表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
GREAT HISTORY〜大史伝〜  作者: アイラル
第三部 ミケ将軍タズドット侵略編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

107/131

第九十九話 恐怖が先に勝つ戦場

――その地響きは、敗北者たちの心臓を直接ノックする、死神の足音でした。

 「戦わずして負ける」とは、よく言ったものです。

 けれど、今、目の前に広がっているのは、そんな生易しい言葉で片付けられる光景ではありません。

 

 それは、魂の凌辱。

 

 圧倒的な暴力と、冷徹な殺意。

 レイ将軍が放つ「殲滅」の号令は、物理的な炎よりも先に、タズドット兵たちの生きる意志を焼き尽くしてしまいました。

 

 勝つ気概を奪われ、逃げる退路を塞がれ、ただ「耐えろ」と命じられた羊の群れ。

 彼らの前に現れたのは、飢えた狼たちが統率された、銀色の死の壁。

 

 震える足。乾いた喉。

 「名誉」なんて言葉が、恐怖の前ではどれほど無力で、どれほど空虚な響きを持つのか。

 彼らの悲鳴は、戦いが始まる前から、もう天に届いているのです。

 

 さあ、始めましょうか。

 慈悲なき捕食者と、牙を抜かれた獲物による、あまりにも一方的で、あまりにも残酷な殺戮劇ショーの幕開けを。

 ヨン宰相とグルナル副将軍の間で「持久戦と名誉の放棄」という苦渋の決断が下された直後、戦場では、レイ将軍の冷徹な指揮のもと、殲滅戦の準備が整っていた。


 レイ将軍率いる1500名の精鋭は、知略、魔術、そして武力の全てにおいて、対峙するタズドット軍を圧倒していた。


 一方、グルナル副将軍率いる500名のタズドット軍は、名誉ある戦いではなく「防御と戦力の温存」という、武人の魂に反する使命を背負わされていた。戦力比は三対一、そして士気の差は、それ以上に開いていた。


 レイ将軍は、戦場を見渡す小高い丘の上で、戦いの主役となるジギフリット副将軍に、明確な攻撃命令を下した。


 レイ将軍の瞳には、「撃破」と「掌握」という、二つの目標に対する冷酷な情熱が燃え盛っていた。


 レイ将軍は、低く、しかし命令の重みを込めた声で告げた。


「ジギフリット副将軍。いいですか、何としても敵を撃ち倒しますよ。 我々の目的は、この地のタズドットの残存勢力を根絶やしにすることです。持久戦など、敵に与える時間はありません。」


 ジギフリット副将軍は、その命令に即座に、熱狂的に応じた。彼は、戦闘そのものに飢えていた。


「わかっているよ、将軍。 俺たちは、お前の作戦を血で固めるためにここにいる。敵の防御が固まる前に、一瞬で叩き潰してやるさ!」


 ジギフリットの攻撃への切望は、レイ将軍の殲滅戦略と完全に同期していた。彼は、攻撃の意思を重ねてレイ将軍に確認した。


「突撃ですか、将軍!?いつでも突撃できますよ! 奴らに考える時間など与えてたまるか!」


「頼むぞ、ジギフリット。この戦いの突破口は、貴殿の武力にかかっている。」


「俺に任せてくれ、なんとかしてみせよう。 奴らを殲滅し、この地をミケ軍の新たな支配地にしてやる!」


 レイ将軍は、最後の確認として、冷徹なゴーサインを与えた。


「行きますよ。全軍、ジギフリットに続け。」


 そして、軍勢は進むのだった。


 レイ将軍の命令を受け、ジギフリット副将軍が率いるミケ軍の先鋒部隊は、地の底から湧き上がるような雄叫びを上げ、タズドット軍陣地へと怒涛の進撃を開始した。


 1500名の兵士たちが、一糸乱れぬ隊列を保ちながら、大地を蹴り、その鉄の進軍は、戦場全体を振動させた。


 彼らの進撃は、勝利の確信と冷酷な残虐性に裏打ちされており、その勢いは、自然の猛威に等しかった。


 ミケ軍の旗印が風になびき、タズドットの陣営へと死の影を投げかける。


 それに対して敵は、ひどく怯えるのだった。


 グルナル副将軍率いるタズドット軍の兵士たちは、ヨン宰相の「持久戦」という非戦闘的な命令と、ミケ軍の圧倒的な武力と勢いという、二重の重圧に晒されていた。


 士気は崩壊しており、彼らの心は、既にボントゥス軍の無様な敗北、そしてエディ大隊長の屈辱的な捕虜化の報によって、深く蝕まれていた。


 そして、目的もまた喪失していた、彼らの使命は「勝利」ではなく、「戦力の温存」という、武人にとって最も曖昧で不名誉な目標だった。


 ミケ軍の地鳴りのような進撃を目の当たりにし、タズドットの兵士たちは、戦闘開始前から戦意を喪失していた。


 彼らの目には、勝利の光ではなく、レイ将軍の魔法の炎に焼かれる仲間の幻影が見えていた。


「ミケ軍だ!レイ将軍の軍団だ!」

「逃げろ!彼らは我々を容赦なく焼き尽くすぞ!」


 タズドット軍の陣地には、恐怖のざわめきが広がり、グルナル副将軍の「防御」という命令すらも、その絶望的な怯えを抑え込むことはできなかった。


 戦いは始まる前から、ミケ軍の精神的な圧勝に終わっていたのである。

はい、というわけで!


皆さん、今回のレイ将軍とジギフリット副将軍の「殺意の高さ」、凄まじかったですね!


「考える時間など与えてたまるか!」って……。タズドット軍の皆さん、まだ心の準備もできてないのに、いきなりフルスロットルの暴力を叩きつけられる恐怖。


今回の見どころは、やっぱり「士気の温度差」です。


• ミケ軍:「ヒャッハー! 殲滅だァ!」とアドレナリン全開の捕食者たち。

• タズドット軍:「逃げたい……」「もう無理……」と戦う前から心が折れている敗北者たち。


そして、その中心にいるグルナル君。


部下たちが「逃げろ!」と叫んでいるのに、自分は「逃げてはいけない(=戦ってもいけない)」という、がんじがらめの状態。


普通ならここで「俺に続け!」と鼓舞するところですが、彼に与えられた役目は「動かない案山子かかし」。


この絶望的な状況下で、次回、グルナル君がついに「最初の命令」を下します。


でも、その命令の内容がまた……あまりにも悲しい。


「守って死ね」


勝利を約束するわけでも、生還を願うわけでもない。ただ「死ぬまで盾になれ」という、呪いのような言葉。


勇気を奪われた将軍が、震える声で部下たちを死地へ縛り付ける。


そんな救いのない防衛戦が、いよいよ始まってしまいます。


それでは、次話。


「及び腰の英雄、あるいは死への行進」でお会いしましょう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ