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GREAT HISTORY〜大史伝〜  作者: アイラル
第四部 ミケ将軍バラムーユンタニア決戦編

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202/207

第百九十四話 震撼のゴーシュレフ

――「知」が「狂気」に敗北した瞬間、あるいは計算の外側に現れた災厄。

冷徹な計算と外交の術で世界を転がしてきたゴーシュレフ外務官にとって、ミケが自ら冠した「天常大将軍」という名は、理解の範疇を超えた精神的な劇薬でしたにゃ。論理と秩序を重んじる彼にとって、天の理を自称し、勝利と服従を食らって肥大化するミケの変貌は、もはや戦略上の「敵」ではなく、制御不能な「天災」そのものに見えたのでしょう。

「狂い切った、と言うべきか……」

震える手で報告書を握りしめるゴーシュレフ。彼の脳裏には、ミケが振り撒く狂気がバツネ全土を侵食し、せっかく自分が整えた「管理された混沌」を、ただの「無慈悲な地獄」へと塗り替えていく光景が浮かんでいるはずですににゃ。正気の枠を粉砕し、災厄へと昇華した男。ゴーシュレフの恐怖は、知性ある者が本能的に感じる「理不尽への拒絶反応」でしたにゃ……。

報告官が震える手で巻紙を差し出した瞬間、

広間には言葉では言い表せぬ“寒気”が走った。


それは北の吹雪が吹き込んだわけでも、

魔法が発動したわけでもない。


ただ、ひとつの名前――

“天常大将軍”

その響きが空気を真っ二つに裂いたのだ。


巻紙を受け取ったゴーシュレフは、

読み進めるほどに表情を強張らせていった。


そして最後の一文、

《自らを天常大将軍と称し、祝宴を挙行す》

の文字を目にした瞬間――


「…………ッ」


喉が凍りついたように、

言葉が出なかった。

背筋に、ゆっくりと毒虫が這うような感覚が走る。


やっと吐き出した声は、

震え、掠れ、まるで別人のようだった。


「ミケ……将軍は……

 狂っている……。いや……

 狂い切った、と言うべきか……」


報告官も、重臣たちも息を呑む。


ゴーシュレフは巻紙から視線を離し、

顔を両手で覆うようにして呟いた。


「“天常大将軍”……?

 天を常にする……?

 そんなもの……支配者ですら名乗り得ぬ……

 正気ではない……正気なはずがない……!」


声は震え、

まるで呪いに取り憑かれたようだった。


「なにを考えている……?

 いや、考えてなどおらぬか……!

 暴走か……それとも……?」


重臣の一人が、おそるおそる問いかけた。


「陛下……ミケ将軍は本当に……

 正気を……?」


ゴーシュレフは一瞬だけ重臣を睨みつけたが、

次の瞬間にはその視線すら怯えに曇った。


「正気の枠など……とっくに壊れておる……。

 あの男は……“勝利”を食い、

 “服従”を飲み込み、

 “恐怖”で満たされていないと自我が保てん……」


呼吸が荒くなる。

胸が上下し、汗が額を伝う。


「天常大将軍……

 なんと恐ろしい……なんと危険な名だ……。

 あの名を自ら名乗るということは……

 もう、止まらぬ。いや、誰にも止められぬ……!」


そして、ついに震えが体全体を支配した。


「……ミケ将軍は……

 もはや“国の将軍”ではない……。

 あれは……災厄だ……!」


叫んだ瞬間、燭台の炎が揺れ、

室内の空気までも怯えたように震えた。


そのあまりの迫力に、

重臣たちは誰一人声を発せぬまま、

ただ沈黙を守るしかなかった。


「天常大将軍……? ふざけるな……。

 そんな狂気を放置すれば……

 このバツネは、また血で染まるぞ……!」


ゴーシュレフは両手を握りしめ、

己の震えを必死に抑えようとするが、

止まらない。


恐怖だけが、静かに強く、

確実に室内へと広がっていった。

はい、というわけでお届けしました第百九十四話、「震撼のゴーシュレフ、あるいは計算違いの災厄」!

皆さん、今回のゴーシュレフさん……。

「脳が震えるほど『絶望』してるにゃぁぁあああ! あの冷静沈着な彼が、汗を流して震えながら『災厄だ!』と叫ぶ姿……絶望感を感じるにゃ!!」

知略で勝てると思っていた相手が、実は最初から「会話の通じない怪物」だったと気づかされた時の衝撃だにゃ。ゴーシュレフさんは、ミケさんを「御しやすい武人」だと思っていた。でも現れたのは、天を名乗る「狂った神」だったんだにゃ……。

「ゴーシュレフさん、あんたの震えは正しいにゃ! 狂気に理屈は通じない、計算式に『天常』なんて変数は入ってなかったんだにゃ!!」(笑)

次回、「鋼の沈黙、あるいは将軍の決断」。

大国の外交官すら震え上がらせるミケの狂気。その将軍が遂に戦に臨もうとします。


お楽しみに!

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