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GREAT HISTORY〜大史伝〜  作者: アイラル
第二部 ミケ将軍到来編

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幕間 ミケ将軍と三地方官の戦いⅢ

 ミケ将軍は、クラウス地方官が残りの五千を率いて反撃に転じたのを見るや、さらなる大胆な行動に出た。


 通常ならば、速やかに突撃部隊を引き、敵の合流を避けるべき局面。


 しかし、将軍の目には、既に敵の「本陣の破壊」という一つの目標しか映っていなかった。


「退くな! 全軍、我に続け!」


 ミケ将軍は馬首を返し、自ら先頭に立ってクラウス軍の真っ只中へと突進した。


 そして、旗印の下で指揮を執るクラウス地方官を見つけるや、迷いなく大音声を響かせた。


「クラウス地方官! 決着をつけよう! 貴様の失策で討たれた千の兵のためにも、ここで私と一騎打ちで勝負をつけよ!」


 一騎打ちの提案。


 それは、数で劣るミケ軍が、敵の士気を削ぐための常套手段であり、同時に将軍自身の命を懸けた最大の賭けであった。


 クラウス地方官は、ミケ将軍の真意を測りかね、一瞬、戸惑った。


 だが、その頭には、冷静な計算が蘇っていた。


「一騎打ちだと? ふ、愚かな若造め!」


 クラウスは、将軍としては凡庸であったが、権力闘争の中で鍛えられた狡猾さを持っていた。


 彼はミケ将軍の挑発に乗ったふりをして、剣を抜き、前に進み出た。


「よかろう、ミケ将軍! 貴様のような血気の将に、まつりごとの何たるかを教えてやろう!」


 二人の将は、五千の兵士が見守る中で激しく剣を交えた。


 ミケ将軍の剣撃は嵐の如く、クラウスの防御を何度も打ち破りそうになった。


 しかし、クラウスは、武勇では到底敵わないと知っていた。彼の目的は、勝利ではない。


 クラウスはひたすら防御に徹し、時折、大袈裟な動作でよろめいては見せたが、致命傷は避けていた。


 一分、二分……短い時間が、クラウスにとっては永遠に感じられた。


 彼の頭の中では、ミケ軍が突撃によって開いた自軍の陣の穴を、味方の兵士が必死に塞いでいる状況と、左右から迫る二地方官の軍勢の位置が刻一刻と計算されていた。


「もうすぐだ……もう少し……!」


 そして、ミケ将軍が渾身の一撃を繰り出した、その瞬間。


「今だ! 退け、クラウス様!」


 クラウス軍の後方から、けたたましい銅鑼の音が鳴り響いた。


 それは、他の二地方官軍が、クラウス軍と完全に合流したことを示す合図であった。


 クラウス地方官は、ミケ将軍の剣を紙一重でかわすと、一目散に自軍の陣の奥へと駆け込んだ。


「まさか、時間を稼ぐために一騎打ちを……!」


 ミケ将軍は、クラウスの「無駄な時間稼ぎ」に見せかけた巧妙な策略に、初めて驚愕の表情を浮かべた。


 一騎打ちに集中している間に、クラウス軍は陣形を立て直し、さらに左右から迫った二地方官の軍勢と完全に手を組んでしまったのだ。


 ミケ軍が突撃によって得た優位性は、一瞬で消滅した。


 六千のミケ軍は、五千のクラウス軍の猛攻にさらされながら、気づけば一万二千の二地方官軍が広げた巨大な包囲網の真っ只中に孤立してしまっていた。


 兵力差は、完全に一対三。


 ミケ将軍は、背後の丘にまで迫る敵の旗を見て、冷静に指示を出した。


「全軍、聞け! 後退は許さん! このまま突き進むぞ! 我々の退路は、敵の本陣を打ち破ったその先にある!」

用兵の熟練者が仕掛けた『一騎打ち』。凡将が返した『時間稼ぎ』。――全てが裏目に出たとき、戦況は絶望へと転じる。

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