深夜、幼女を拾う 2
興味ないと言ったものの、神隠しという言葉が頭から離れない。
昼休み、図書館を訪れる蛍太郎。民俗学に関する書籍のコーナーで本を探す。
「……あった」
『神隠しの歴史』。いかにも怪しいタイトルの本だ。こんなものが大学の図書館に置いてあるとは思ってもみなかった。
さっそく手に取り、中身を覗く。古い感じの本だ。紙が随分と乾燥している。ページをめくるたびに、独特の香りが放出された。
あまり興味をそそられる内容ではなかった。神隠しの起源や、科学的な立証について、淡々と述べられているだけである。いくら信じていないとは言え、オカルト話を真面目に解明されては、興が醒める。
「やっぱり俺には合っていなさそうだな」
本を棚に戻し、別のコーナーに移動する。
授業の予習に使いそうな本や、趣味で読む小説などを探していると、携帯にメールの着信があった。バイト先のカラオケ店からだ。
「……マジか」
欠員が出たため、シフトを延ばせないか、という相談だった。今日の蛍太郎のシフトは午後4時から8時の予定だった。それが11時までになるらしい。
あまり気は進まなかったが、「大丈夫です」と返事を出した。幸い明日の講義は午後からだ。帰宅が遅くなっても影響は少ないだろう。
目当ての本を借りると、次の教室へと向かった。
その日の講義がすべて終わり、バイト先へ向かう。客の数が気持ちいつもよりも少ない。そう言えば今晩は雨になるのだったか。そのため、いつも利用している人も今日は早く帰路についているのかもしれない。
もうすぐ台風もやって来ると、天気予報で述べていた。これからはさらに客足が遠のくかもしれない。
「柏木くん、急に時間延ばしてもらってすまないね」
受付に立っていると、背後でバイトリーダーが小さく頭を下げていた。
「いえ、今日も明日も、特に予定はないので。問題ないです」
本音を言えば面倒だったが、来た以上はきちんと仕事をこなすつもりだ。