第百十五話 無血の勝利
――勝利の色は、必ずしも鮮血の赤とは限りません。
時には、凍りつくような青白い静寂こそが、最も残酷な征服の証となるのです。
剣を交えず、血を流さず。
ただ圧倒的な「格」の違いを見せつけることで、敵の心だけを確実に殺す。
それは、慈悲に見せかけた、最も効率的で冷徹な破壊工作。
謀略を巡らす頭脳と、それを信じて振るわれる暴力。
二人の指揮官の笑い声が重なる時、そこにあるのは平和な光景ではなく、揺るぎない支配の完成図です。
さあ、ご覧いただきましょう。
傷一つない城壁の中で交わされる、あまりにも無邪気で、あまりにも恐ろしい、勝者たちの握手を。
タズドットの地方官たちが絶望的な降伏と後悔の念に苛まれる中、ミケ軍の指揮官たちにとっては、最良の結果がもたらされていた。抵抗は微々たるものどころか、実質的に皆無であり、軍隊の損耗はゼロに等しかった。
そして、無血で城を制圧することに成功したレイ将軍達だった。
レイ将軍は、城内の静寂と無傷の城壁を目の当たりにし、深い安堵と、冷たい満足感を覚えた。彼の最小の犠牲で最大の効果をという戦略思想が、完璧に実現した瞬間だった。
彼の勝利は、血を流す武力ではなく、敵の心理を完全に読み切った知略によるものだった。
彼は、その成功をかみしめるように、静かに、しかし心からの満足を込めて語った。
「それにしても無事に勝ててよかったですね。」
レイ将軍はそう言って、深く頷き、心からの喜びを滲ませるのだった。
彼の喜びは、感情的な高揚というよりも、計算と予測が完全に一致したことへの知的な快感だった。グルナルを処刑に追い込み、敵の士気を崩壊させたという事前工作が、この無血の勝利という形で結実したのである。
レイ将軍の知的な喜びに対し、ジギフリット副将軍は、武人らしい熱狂をもって応答した。
彼は一番槍の栄誉こそビテンに奪われたものの、征服の最初の一歩を無事に達成したことに、純粋な満足感を覚えていた。
「全くだな、レイ将軍、勝ててよかったよ」
ジギフリット副将軍は、力強く笑いながら言った。
彼の笑いは、血腥い戦場ではなく、安全な城内で勝利の報いを受けられることへの安堵と、偉大な将軍の作戦の一端を担えたことへの達成感が入り混じっていた。
彼は、レイ将軍の偉大さと自らの武力が完璧に協調したことに、強い誇りを感じていた。
(そうだ、 闘わずして勝つのがレイ将軍の知略であり、その策を寸分の狂いもなく実行するのが、俺たち武人の役割だったんだ。無駄な損耗なく、敵領土を踏破した。これこそ、最高の武功じゃないのか!リムリアの為になってるし、これでいいな)
こうして、結末に満足するジギフリッド副将軍だった。
そして、ジギフリット副将軍と共に笑い合ったレイ将軍だった。
この二人の指揮官が顔を見合わせ、勝利を分かち合う瞬間は、ミケ軍の鉄壁の結束を象徴していた。
レイ将軍は知略(頭脳)を代表し、感情を排した勝利に満足する。
ジギフリット副将軍は武力(実行力)を代表し、結果としての成果に満足する。
彼らの笑い声は、タズドットの旧体制が、ミケ軍の冷酷で合理的な支配構造の前に、いかに無力であったかを証明していた。
この無血の制圧によって、タズドット領土侵攻というミケ軍の新たな段階は、揺るぎない確信をもって確立されたのである。
はい、というわけで!
皆さん、今回のレイ将軍とジギフリット副将軍のやり取り……あまりにも爽やかすぎて、逆に怖いですね!
「勝ててよかったですね」「全くだな!」
一見すると、困難を乗り越えた仲間同士の熱い友情シーンに見えます。
でも、よく考えてください。彼らの足元には、踏みにじられたタズドットの尊厳が転がっているんです。
レイ将軍の喜びは「計算が合った」というパズルの完成に対する快感。
ジギフリット君の喜びは「俺、活躍した!」という無邪気な達成感。
この二人がガッチリと握手をした瞬間、タズドットの悲劇は「確定事項」として歴史に刻まれました。
特にジギフリット君!
「闘わずして勝つのがレイ将軍の知略、それを実行するのが俺たち武人」
うーん、素晴らしい解釈! 彼は本当に単純……いえ、素直でいい子ですね(笑)。
血を見ずに済んだことに安堵するのは、彼の中にまだ「人間味」が残っている証拠かもしれません。
ただ、その人間味が「敵」ではなく「味方」にしか向いていないのが、この作品の残酷なところ!
さあ、勝利の次に来るものといえば?
そう、「戦利品」の時間です!
精神的な勝利の次は、物理的な利益の確保。
次回、彼らの笑顔がさらに「ニンマリ」と歪む瞬間が待っています!
それでは、続きまして次話。
「お宝ゲットだぜ! 戦争の『実入り』」へ、物語を進めましょうか!




