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GREAT HISTORY〜大史伝〜  作者: アイラル
第三部 ミケ将軍タズドット侵略編

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第百十六話 刃無き征服

――略奪という名の報酬が、勝者の頬を緩ませます。


 一方で、かつての誇りであった旗は、塵芥のように扱われ、敗者の涙で濡れていく。


 積み上げられた金貨の輝きは、失われた尊厳の代償。


 交わされる共犯者の笑みは、さらなる支配への序曲。


 しかし、そんな冷酷な戦場にも、ほんの少しだけ――本当に、気休め程度の「慈悲」が落ちていることもあるようです。


 嘲笑う兵士と、それを窘める武人。


 泥を塗られた錦の旗に、再び小さな灯火が宿る時。


 それは救いか、あるいは絶望を長引かせるだけの呪いか。


 さあ、ご覧ください。


 欲望と計算が渦巻く城内で、不意に交差する「生」への決意を。

 無血での城の制圧とタズドット地方官の屈辱的な降伏が確定した後、レイ将軍は、勝利の次の段階、すなわち実利の確保へと即座に思考を切り替えた。


 彼の関心は、武功よりも資源にあった。


「それでは戦利品を分け合いましょう。」


 レイ将軍の言葉は、部下たちへの冷徹な報酬の約束だった。


 ビテン副将軍が既に倉庫の確保と目録の作成を完了させていたため、作業は迅速に進んだ。


 ジギフリット副将軍は、戦利品の分配という具体的な報酬に、武人らしい純粋な喜びを爆発させた。


「やったぜ、お宝ゲットだ、全く嬉しいな!」


 彼の歓喜の声は、城内の緊張を一気に弛緩させた。


 彼にとって、タズドット征服は、国への貢献であると同時に、自己の富と地位を築くための、最高の機会だった。


 そして、レイ将軍とジギフリット副将軍は、顔を見合わせ、ニンマリして笑うのだった。


 そのニンマリとした笑いは、知略家と武人という異なる役割を持つ二人が、征服という共通の目標と、報酬という共通の実利によって、強固に結びついていることを示す、冷たい共犯の笑いだった。


 城内の倉庫から運び出されたタズドットの財宝は、その地方都市の豊かな蓄積を物語っていた。


 高級な布(絹、ベルベットなど)、煌びやかな宝石(ルビー、サファイア)、そして金貨、銀貨、銅貨といった膨大な貨幣が、山のように積み上げられた。


 レイ将軍は、これらを冷静に計算し、その功績と階級に応じて、配下に分け与えるのだった。


 彼の分配は、感情的な気前の良さではなく、軍規と効率に基づいていた。


「ほら、受け取りなさい」

「やったー、金貨だ、ありがてえ」

「全くしょうがない兵士たちですね、あんなに嬉しそうな顔をして、全く…」


 報酬は、兵士たちの忠誠心を維持するための、重要な戦略資源だったからだ。


 レイ将軍は、今回の財宝を眺め、それがリムリアのためにも良い財源になることだろうと、満足の笑い声を上げるのだった。


「ハハハハ!これだけの富が、無血で手に入りました、我が軍の不足は、これで補填されることでしょう、それにミケ将軍も喜ばれることでしょう、知略は、武力よりも遥かに効率的な財産を生み出すものです」


 彼の笑い声は、タズドットの富が、ミケ軍の軍事力と国力をさらに強化するという、非情な現実を象徴していた。


 財宝の分配が進む中、ジギフリット副将軍は、レナード大隊長という彼の腹心と、戦場での最も個人的な安堵を分かち合っていた。


 「それにしても良かったよな、レナード、誰も死ななくて」


 ジギフリットの声には、軽口ではなく、真の安堵が込められていた。彼は武功を望むが、無駄な部下の死は望まなかった。


「そうだよな、副将軍、誰も死ななくて良かった、良かった、 こんな楽な征服は、兵士全員にとって最高の報酬だな」


 ジギフリット副将軍はレナード大隊長と話し合うのだった。


 この誰も死ななかったという安堵は、勝利の最も皮肉な側面だった。


 タズドット側は指揮官が処刑され、兵士は逃亡または降伏したが、ミケ軍の刃による大量虐殺は免れ、ミケ軍側は一人の死者も出すことなく、領土と財宝を手に入れた。


 この誰も死ななかったという言葉は、ミケ軍の冷徹な合理性が、いかにタズドットの武人哲学を無力化したかを、最も端的に物語る証言となったのである。


「そういや、あの旗はなんだったんだろうな」

「海狸の錦旗の事だろ、降伏した敵のラルフ地方官が随分大切そうにしてたが、一体なんなんだろうな」

「やっぱすごいお宝なんじゃないか」

「ビテン副将軍は価値なしのゴミだと言っていたがな、まあ、何か意味があるんだろうか」

「ラルフ地方官それを聞いて怒り狂っていたけど、笑っちゃうよな、降伏したのに、今更何が出来るんだろうな」

「さあな、案外雷を降らすとかかもな、どっちにせよ、大切なのは降伏した相手に優しくすることだ、孫氏の兵法でも心を攻めるべしとあるしな」

「レナードは博識だな」

「そんなことない、ジギフリット」


 そして、二人は笑いながら会話を終えるのであった。


 その後、ラルフ地方官は泣きながら、海狸の錦旗を見つめるのであった。


 だが、海狸の錦旗は輝きを取り戻さない。


 「みゃーはどうすべきだったにゃーか、戦うべきだったにゃーか」


 ラルフ地方官は考え込むのであった、そこに一人のミケ軍の兵士が通り歩くのだった。


 「それにしても敵国の地方官は泣いてたぜ、情けないったらありゃしないよな、泣くぐらいなら初めから降伏しなきゃ良かったのにな」


 ラルフ地方官はそれを聞いて、やはり、御先祖様に申し訳ない、みゃーがすべき事は…


 だが、その時だった、一人の男がそれを否定するのだった。


「そんな事ないだろ、国民が死ななかったわけだしな」

「レナード大隊長、ですが、漢としての風上にもおけませんよ」

「立場や人によって正解なんて変わるもんだろ、俺は立派だったと思うぜ」


 それを聞いてラルフ地方官は考え直すのだった。


「みゃーがすべき事はここで死ぬことではない気がするにゃ、生きて国民を守ることにするにゃ、御先祖様、それでいいですかにゃ」


 その時だった、海狸の錦旗は輝きを取り戻したのであった。


「そうすることにするにゃー」


 そして、晴々しい顔をしたラルフ地方官がいるのだった。


 一方、その頃、レイ将軍は、分配の完了と部下たちの満足した顔を確認し、最後の勝利宣言を行った。


「やりましたねー、大勝利です」


 彼の勝利の宣言は、単なる戦術的な成功を超えた、歴史的な意味合いを持っていた。


 そして、ニンマリと笑うのだった。 その笑いは、タズドットの崩壊という大きな歴史の歯車が、自らの手によって確実に回り始めたことへの冷たい確信だった。


 今回の勝利で、ミケ将軍側は、セシェスという緩衝地帯を超えて、初めてタズドットの領土を征服するのだった。


 この無血の征服は、タズドット帝国の崩壊への決定的な第一歩となり、ミケ軍の冷酷な覇権が、現実の支配へと移行したことを、歴史に刻んだ瞬間となったのである。

はい、というわけで!


皆さん、今回のエピソード……レナード大隊長がイケメンすぎて、全俺が惚れました!


「お宝ゲットだぜ!」と無邪気に喜ぶミケ軍の兵士たち。


彼らにとって、タズドットの誇りなんて「価値なしのゴミ」でしかない。


そんな中で、独り泣き伏せるラルフさんに、レナード君が放ったあの一言。


「立場や人によって正解なんて変わるもんだろ、俺は立派だったと思うぜ」


……これですよ、これ!


救いようのない絶望の中に、たった一筋の光を落とす。この構成、痺れますね!


その一言が、死にかけていたラルフさんの魂に火を灯し、そして輝きを失っていた『海狸の錦旗』に再び光を取り戻させた。


「生きて国民を守る」。


それは、戦って死ぬよりもずっと険しく、ずっと苦しい道かもしれません。


でも、その道を選んだラルフさんの顔は、降伏した時よりもずっと「英雄」に近づいた気がします!


一方、そんなエモーショナルなドラマなど露知らず、レイ将軍は「大勝利です」とニンマリ。


富を手に入れ、軍を強化し、歴史の歯車を冷酷に回し続ける。


「知略は武力より効率的」。


その言葉通り、ミケ軍の覇道は誰にも止められない勢いで加速していきます。


さあ、心に光を宿した敗者と、無敗のまま進撃する勝者。


物語は、さらなる要衝『ネスサロス城』へと舞台を移します!


それでは、続きまして次話。


「進撃の鉄蹄と、将軍の試問」へ、物語を進めましょうか!

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