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GREAT HISTORY〜大史伝〜  作者: アイラル
第三部 ミケ将軍タズドット侵略編

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第百十二話 誰も戦わなかった戦場

――城門が開く音は、必ずしも希望の音色ではありません。


 ある者にとっては、誇りを捨てた敗北の軋み。


 ある者にとっては、待ち望んだ略奪の合図。


 そしてある者にとっては、振り上げた拳の行き場を失う、空虚な平穏の響き。


 血まみれの英雄譚を期待した皆様、申し訳ありません。


 今回、戦場を駆け抜けたのは、名馬に跨った騎士ではなく、欲望という名のエンジンを積んだ「集金人」だったようです。


 剣よりも速く、魔法よりも鋭く。


 「利益」の匂いを嗅ぎつけた男が、誰よりも速くゴールテープを切る。


 さあ、あまりにも平和で、あまりにも騒がしい、無血開城の顛末をご覧に入れましょう。

 ラルフ地方官とドーゲ地方副官による屈辱的な降伏の決定は、ミケ軍の渡河部隊が河川を渡り終えようとする、まさにその瞬間に実行された。


 そして、城の門は開場するのだった。


 それは、激しい攻防戦の末に破壊された門ではなく、抵抗の意志を失った守備側によって、静かに、そしてゆっくりと内側から開け放たれた門だった。


 この無抵抗の開門こそが、タズドットの防衛体制の精神的な崩壊を象徴していた。


 この無血の制圧という予期せぬ幸運を、武力ではなく実利を追求するビテン副将軍が最も鋭く察知していた。


 彼は、戦闘よりも占領後の資源確保を優先するがゆえに、先鋒隊ジギフリットの背後から、驚くべき速さで城門へと駆けつけた。


 そして、そこにビテン副将軍が一番乗りするのだった。


 彼は、武功の誉れを熱望するジギフリットを差し置いて、真っ先に城内へと雪崩れ込んだ。


 彼の目的は、敵の頭を討つことではなく、敵の管理していた資源を真っ先に確保することだった。


 彼は、その異例の状況に高揚感を覚え、自身を鼓舞するかのように叫んだ。


「我が突撃部隊が一番乗りだ! 知略と行政こそが、最も速い突撃なのだ!リムリアの為に」


 城内に踏み込んだビテン副将軍は、鋭い視線で周囲を見渡した。


 彼の期待していた白兵戦や残存兵の抵抗は、どこにもなかった。


 そして、周囲を見渡すと敵はもういない。


「誰も国の為に戦おうとしないのか」


 守備兵は、降伏の命令を受け、武器を捨てて広場に集結しているか、あるいは既に逃亡の途についていた。


 このあまりにも安易な征服は、ビテンの冷静な期待すら上回るものだった。


 気合いと根性で立っていたビテン将軍は、この勝利の安易さを、彼の指導力と戦略の正しさの証と解釈した。


 彼は、敵の抵抗がないという拍子抜けの現実を、これでよしと自己暗示をかけるように受け入れた。


 彼はますます気合を入れて、やる気を出すのだった。 彼のやる気は、戦闘ではなく、これから始まる大規模な資源の管理と徴発へと向かっていた。


「やった、勝ったぞ! これほど容易くタズドットの領土を手に入れられるとは、我がミケ軍の優位性は、揺るぎない!リムリア万歳」


 ビテン副将軍が城内での無血の勝利に歓喜する中、遅れて、ジギフリット副将軍が、水の滴る体で一番槍の誉れを奪われた悔しさを滲ませながら、勢いよく城内に乱入するのだった。


 彼は、戦闘のない城内という拍子抜けの状況に、一瞬戸惑いの表情を浮かべた。


「一体、戦闘が無いとかどうなってんだよ」


 彼は困惑の色を隠せないのだった、誰も死なない場所がそこには存在していた。


 次にリーヴェス副将軍が、冷静な眼差しで部隊の安全を確保しつつ、整然と城内に乱入するのだった。


「我輩が思うに完全勝利というやつかな」


 彼は、無血での制圧が、レイ将軍の戦略的な思惑通りであることを確認していた。


 ビテン(実利)、ジギフリット(武力)、リーヴェス(戦術)の三人の副将軍が、タズドットの重要な城塞内で合流したこの瞬間、タズドットの領土は、正式にミケ軍の支配下に入ったことが確定したのである。

はい、というわけで!


皆さん、まさかのビテン無双でしたね!


「知略と行政こそが、最も速い突撃なのだ!」


いやー、名言出ました! これ、テストに出ますよ!


普通、ファンタジー戦記の一番乗りって、馬に乗った騎士が剣を掲げて……みたいなシーンじゃないですか。


それが、どう見ても「事務方」の男が、金目のものを確保するために全力疾走で入ってくる。


この「欲望に忠実な大人の汚さ」、最高です! 彼の足の速さは、リムリアへの愛国心か、それともただの強欲か。間違いなく後者でしょう!


そして、かわいそうなのはジギフリット君。

第百十話であれだけ「俺の時代だ!」「歴史に名を残す!」と内心でポエムを詠んでいたのに、蓋を開けてみれば「ずぶ濡れで遅刻」。


敵はいないわ、手柄は事務屋に取られるわ、踏んだり蹴ったりです。


「一体、戦闘が無いとかどうなってんだよ」という困惑。


彼にとって、平和な無血開城は、戦場よりも残酷な仕打ちだったのかもしれません。


最後に冷静なリーヴェス君が「完全勝利」と締めることで、この奇妙なコントのような制圧劇は幕を閉じました。


誰も死ななかった。けれど、タズドットにとっては「死ぬより辛い搾取」が始まる予感がプンプンしますね!


それでは、続きまして次話。

「猫語尾のおじさんと、逃げ惑う兵士たち」へ、物語を進めましょうか!

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