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クール聖女とアンラッキーギャル  作者: キノハタ


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エピローグ 五 愛とか営みとか

 『……私とるいは少し()()してくる。勝負は勝負、勝ちは勝ちだから』


 『え、あ、うん……』


 『……だから、そうだね……二時間後、更衣室に集合。それまでは自由時間』


 『ちょっと、える、まじですんの!? 思いっきり外だよ!?』


 『……それもまた、夏のロマンス』


 『えっと……じゃあ、みやびの命令は?』


 『……あっちで二人でゆっくりしてよっか』










 ※



 なんてやり取りがあった後、私とみやびもなんとなく二人になれそうな岩場を見つけて、並んで海を眺めてた。



 二人で、休憩? 二時間後?



 それってつまり、多分、そういうこと。



 いや、もしかしたら、ただ単に気を遣われただけなのかもりみやびと二人っきりの時間を、わざわざ作ってくれただけなのかもしれない。



 てなわけで、経緯はどうあれみやびとはこれで二人っきり。



 少しだけ話して、ちょっと笑って、それからどちらともなくキスをした。



 唇をそっと重ねて、なぞるように撫でる様に、お互いの想いを確かめる。



 そしたら、みやびの指が私の身体……鎖骨辺りにそっと伸びてきた。前ならそれだけでびくって反応してしまいそうなものだけど、今日はそれをぐっとこらえる。



 大丈夫、気持ちの整理はもうついてる。



 もちろんしたことがないことは、怖いこと。不安にもなるし、ドキドキもする。



 でもそれでもいいって、きみと一緒ならそれでもいいって。



 そうやって、丁度さっきまで話したりしていたからかな。受け入れる準備がちゃんとできてる。



 君の愛を、私の想いを、身体を重ねて確かめる、そんな行為。



 身体が求めるままに、心が惹かれるままに、君と全てを重ね合う、そんな行為。



 ホントはずっと、ずっと君に触れらるたび待ち望んでいた、そんな行為。



 それを受容れる準備は、もう大丈夫。



 だから、ゆっくりと私の水着に沿うように動くみやびの指にくすぐったさを少し感じながら、きみの顔をすっと見つめた。



 あ、でも、みやびもちょっと緊張してるかも。



 顔が赤くなって、何時になく真剣で、口元はぎゅっと引き絞られている。



 ちらっと眼があったら、少し心配そうに瞳が揺れて、口が開いたけれど言葉はうまく出てこないみたい。



 そりゃそうだよね、私に気持ちの整理が必要だったんだから、みやびにも必要だよね。



 だって、そんなに急に、心はわかりやすく動いてはくれないから。



 だから、こういう時は、ちゃんと今の気持ちを伝えないと。



 「大丈夫」



 「触られるの嬉しいよ」



 「みやびに触ってもらうの、嬉しいよ。だから、大丈夫」



 私がそういうと君は少しだけ瞳を潤ませて、そっと私の肌にまた指をなぞらせた。



 ゆっくりと。



 ゆっくりと、指が水着の隙間に滑り込んでくる。



 他の誰かに触られたら拒絶する場所。



 今まで誰にだって触ることを許しては来なかった場所。



 君にだけは、心の底から、許せる場所。



 触れる。



 触れる。



 少し、なぞられて。



 小さく、触れた。



 息と一緒に声が漏れる。



 ああ、これはバレちゃうかな。



 ちょっと触られただけなのに、もう気持ちいい。



 でも仕方ないよね、もういっそバラしちゃおう。



 どうせ君にはすぐにわかってしまうんだから。



 「みやび、気持ちいい」



 「そこ好き、気持ちいいの」



 そんな声に応えるみたいに、君の指はゆっくりと私の水着の下にもぐり続ける。



 敏感な所を触られるのも、もちろん気持ちがいいのだけれど。



 時々、揉みしだくように指を動かされたり。



 時々、焦らすように敏感な部分の周りだけなぞられたり。



 時々、痛いくらいにきゅっと抓られる刺激すら。



 もう全部が全部、気持ちがいい。



 声が荒れる、息が漏れる。



 頭の奥が熱でどんどん溶けだしていくような、そんな感覚に呑まれていく。



 私、私、ほんとにいま、みやびとえっちしてるんだ。



 そう意識するだけで、感覚がどんどん過敏になっていく。



 ああ、今、私、きっと変。



 だって、触られてない時間も気持ちがいい、肩を撫でられるだけで気持ちがいい。



 耳もとで荒れるみやびの息を聞くことも、みやびの熱い吐息が私の首筋にあたる感覚さえもう全部が気持ちいい。



 どうしよう、幸せ。気持ちよくて、怖くなるくらいに、幸せ。



 誰かと一緒になること、誰かと一緒に肌を重ねること、心が一緒になったみたいに、身体を一緒に重ねること。



 生まれたままの姿を君に委ねること。



 全部が全部気持ちがいい。身体が嬉しさで震えちゃう。



 そしたら、本当に身体の奥がぶるぶるって震えてくる。しかも、その震えが嬉しさで起こってるのが自分でも解ってしまうから、それだけで余計に感じてしまう。



 でも。



 でも。



 でも、まだなんだよね。



 こんなに気持ちがいいことも、こんなに幸せが溢れることも。



 まだ本当に触れ合う前の戯れでしかないんだから。



 大丈夫かな。



 でも、してみたいな。



 …………あ、でも私から触ってないや。



 私ばっかり気持ちよくなってちゃ、だめじゃんね。



 だって、みやびにばっかりしてもらうだけじゃだめなんだから。



 私だって、みやびのこと気持ちよくしてあげないと。



 だから、みやびの指がもう、遠慮も加減もなしに私の身体をまさぐってくる隙間をどうにかぬって。



 君の身体に手を伸ばす。



 細くて、柔らかくて、綺麗で。



 私なんかが触れていいのかわからない、真っ白なその肌に。



 そっと指を伸ばしてみる。



 そしたら君の身体がぴくって、少しだけ震えてた。



 でも何処触ったら気持ちがいいんだろ。



 最初はやっぱり上の方かな。



 お腹からそっと沿うように、君の身体に指を伸ばして。



 さっき私がしてもらったみたいに、水着の隙間からそっと手を滑らせる。



 ここかな。



 あんまり強くしたら痛いよね。優しく、でもちゃんと気持ちがいいように。



 これくらい、これくらいかな。



 頑張って指を動かすけれど、君が気持ちよくなってくれてるかはよくわかんない。



 君の顔は少し興奮に染まってるけど、それがこの状況のせいなのか、私が触ってるからなのかもわかんない。



 だから、わかんないまま必死に指を動かそうとするけれど、君の指の動きの方が繊細なのに的確で。



 私ばっかり気持ちよくって、気付けば自分の気持ちよさで指が止まっちゃう。



 違う、違うの。一緒に気持ちよくなりたいのに。



 こんな一方的にしてもらうだけの関係になりたいわけじゃないのに。



 あれ、どうしよう、涙が出てくる。



 おかしいな、こんな程度のことで、泣いちゃったら折角の大切な想い出が台無しなのに。



 なのにどうしよう止まんない。



 「どうしたの―――あやか?」



 「うぇ、私、私ばっかり気持ちよくなってる。みやびに、みやびにも気持ちよくなって欲しいのに…………」



 ああ、どうしよう。こんなのわがままな子どもみたい。



 自分の都合で泣いて、自分の都合で迷惑かけて。



 どうしよう、こんなんじゃみやびに嫌われちゃう。



 「ううん、ちゃんと気持ちいいよ。私があやかほど顔に出ないから、わかりにくいかもしれないけど、ちゃんと気持ちいい。……その証拠にほら」



 だけど君は軽く笑って、そう言って、そっと私の手を取った。



 それからゆっくりとお腹に指を添わせて、その下の方に。



 水着の隙間の、その奥に。



 私の指を導いて。



 ピチャリ。



 って、音がした。



 「あ」



 思わず口をついて出た言葉を、優しく笑うみたいに耳元で囁かれる。



 「ね?」



 そう言って笑う君に、私はがくがくと必死に首を縦に揺らした。



 やった、よかった、みやびもちゃんと気持ちよくなってくれてる。



 「へ、へへ、えへへ」



 「…………んっ……っ」



 嬉しくなって、優しく、優しく、みやびのすっかり濡れた大事な部分をなぞってあげる。



 いっぱい気持ちよくなって欲しいな、それからいっぱい素敵な想い出にして欲しいな。



 そう想うと、なんだか楽しくなってくる、普段は落ち着いて穏やかな表情ばかり浮かべてるみやびの顔が、火照って声を抑えようと堪えてる姿を見てるのもなんだか楽しい。



 私の指で気持ちよくなってくれてるのが、なんだか嬉しい。ううん、すっごくすっごく嬉しくてたまらない。だからもっとしてあげたくなる。もっと感じて欲しくなる。



 何度も、何度も。



 君の大事なところを撫で上げて。



 その度に、君の声は高くくぐもって、段々と抑えきれなくなってくる。



 もうちょっとかな、もうちょっとかな。



 余裕がなくなってきて、みやびの身体が私に預けられてくる。身体が小刻みに震えて、指が段々と熱くとろとろに濡れていく。



 あとちょっと。



 「----」



 あとちょっと。



 「ーーーーーーーーー」



 あと―――。



 「ッーーーー!!!!」



 みやびの身体が最後にがくんと強めに揺れた。



 私の指はもうすっかり熱いバターをかけたみたいにドロドロで。



 息は荒れて乱れて、その熱さが私の首筋にも伝わってくる。



 上手に……できたかな?



 少し心配になってみやびの顔を覗き込む。



 「き、気持ちよく……できたかな」



 「……うん、すごく気持ちよかった」



 そう言って君はゆっくりと息を抜くみたいに、永く永く身体から力を抜いた。



 え、えへへ、えへへへへへ。



 や、やったよ。ちゃんと気持ちよくできた。前は私気持ちよくしてもらってばっかりだったから、今度はちゃんとみやびのこと気持ちよくできたんだ。



 嬉しさのあまり小躍りしそうになりながら、君の身体をぎゅっと抱きしめる。



 いやあ、ふふ。最初はどうなることかと想ったけれど、やれば意外とできるあやかさんではありませんか。



 これはもうみやびのことをひぃひぃ言わせる日も近いのでは?



 なんて、うしししと思わず、にやけ声を零していたら、君はゆっくりと身体を起こすと、私の頬に愛情の証の様に口づけをする。



 優しく、小さく、でもたくさんの想いが詰まったような。



 それからじっと君と眼を見つめ合わせた。



 みやびはゆっくりと微笑むと、少し肩の力を抜いたように、息を吐いてから。そしてーーー





 「じゃ、攻守交替ね?」





 え?



 と、反応する暇すらないままに。



 私の両手をがしっとつかんで、そのまま覆いかぶさるように、抑え込まれる。



 あ、あれ。今回は私がみやびのことを気持ちよくする回のはずでは。



 なんて、私の思惑も虚しく。



 ふと気づけば、舌なめずりするように、私のことをじっくり眺める君に見られているだけで。



 身体の奥が抑えきれない期待にドキドキと震えているのが感じ取れた。



 あ、はい、正直に白状します。



 やっぱり、私、虐められるの、ちょっと好きです……。



 虐めるターンになって、ちょっと怖い顔になるみやびのことも。



 どうしようもないくらいに好きなのです……。



 気づけばもう、胸の鼓動が鳴り止まない。



 君にどんなことをされるのか、想うだけで狂おしいほどに堪らない。



 ああ、やっぱり私ちょっと変態なんだよねえ……。






 ※








 『愛』の奇跡がなくなったことで、あやかとの関係に支障をきたしてしまうかもしれないと思ってたり


 なにせ、あれは言ってしまえば快楽神経を直接刺激するような、脳の限界ぎりぎりを責めるような常識を超越した快楽の与え方だから。


 あれ以上の気持ちいいこと、してあげられるかなって正直不安はあったのだけれど。



 まあ、杞憂だったかな。



 「あ、だめだめだめ。それだめ、おかしくなっちゃう、わたし、おかしくなっちゃう、みやびだめだめだめ」



 「だめじゃないでしょ、嘘はすぐわかっちゃうんだから、ほら正直に言わないと、もっと酷いことしちゃうよ?」



 そう言って、君の水着の下に潜り込ませた指をかりっと折り曲げて、奥をなぞった。



 「んぁぅ??!!」



 「ほら」



 「ーー??!!!ーーーーー!!???」



 「ほら、正直に言わないと、もっとしちゃうよ?」



 声も、息も、表情もすっかりぐちゃぐちゃに崩れたあやかの後ろからしなだれかかるみたいに攻め立てる。



 そうしている間にも、あやかはどんどん表情が蕩けて、他の誰かにはとてもじゃないけど見せられないような顔になっていく。そうやって崩れる君の顔がかわいくて、たまんない。



 それにしてもるいの言ったとおりだった。半端な技術なんて、詰め込みの知識なんて、初体験にあっても、邪魔になっちゃうだけだったかも。



 相手の顔を見て、相手の声を聴いて、相手の身体の反応に感覚を傾けて。



 良いやり方で、良い場所に、良いタイミングで、触れてあげる。



 それだけで充分なんだ。本当に気持ちがいい場所は、あやかの身体が勝手に教えてくれる。



 「あ、あ、あ、---。うそ、うそです、きもちいいです。も、もっとしてほしい―――です。あ―――」



 「はい―――よくできました」



 ご褒美に、あえてゆっくり動かしていた指を、少し早く丁度いいなで方でこねくり回してあげる。空いた手で、一番気持ちいいところを一緒にさするのも忘れない。



 それだけで、あやかの身体は簡単に、強い波に溺れたみたいに、がくがくとおかしいほどに痙攣しだす。



 「-------!!! あ―――…………あ―――…………」



 身体の力が抜けて倒れそうになるあやかを、後ろからぎゅっと抱きしめて逃がさない。耳元をずっと舌でなぞりながら、大きな波の余韻に浸る彼女をそれでもまだ触り続ける。



 「---あぅ?? みやび、あの私もう何回も―――?? ぅあ―――??」



 「うんいいよ、何回でも、たくさん気持ちよくなってね―――?」



 私がそう言いきらないうちに、あやかの身体がもう一度強く跳ねた。反射で腰が私の手から逃げようとするけれどできてない。それのせいで余計にこすれてきっと余計に気持ちいいんだろうね。何度か痙攣しながら、追い打ちの様に何度も何度もあやかの身体を大きな波がおそっていく。



 「-------あ―――――う―――――あ?」



 「一杯できたね、えらいよあやか、えらいえらい」



 放心して、身体も表情も何もかもがドロドロになった君の頭を撫でながら、そうやって囁き続ける。



 あー、でもこれはそろそろかな。



 そろそろ今の刺激には慣れてきちゃうころだろうから。



 ―――もっと強いのいっちゃおっか。



 「-----?」



 「ふふふ、ね、あやか今触ってるのどこでしょー?」



 あやかのお尻側から回した指を、あやかの奥の奥でくるくる回す。



 慣れない刺激にあやかが目を白黒させているうちに、そこを私の指で解し溶かしていく。



 「あ、え、あ?」



 「正解はね―――子どもが産まれるところ」



 奥の奥。



 大事なところの本当に一番、奥の奥。



 ここがちゃんとあやかにとって気持ちがいいポイントなのは、さっきまでの流れでちゃんと確認済み。



 最初はゆっくり撫でるみたいに。



 段々と小さく、奥の部屋をノックしてあげるみたいに。



 慣れてきたら、あやかの奥の内蔵ごとゆっくりと揺らしてあげるみたいに。



 奇跡を使ってた時から、あやかがここの刺激に弱いのもわかってるから。


 

 きっと君は耐えられない。



 「あーーー!!??? あぁぁぅぉお?! あぅぅあ?!!!???」



 「ふふふ、よしよし」



 情けない声を上げて、もう声から可憐さや可愛さもなくなってきた。それくらい余裕がないってことなのかな。でも今の私にとっては、そんななりふり構わない嬌声が、愛おしくてたまらない。



 ああ、もっと君の聲が聞きたいな。



 「や、やだ、やだ、ば、ばかになっちゃう!!?? 私、もう身体ばかになっちゃうから!!??? みやび、だめだめ!!??」



 ちょっと泣きそうなくらい取り乱しながら、君は快楽から逃れようと懇願する。



 うーん、君が今、底知れない快楽に、終わりの見えない悦楽に困惑して怖がっているのは多分、本当。



 私に止めて欲しいのも多分、本当。



 私はそれをわかってる。



 ――――わかってるけど、止めてあげない。



 だって、君は本当に怖がってはいるけれど。



 「―――いいよ? バカになって」



 それでも君は、こんなふうに言われることを。



 「そしたらずっと可愛がってあげる、私じゃないともう絶対満足できない身体に仕立て上げて、一生、可愛がり続けてあげる」



 こんなふうに酷いことをされちゃうことを。



 「だからいいよ、あやか。そのままね、バカになっちゃえ―――」



 こうやって私に滅茶苦茶にされてしまうことを。



 心のどこかで待ち望んでいることを。



 私は知っているんだから―――。



 「あ―――」



 少し強めに君のお腹の奥を揺らした。



 漏れた声は、恐怖や困惑とは違う、悦びと愛欲の声で。



 それは同時に、君の快楽を抑えていた最後の栓が、壊れてしまう音でもあった。



 「          」



 君に添えていた指に勢いよく、熱い水飛沫がかかった。



 「えらいね、ちゃんとできてえらいね。一杯出せて、すっごくえらいよ」



 君の身体は壊れた人形みたいに、がくがくと揺れ続ける。でもそれでも構わず君の身体と君の脳に、私の愛と快楽を注ぎ込んでいく。



 心配しないで、君への想いはたくさんたくさん溢れるほどにあるからね。ちゃんと全部味わってもらわなきゃ。



 「                」



 「かわいいよ、あやか。好き。好き。愛してる。だからほら、もっと気持ちよくなって―――?」



 ああ、好き。可愛い、愛してる。崩して、溶かして、それでも私の元から離してあげない。



      「           」



 「うん、うん、きもちいいね。嬉しいね、だからもう一回---頑張って?」



 囁いて。



 口づけをして。



 触って、撫でて。



 君の全てを気持ちよさに染め尽くして。



 もうどうやったって、私のことを忘れられないくらいに。



 君の身体に愛を注ぎ込んだ。



 溢れ出るほどに止まらない私の想いを。



 君の身体に一滴も残さず注ぎ込み続けたんだ。







 そうやって、最後の最後。





 君がもう呆けて、自分の脚で立ってもいられなくなったころ。




 その場所を触りながら、ずっと、本当は最初にあやかに愛の告白をした時から考えていた妄想が、思考の奥でチラついた。




 教会の教えとか、ことの善悪とか抜きに許されない退廃の極みのようなもの。




 そんな私と君の愛の形を確かめる方法を、もう君が私の元から本当に二度と離れられなくなってしまう方法を。




 私は多分断られてしまうことを、心のどこかで理解した上で。




 そっと君のお腹に手を当てて、君の子どもが産まれる場所を撫でながら聞いてみた。




 「ね、あやか()()()()()()()()()()()()()




 君はとろんとした目で、私をぼんやりと眺めてた。



 「『愛』の奇跡と少し似てる、救世主が産まれたときの奇跡でね、聖母が処女のまま主の子どもを孕むんだけど」


 

 きゅってお腹を押してあげると、それだけで身体が甘く震える。それすら見ていて、愛おしくなる。



 そしてそこを指でなぞっている間に、根拠のない確信が私の中で固まっていく。



 出来る。私の中に偶然残っていた『愛』の奇跡を集約すれば。



 「それをちょっと応用したら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



 ああ、なんて甘い欲。全て溶かして蕩けるような、そんな毒。



 後先とか、生まれる子どものこととか、全部無視して愛欲の証明のためだけになされる誘惑。



 「ね―――、どうしたい?」



 君はもう快楽に溶けていて、まともに思考する力なんて、残ってないことを理解したまま。




 私は笑顔でそう問いかけた。




 君のその場所ゆっくりとなぞりながら。




 こんなわがまま、さすがに許されはしないことを理解しながら。




 そこに私の愛が宿ることを、瞼の裏に夢見ながら。






 とっくにわかり切った君の答えをただじっと待っていた。






 「 」






 そうして君はゆっくりと、私に答えを告げたんだ。


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