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GREAT HISTORY〜大史伝〜  作者: アイラル
第三部 ミケ将軍タズドット侵略編

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第百十九話 笑いが響く時

――勝敗は、剣を交える前に決まっている。


 そんな言葉を証明するように、侵略者の笑い声がタズドットの空に響き渡ります。


 かつての誇りをかなぐり捨て、自軍の崩壊を「幸運」と呼ぶ敗者たち。


 その歪な平和を守るために、皮肉にも侵略者の論理を借りて治安を維持する副官。


 そして、それらすべてを「知略の計算通り」と冷たく見下ろす、三人の指揮官。


 「心を攻める」という非情な哲学が、一国の精神を内側から腐らせ、泥のように溶かしていく。


 リムリア万歳。その喝采は、死にゆくタズドットへの残酷な弔辞。


 もはや戦場に熱い血は流れず、ただ冷徹な「収穫」の時間が始まろうとしています。

 さあ、ご覧ください。


 敵の心が壊れる音をBGMに、祝杯を確信する勝者たちの「ニンマリ」とした横顔を。

 ジギフリット副将軍の感情的な自信に続き、レナード大隊長は、戦場で実際に体験した事実を、冷静かつ実利的に提示することで、レイ将軍の問いかけに決定的な答えを与えた。


 レナード大隊長は、口元に確信の笑みを浮かべながら、淡々と話し出すのだった。


 彼の笑いは、ジギフリットのような熱狂ではなく、将軍の策は、既に敵の士気を砕いているという冷徹な現実を把握していることへの知的な満足からくるものだった。


 「前回も前々回も、敵は最初から及び腰の上に逃げ出していました、必ずや勝てるはずです」


 レナードの言葉は、タズドット軍が既に軍としての機能を失っているという、最も残酷な現実を突きつけた。


 まず最初から及び腰ということだが、これは、ミケ軍の精鋭とレイ将軍の威名が、タズドット兵の戦意を開戦前に既に奪っていることを意味する。


 彼らは戦う前から敗北を覚悟しており、指揮官の命令よりも自己の生存を優先していた。


 次に逃げ出していましたということだが、これは、グルナル副将軍の処刑という結末だった。


 そして、これはヨン宰相の判断だったが、これをもってしてもラルフ地方官の降伏を止めることはできなかった。


「ヨン宰相にはすまにゃいが、みゃーは国民の為に働けて幸せにゃ」


 ラルフ地方官はその日その日を国民の為に働くと決めて働いており、もはや、降伏したことを忘れていた。


 海狸の錦旗は輝きを満ち溢れさせており、ラルフ地方官はご先祖様も満足しておられるにゃと心から安堵するのだった。


 それを見ていた兵士達は最低限の抵抗もないようだと、諦めて逃亡する道を選ぶのであった。


 ドーゲ地方副官はやれやれという顔をして領土内をラルフ地方官と共にまとめ上げる為に必死だった。


 だが、次の瞬間には軍規を乱した何人かの兵士が国民を襲おうとするのだった。


「どうせ戦争中だ、何も分かるもんか」

「そういうわけにはいかないんだな」


 そういってドーゲ地方副官は投げ縄を使って軍規を破ろうとした二、三人の兵士たちの首を掴んでは引き摺り倒すのであった。


「全くやれやれだな」

「やっぱり、地方官様達には叶うわけないんだ、大人しくするか逃亡するべきだな」


 残った兵士たちはそう判断するのだった。


 こういったことが重なっており、ミケ軍の非情な力が、タズドット全軍に逃亡の連鎖という致命的な慣習を生み出した証拠だった。


 兵士たちは、降伏や無秩序に逃げた方が生き残れるという、軍規を無視した論理を既に学習していた。


 レナード大隊長は以上のことから確信していた。


「そうだ、俺たちの勝利は、レイ将軍の知略がタズドットの精神を内側から崩壊させた結果だ、ネスサロス城も、ブヌの防衛線と同じように、兵士たちの逃亡によって自壊するに違いない、勝敗は、兵力差ではなく、既に士気の差で決している、これが心を攻めるということ、まさしく、レイ将軍は戦争哲学をマスターしておられる、リムリア万歳」


 このレナードの冷徹な分析を聞いた瞬間、レイ将軍とジギフリット副将軍の間にあった僅かな緊張は、確信へと変わった。


 レナードの分析を聞いて、レイ将軍もジギフリット副将軍も、顔を見合わせ、心からの笑いを漏らすのだった。


 その笑いは、我々の勝利は、最早確定しているという知的な安堵と、愚かな敵が、我々の策に嵌っているという優越感が入り混じったものだった。


 「そういえばそうでしたね」


 レイ将軍は、自らの計略が完璧に機能し、想定通りの結果を生み出していることに、冷たい満足を覚えた。


 彼の問いは、この確信の笑いを得るための最後の布石だった。


 「そういえばそうだったよな」


 ジギフリットは、熱狂から現実に戻り、強敵という脅威が既になくなっていたという事実に、心底安堵した。


 血を流さずに得られる武功ほど、武人にとって美味しい獲物はない。


「勝てそうだな、リムリア万歳」

「喜びすぎですよ、全く、リムリア万歳」

「ジギフリット副将軍のやつ、レイ将軍の前ではしゃぎすぎだぞ、だが、俺も同じ思いだ、リムリア万歳」


 彼らの笑い声は、タズドット軍の腐敗と崩壊という事実の上に築かれた、ミケ軍の冷酷な勝利を象徴していた。


 ネスサロス城への行軍は、もはや戦いではなく、確実な収穫へと変わったのである。

はい、というわけで!


皆さん、今回の「リムリア万歳」の三唱……聞いてるこっちがゾクゾクするほど「悪役」っぽくて最高でしたね!


レイ将軍の問いかけに、レナード君が叩きつけた冷徹な分析。


「兵士たちはもう逃げ方を学習しちゃってます」という事実は、指揮官にとっては死刑宣告と同じです。


でも、そんな中でラルフさんの「みゃーは国民のために働けて幸せにゃ」という言葉。


皮肉ですよね。侵略者に降伏して、国家の誇りを捨てたことで、ようやく彼は「本当に守るべきもの」に気づけたんですから。


ご先祖様も錦旗を光らせて喜んでる……って、いい話風ですけど、やってることは「完璧な売国」なのがこの作品のえぐいところ!(笑)


一方、治安を守るために身内の兵士を引き摺り倒すドーゲ副官。


「やれやれ」と言いながら投げ縄を振るう彼の姿に、タズドットの末端にまで浸透した絶望が透けて見えます。


そして、それらすべてを「収穫」と呼び、ニンマリと笑い合うレイ将軍たち。


「血を流さずに得られる武功」という甘い蜜を舐める彼らの笑い声は、次の獲物、ネスサロス城へのカウントダウンです!


さあ、勝利を確信したミケ軍。


しかし、ここに来て内部でも「誰が一番おいしくいただくか」の競争が始まりましたよ!


それでは、続きまして次話。


「副将軍たちの狂想曲、実利と戦術の火花」へ、物語を進めましょうか!

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