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GREAT HISTORY〜大史伝〜  作者: アイラル
第三部 ミケ将軍タズドット侵略編

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第百十七話 進撃の嵐

――連戦連勝。それは甘美な響きですが、同時に軍隊を内側から腐らせる猛毒でもあります。


 恐怖を忘れた兵士は、ただの傲慢な暴徒に過ぎず、足元の小石に躓いて転げ落ちるのが世の常。


 だからこそ、指揮官はあえて冷や水を浴びせるのです。


 「勝てますか?」と。


 それは疑念ではなく、緩んだ手綱を締め直すための、計算され尽くした鞭の一撃。


 知略の将が描くのは、ただの勝利ではなく、一分の隙もない「完全なる支配」。


 さあ、ご覧いただきましょう。


 慢心という名の見えない敵と戦う、常勝将軍の冷徹な心理戦を。

 ミケ軍の進撃は、最早嵐のようであった。


 国境の河川を越え、タズドットの防衛線を無血で引き裂き、地方官僚の無様な降伏と兵士たちの無秩序な逃亡という腐敗の果実を次々と収穫した。


 彼らは今、タズドット領深くに位置する次の戦略的要衝、ネスサロス城へと、その鉄の蹄を進めていた。


 レイ将軍が率いる1500名の軍勢は、連勝による高揚感と、タズドット軍の弱さを身をもって体験した自信に満ち溢れていた。


 兵士たちの足取りは軽く、彼らの心には血と汗の代償として得られる財宝の夢が描かれていた。


 しかし、その楽観的な空気は、軍を率いる将軍自身にとって、最も警戒すべき敵でもあった。


 レイ将軍は、馬上の高い位置から、長々と続く部隊の隊列と、薄暗い森の奥に霞むネスサロス城の影を冷静な眼差しで見つめていた。


 彼の非凡な知性は、現在の勝利が敵の弱さによるものであり、決して慢心してはならないことを告げていた。


 油断こそが、唯一ミケ軍を破りうる致命的な要因であると。


 彼は、隣を走るジギフリット副将軍に向かって、敢えて、現状の空気とは真逆の言葉を投げかけた。その声には、微かな緊張感と、部下の真意を試すような冷たい響きが混ざっていた。


「それにしても勝てるますかね、今回敵は強いですからね」


 このレイ将軍の問いかけは、本心からの疑念ではなかった。


 むしろ、以下の二つの目的を持った、緻密な心理操作であった。


 一つ目は、慢心への楔であった、敵は弱いという部下たちの確信に対し、敵は強いという逆の現実を意識的に叩き込むことで、軍全体の緊張の糸を引き締め直すため。


 二つ目は、士気の確認でもあった、連勝が部下たちの自信を過信に変えていないか、現場の指揮官たちの精神状態を最後の瞬間まで確認するため。


 レイ将軍は知っていた。


 ネスサロス城の防衛を任されたバーンハルド将軍が、どれほど無能であるかを。


 ヨン宰相の無為な命令が、タズドット軍をどれほど腐敗させているかを。


 だからこそ、この敵は強いという言葉は、勝利の確信に満ちたミケ軍への皮肉であり、自らが作り上げた完璧な戦場への絶対的な自信の裏返しでもあった。


 彼は、ジギフリットの熱血漢としての即答を予測していた。


 そして、その返答によって、軍の士気が健全であることを確認し、再び冷静な勝利の算段へと思考を集中させるつもりだった。


 彼の心は、既にネスサロス城の陥落、そしてその後の占領体制へと移行していたのである。

はい、というわけで!


第百十七話、「進撃の嵐」の回をお届けしました!


破竹の勢いで進むミケ軍!


無血開城、戦利品の山、そして敵の逃亡。


兵士たちが「俺たち最強じゃね?」と浮かれるのも無理はありません。


しかし、そこで水を差すのがレイ将軍の恐ろしいところ!


「勝てますかね、敵は強いですよ」。


嘘です! この人、絶対嘘ついてます!(笑)


相手が無能なバーンハルド将軍だって知ってるくせに、あえて部下に不安を投げかける。

これ、ただの慎重さじゃなくて、「勝った後に緩んで事故る」のを防ぐための、高度なマネジメントなんですよね。


1500人の命を預かる指揮官として、楽観ムードを許さないその姿勢。


カッコいいですが、部下からすると胃がキリキリする上司かもしれません。


さあ、そんな意地悪な(?)問いかけを受けたジギフリット君。


普通の人間ならビビってしまいますが、彼は果たしてどう返すのか?


次回、理屈を超えた「筋肉と信頼」の回答が炸裂します!


それでは、続きまして次話。


「俺たちがいるから大丈夫!」へ、物語を進めましょうか!

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