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GREAT HISTORY〜大史伝〜  作者: アイラル
第四部 ミケ将軍バラムーユンタニア決戦編

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第百八十九話 天常大将軍

――天を統べる理、あるいは破滅を招く不遜なる冠。

勝利の美酒に狂った幕舎の中で、ついに「怪物」が新たな名を得ましたにゃ。レイ将軍という、忠誠を狂信へと昇華させた道化が捧げた、呪わしき称号――。

『天常大将軍』

「天の常」を自ら体現すると言い放つその傲慢さは、もはや人間としての分を遥かに超え、神の領域への不敬な侵犯に他なりませんにゃ。椅子に深く腰掛け、跪くレイを見下ろすミケの瞳に宿るのは、万能感という名の底なし沼。

「俺様が喜ぶほうを選ぶことだぞ」

その一言に含まれた冷徹な脅しすら、狂信者にとっては至高の愛の鞭。レイが震えながらその名を口にした瞬間、ミケ将軍という一個体は死に、「天常大将軍」という名の災厄の概念がこの世に産み落とされたのですにゃ……。

バツネの兵たちがその名を合唱し、士気を高めるほどに、運命の天秤は急速に傾いていきます。彼らが讃えているのは英雄ではなく、自らを縛り付ける黄金の鎖。そして、その鎖の端を握っているのは、もはやミケ本人ですらなく、「最強」という名の虚像なのかもしれませんにゃ。

 ミケ将軍の勝利報告がバツネじゅうに轟き、人々の歓声が遠くからでも聞こえてくるその日の夕刻。


 彼の司令幕舎では、ひときわ静かで、それでいて異様に濃密な空気が流れていた。


 歓声は幕舎の外にあった。

 狂喜乱舞の騒ぎは街にあった。

 だが――その中心にいる“勝利者”はただ一人、深い闇を背負う王者のように椅子に腰掛けていた。


 そのミケの前で、レイ将軍が膝を折る。


 レイ将軍――バツネでも稀に見る“忠誠の化身”。

 彼はいつもミケの前では、必要以上に深く頭を下げ、必要以上に熱心に称賛し、必要以上に忠誠を示す。


 それが、ミケを怒らせない唯一の方法であり、そしてレイ自身の処世術でもあった。


 そのレイが、今夜もまた、深々と頭を垂れていた。



◆ カタカタ……と震えるほどの忠誠


「おめでとうございます、我らが主君ミケ将軍殿……

 此度の勝利は、大変素晴らしいことでございます……」


 レイの声は震えていた。

 だが恐れではない。

 興奮だ。

 狂信だ。

 “勝利者の傍にいられる幸福”へ酔いしれる声だった。


 ミケは鼻で笑った。


「なに、たいしたことではない」


 そう言いながら、椅子に座ったまま顎を上げ、王のような姿勢でレイを見下ろす。


「俺様は常に最強だ。

 俺様に従っている以上、勝てるのは当たり前だ」


 その“最強宣言”は、レイの胸の奥に火をつけた。


「そのようなことはございません!

 なんとなんと……なんと素晴らしいことでしょう、ミケ将軍殿……!」


 レイは深く頭を下げたまま、震えながら礼賛の言葉を繰り返す。


 まるで、ミケの言葉を“神託”として崇める信者のように。


 ミケはその様子を愉しげに眺めた。



◆ 傲慢の極み ――ミケの宣言


「そうか。

 だが、愚かにも敵はそのことを理解していなかったようだな」


 ミケの顔に、ゆっくりと――本当にゆっくりと、卑しく黒い笑みが広がっていく。


「激しい喜びがこの身を覆うとは、このことだ。

 実に、素晴らしい勝利だった」


「全くもってその通りでございます!

 このレイも……ああ……喜ばせていただきたく存じ上げます!」


 レイの声は完全に“陶酔”だった。

 ミケの勝利に酔い、ミケの言葉に酔い、ミケそのものに酔っていた。


 ミケは胸を張る。


「気にすることはない。存分に喜ぶといい。

 俺様が最強だということは――天の常」


 その言葉には、天をも支配するという傲慢があった。


「天常とは、このことだな」


 レイは武器を落としそうになるほど震えた。



◆ レイの提案 ――“名”を与える儀式


「今回から……

 天常大将軍てんじょうだいしょうぐん

 とでもお呼びいたしますか?

 さぞ……カッコいいかと……」


 レイは震えながら顔を上げた。


 その目は輝いている――

 だがそれは“忠誠”ではなく、

 “狂信者が神に新たな称号を与えるときの光”だった。


 ミケの口元に、再びあの不吉な笑みが浮かび上がる。


「天常大将軍、か……

 ふむ、素晴らしい提案だ」


 レイは息を飲む。


 ミケは続けた。


「だがまあいい。俺様はミケ将軍でいいだろう。

 まあ、呼びたければ自由に呼ぶがいい」


「それでは……」


 レイは迷った。

 どの呼び名が最もミケを喜ばせるのか。

 どの言葉が最も彼をご機嫌にできるのか。


 この場で判断を誤れば――

 命は無い。

 それだけは確定していた。


 ミケはわざと静かに言った。


「……俺様のことをどう呼ぼうが、お前たちの自由だ」


 レイの心臓が強く跳ねる。


「もっとも――分かっているな?」


 ミケの声が、氷のように冷たくなる。


「俺様が喜ぶほうを選ぶことだぞ。

 そうしなければ――

 愚か者の二の舞となることだろう。」


 レイの背筋に冷たい汗が流れる。

 だが次の瞬間、彼は大きく息を吸って言った。


「それでは――

 天常大将軍殿、どうされますか?」


 その言葉は、忠誠であり、祈りであり、懇願だった。


 ミケの目が細まり、その声が地の底のように低く響く。


「……それでいいのだ」


 そして――胸を張って宣言する。


「今日から俺様は、天常大将軍と名乗ることにする。」


 レイは地面に額をつける勢いで頭を下げた。


「おおお……!

 なんと偉大なる名でございましょう……!

 このレイ、一生の忠誠を捧げますとも……!」


 ミケの笑い声が、幕舎の中に響きわたる。



◆ こうして、“災厄の称号”が世界に生まれた


 その日を境に、バツネの軍中で、


 天常大将軍


 という名が広まり、

 兵士たちはその名を唱えながら士気を高め、

 時に恐れ、時に狂喜し、

 まるで神を崇めるかのようにその名を讃えた。


 だが――

 誰も知らなかった。


 この“天常大将軍”という名が、

 やがて世界に恐れられ、

 歴史に刻まれる“災厄の肩書き”となることを。


 ミケ本人さえ、まだ知らなかった。

はい、というわけでお届けしました第百八十九話、「不遜なる改名、あるいは天常大将軍の誕生」!

皆さん、今回のミケ将軍……。

「脳が震えるほど『調子に乗ってる』にゃぁぁあああ! 『天常』なんと厚かましいネーミングだにゃ! でも、それを言わせてしまう圧倒的な『勝者』のオーラ……嫌いじゃないけど、怖すぎるにゃ!!」(笑)

レイ将軍のあの「媚び」と「狂信」が入り混じった態度も、見ているこっちの背筋がゾクゾクするにゃ!

「天常大将軍、響きはカッコいいけど……それ、絶対に天からお仕置きが降ってくるフラグだにゃ!! 謙虚さをどこかに置き忘れてきた報いは、きっと高くつくにゃ!!」(笑)

次回、「絶望する奴隷」奴隷が絶望します。


お楽しみに!

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