしようと、リムリアの金貨を見せびらかすが、レイはなかなか首をうんと縦に振らなかった。
「出し惜しんでいるのか、己を、それもいいだろう、じっくりと悩むがいい、しかし、答えはしっかりと出してもらわないと困る」
「そうですね、私が仲間になった暁には友2人も道連れですか」
「その通りだ、それでいいだろう、どうだ、簡単にチェックマークを入れて、仲間にもそう頼み込めばいい、友人なのだろう、簡単なことではないか」
「そういうわけにはいきません、私は世間体も仲間も大切にするつもりです」
「そうか、ならば、この金貨は諦めるのだな」
「それは……」
(……喉から手が出るほど欲しいぞ、金貨、だが、そのためには友2人と共に飛び込まなければならない、テロリストの世界に、どうすればいい)
金貨をあれほどもらえるのは天国行きへの切符を買えたも同然だった、当然、ものすごく欲しいのは当然のことだった。
だが、乗ればテロリストになるのだ、地獄行きの戦場へと駆り出される、負けるつもりは毛頭無いが、だからといって、果たして行って良いものだろうか。
それに友である2人を売り渡さなければならない、このリムリアを治めるスタン国王から蛇蝎の如く嫌われているミケ将軍にだ、どうなるか分かったものではない。
レイはグスタフのことを考えるのだった、あいつは金貨が好きだった。
いつも、何よりも金が大事だと日頃から公言している、ミケ将軍の仲間になれば金貨は思うがままだ、喜ぶのは間違い無いだろう
クンツのことも考えるのだった、クンツは若く女性からモテた、あの漢がテロリストになるだろうか、なるだろう、喜んで友のためならばなってくれるはずだ。
だが、そんな決断をしても良いだろうか、レイは悩んだ。
(私に友を売り飛ばせというのですか、21歳のこの私に、悩ませますね、ミケ)
そして、悩んだ末に質問をするのだった。
「あなたはこの後、私が仲間にならなくても、あの2人を誘いますか?」
「当たり前だとも、バツネの地にいるのだ、それにグスタフは金好きなことで有名だ」
「そうですね、彼が公言して憚らないことですからね」
「そうだ、貴様ほどの漢でも首を縦に振りたくなる金貨だ、やつならばどう反応するか楽しみで、今からでも疼いてしょうがない」
「そうですか、いい反応をすると思いますよ、当然欲しがることでしょう」
「そうか、それはいいことを聞いたな、どうだ、一枚もらっていくがいい」
そう言って、ミケ将軍は一枚のリムリアの金貨をレイに手渡すのだった、そして、レイはそれをそっと懐に入れると、再び悩み始めるのだった。
レイは地団駄踏んだように悩み、貧乏ゆすりをするかのように何度も何度も鞭を地面に叩きつけて悩むのだった。
ミケ将軍はレイの反応を嬉しそうに確認しながら、待つのだった。
「どうだ、仲間にならないか、悪くは無いだろう」
「そうですね、どうしましょうか」
「そうか、出し惜しんでいるのだな、いいだろう、これでどうだろうか」
そう言うと、ミケ将軍はレイに見せびらかすように懐から金剛石を見せるのだった。
「こ、これは……」
「どうだ、金剛石だ、欲しいだろう、欲しかろう、貴様がチェックマークを入れさえすれば手に入るのだ、どうだろう、決断しては」
「そうですね、いいかもしれません」
そして、レイは決断するのだった。
「仲間になりましょう」
「おお、それでは」
「そして、必ずや友二人をあなたの下に仕えさせるようにしましょう」
「仕官の件は頼むぞ、レイ」
「必ずや、叶えてみせましょう」
そして、その日、悪魔に魂を売ったのはレイだった、レイはこの後、最悪の存在として世間を揺るがすテロリストとして手配書に載ることになる。




