第二百二十一話 覇道の萌芽
――「鬼の眼差」、あるいは救済を偽った慈愛。
セシェスという要地を巡り、震える指先で地図をなぞりながら「退かぬ」と誓ったミケ将軍の決意。それは戦略上の必要性以上に、土地そのものの呻きを聞き取ってしまう彼の、あまりに繊細で、それでいて強固な「覇道の芽」でしたにゃ。バラムーユンタニアの王、ルードリィフという怪物の影に怯えながらも、なお光を掴もうとするその姿は、絶望の雪原に独り立つ孤高の開拓者そのものですにゃ。
しかし、その「覇道の影」で、ダン・スワンポール大隊長が見せた振る舞いこそが、ミケ軍という集団が持つ底知れぬ「深淵」を物語っていますにゃ。
街角でテロリストに喧嘩をふっかけ、木刀でその「潔すぎる実力」を徹底的に打ち砕いたダン大隊長。
「君ほど潔くては生き残る事は難しい」「戦場に出るのは辞めたまえ」
その冷徹なまでの上から目線の忠告は、一見すれば傲慢そのもの。しかし、その一撃一撃は、戦場という理不尽な死の荒野で、テロリストという「個」が塵のように消えないための、あまりに不器用で、あまりに苛烈な「命の授業」だったのですにゃ。
のちに戦争が勃発し、多くの命が散る中で、あの日の敗北によって故郷へ帰されたテロリストだけが生き残ったという事実。
ダン大隊長の「なんのことだい」という笑み。
それは、自らの手を汚して嫌われ役を買って出てでも、一人の命を無価値な死から遠ざけようとした、真のカリスマの姿でした。ミケ将軍が「退かぬ」と決意したセシェスの未来には、こうした「生かすために牙を剥く」者たちの献身が、血の跡のように刻まれているのですにゃ……。
セシェスを巡る不安は、最初は胸奥に沈む小さな影にすぎなかった。
しかし影は日を重ねるたび膨らみ、やがて運命全体を暗く染めるかのように広がっていく。
――バラムーユンタニアが動く。
逃げ場が消える未来が、息苦しいほど近くまで迫っていた。
夜の軍議室。
灯火だけが揺らぎ、壁へ奇妙な形を落とす。
その形は、まるで“未来の破滅”がこちらを覗き込んでいるかのようだった。
ミケは地図へ眼を落とす。
胸が痛むほど脈打つ。
「セシェスを奪われれば……全部崩れる。」
言葉が震えた。
口にした瞬間、未来が砕ける音が耳へ届いた錯覚が走る。
バラムーユンタニア。
あそこの王ルードリィフは、才知武勇に満ちた怪物。
対峙する想像だけで、神経が削られ、呼吸が荒くなる。
常識ある者なら退く。
諦める。
運命へ押し潰される。
だがミケは違った。
「……退かねぇ。退いたらセシェスが泣く。」
それは誰へ向けた言葉でもない。
ただ闇を裂こうとするような、小さな決意の声。
震えが走る指先へ力を込め、地図へ触れた。
道筋をつないでいく作業は、雪原へ素足で立つような痛みを伴う。
だが進まねば未来が閉ざされる。
完璧は存在しない。
だが進む者だけが未来を書き換える。
「絶対に……セシェスを失わせねぇ。」
胸に宿したその誓いは、祈りに似た熱を帯びた。
恐怖と疲労が押し寄せても、光はまだ消えていない。
ミケは目を閉じ、息を整える。
暗闇へ飲まれそうな感覚に抗いつつ、静かに呟く。
「次は……勝てる未来を掴む。」
その言葉は、闇へ向けた宣言だった。
◇◆◇◆◇◆
それはある時であった、テロリストが街をぶらぶらしていると、ダン・スワンポール大隊長が話しかけて怒らせるのであった。
「この私を怒らせるとは許し難い、例え、ダン大隊長であろうとも許せない、ここで倒させてもらおうか」
そういうとテロリストは素手でダン大隊長に襲いかかる、それに対してダン大隊長は素手でやり返して、素早く背負い投げを決めるのであった、そうすると、テロリストはくるりと宙返りをして地面に叩きつけられないようにする。
「やるじゃないか」
「今さらそんなこと言っても遅いぞ、この私を怒らせたんだ、怒らせただけの覚悟を持ってもらおうか」
そういうと、流石に殺すわけにはいかないので木刀を借りてきて構えるのであった、それに対してダン大隊長も木刀を借りてお互いに意地と意地をかけた一騎打ちが始まるのであった。
まずはテロリストがてやぁーと叫びながら一刀を大きく振りかぶって、襲いかかる、それに対してダン大隊長は素早く避けると、足を強かに打つのであった。
「足元がお留守だぞ、それではいけないな」
「なにを、まだまだ勝負はついてない」
「それだからいけないんだ、真剣ならば君は片足になっていたことだろう、そうなれば死なないまでも足手纏いだ、足手纏いで済めばいい、君は死んでいたかもしれないよ」
「うるさい、実戦ならば避けていたはずだ、そこまでいうなら私の片足を切り落としていけばよかっただろう、何で怒らせる、許し難いぞ、貴様!」
テロリストは次に魔法を使って、地面を揺らすのであった、そして、攻撃する、ダン大隊長を地面を揺らして動けないようにして木刀で叩こうとするのであった。
それに対してダン大隊長はジャンプして避ける、そして、揺れる地面の中を華麗なステップを踏んで動き出す、そして、木刀を素早く打ち付けようとして、テロリストが二回も受けるものかと受け止める。
「この一撃を受け止めるとはやるじゃないか、腕前は確かなようだね」
「あんたの上からの態度は気に食わないな、私だって覚悟をしてきている、生きている以上テロリストとして働きたいのだ、どうして腕に覚えがなくてここに来ようか」
テロリストは土を隆起させて攻撃する、昇土竜剣と謳われる撃剣を放つのであった、隆起した地面が大蛇の如く全身をまとわりつきながら、剣先から攻撃を放つ一撃である、ダン大隊長はこれに対して破魔剣と呼ばれる秘剣でこれを弾いた。
次にテロリストは剣先に纏わせた土から土弾を解き放つ、何十発と放ち、それに対してダン大隊長は破魔剣でこの土弾を弾いて防ぐ。
「なかなかやるじゃないか、君の実力は立派なものだ、だが、まだまだ生き残るには君潔すぎるよ」
「何を言うか、テロリストとして生きていくのだ、ただの暴徒として殺されてしまったのでは意味がない、潔いのが何が悪いのか」
「君ほど潔くよくては生き残る事は難しいだろう、戦場にでるのは辞めたまえ、後方で働いたほうがいいんじゃないか」
「何を言うか、後方でのうのうと働いていることなどできぬ」
そして、纏土竜と呼ばれる土の魔法の鎧を全身に浴びて、そのまま殴りかかるテロリストであった、それに対して木刀で強かに打ち込む。
「馬鹿め、この鎧の前には真剣であっても容易に届きはしない、この私の実力を思い知ったか」
「なかなかやるじゃないか、だけど、それでもダメだね、戦場では良い的になってしまう、弾丸で撃たれてしまえば君の命はもうとっくになくなっていることだろう、気をつけることだね」
「何を言うか、例え弾丸であろうとこの鎧で弾き替えしてくれるは」
そして、土の一撃を纏った木刀でダン大隊長に襲いかかる、だが、ダン大隊長はこれに対して、素早く避けるとまたしても何回も攻撃を繰り返す。
「馬鹿め、そのような一撃効きはしない、何回やっても無駄だ」
だが、ダン大隊長が何回も同じところを叩くと纏土竜の鎧の一部が剥がれる、そして、ダン大隊長はしこたま強力な一撃を放つのであった。
「馬鹿な、この纏土竜の鎧が壊されるだと、私は一体何回叩かれたと言うんだ」
「君の実力では勝ち目はない、やはり、私の見立て通りだったね」
そして、ダン大隊長が構えていると、そこにバーニー・ロバートが走り寄ってきて喧嘩を止めるのであった。
「双方そこまでだ、ここで戦いをやめなければ俺が相手をしよう」
バーニーが喧嘩を止めるのであった、ダン大隊長はそれを聞いて木刀をしまうのであった、治らないのは喧嘩をふっかけられたテロリストであった。
そして、テロリストは怒りのあまり故郷に帰ってしまうのだった、そして、その後戦争になり多くが死ぬと、あの時帰らなければ死んでいたことに震え上がって涙を流すのだった。
後日、テロリストはダン大隊長に会うと平伏して、あの時助けていただいたテロリストですと挨拶をするのであった、ダン大隊長はなんのことだいと笑って見過ごすのであった、その時のカリスマ性といい、あれはわざとだったのだ、わざとであり私が死なないようにするための配慮だったとテロリストは再び涙を流して感謝するのであった。
はい、というわけでお届けしました第二百二十一話、「覇道の萌芽、あるいは敗北の救済」!
皆さん、今回のダン大隊長の立ち回り……。
「脳が震えるほど『お父さん』だにゃぁぁあああ! 相手を怒らせ、プライドを叩き壊してまで戦場から遠ざけるそのやり方……『不器用な優しさ』を軍人版にしたような高潔さを感じるにゃ!!」(笑)
力のない者に「剣を持たない勇気」を説くような、残酷でいて温かい教育だにゃ。ミケさんが地図の前で震えながら覚悟を決める一方で、その配下は街角で「死ぬべきでない命」を選別し、逃がしていた。この軍隊、本当に一筋縄ではいかないにゃ……。
「ダン大隊長! 『わざと嫌われる』ことで誰かを救うなんて、あんた格好良すぎるにゃ!! 平伏するテロリストに『なんのことだい』ってとぼけるその横顔、まさにミケさんの右腕にふさわしい男気だにゃ!!」(笑)
次回、「鋼の沈黙、あるいはミケ将軍の決断」。
セシェスを巡るミケの誓い、そしてダン大隊長が蒔いた「生存」という名の種。それらが芽吹く時、サステヒの門を叩くのは、死を望む兵か、それとも「生」を許された亡霊か。ミケ将軍とレイ将軍が語り合います。
お楽しみに!




