34. 魅力
現在学校の屋上でお昼休み中の光景に目を細める私だった。
「本当、イケメン研修生!?」
「そうなんですよ、外人ですよ!」
私を挟んで相川と泉先輩がお昼を一緒に盛り上がっている。
何だこの状況?
話題は今日、入って来たイケメン研修生アラン・スミスについてだった。私は二人の話しを右から左に流して食事を無言で進めた。
「どんな感じの人だったの?」
「それが雑誌に載ってる様な感じのイケメンでした」
二人は永遠とイケメン研修生の話しをする気か?
「私も一度、見てみたいなぁ~」
「休み時間になったら見に来て下さい、待ってます」
キャッキャッウフフな二人組に挟まれながら無言でオニギリを頬張る私、脇を挟まれ動けないので無言で食べ続けるしかないのだ。
「格好良かったよね~大人の男性って感じで」
と相川が私に振ったが無言でオニギリをモリモリ・・・・・・
「無視しないで何とか言ってよ!」
「武藤さんは、どう思う?」
相川は怒り、泉先輩は興味津々に聞いて来た。
これは何か言わないと解放してくれないなと渋々、思ったコトを口にした。
「容姿は確かに良かったけど・・・・・・」
「「けど?」」
これ言っても大丈夫かな? 躊躇いながら口にした。
「ちょっと変な人って感じだった」
二人は目を点にした。
「変?」
相川は首を傾げた。
変と言うか気になった所を私は二人に上げてみた。例えばと口頭から始まり私なりに気づいた箇所を感想として二人に伝えた。
姿勢が綺麗だったコト、普通の人なら無意識に力が入って身体の形が左右対象になってないのに、あの研修生の人は佇まいというかフォームがとても綺麗だった。
あと、怪我でもしているのか歩く姿を見た時片方に重心が片寄っていた等々・・・・・・
それを聞いた相川は目を細めて一言言った。
「武藤さん、変なのは貴女よ」
「何て言うか、ズレてる」
泉先輩も加わり非難された。
「え? 何で」
初対面の人をそこまで見ないよと、ドン引きされた。
「仕方無いじゃん、目がいっんだから!」
どうも私は人の身体的特徴の方に目がいってしまう。多分、亡き義理父と義理兄の影響だと思う。
「まぁ、外人にしては流暢に話すなぁ~とは思ったけど」
「「なんでよ!」」
二人にツッコまれた。
違う、そうじゃないと怒られた。仕舞いには「貴女、本当に女なの?」 と性別を疑われてしまった。
「何? 何が違うって?!」
「相手はイケメン、イケメンなのよ! 他に言うコト無いの?!!」
相川がイケメンを連呼しながら迫って来る。
「格好良いなぁ~とかステキ~とか無いの?」
無いの? と聞かれても別に~位の感想しか私には出てこない。
何故かって? 多分、目が慣れているというか、肥えているんだと思う。義理兄の友人の一ノ瀬さんや最近面識を持った伊勢野とかいった若い男性を目にした生もあって大抵のコトでは驚かなくなった。
義理兄の強面の顔に免疫が有るので、それも相まって反応しなかったんだと思われる。
「イケメン、イケメンってうるさいなぁー男に飢えてんの?」
この質問は、いけなかった様だ。
二人の表情が一瞬で般若の様に変わっていった。
「何よ、しれっとしちゃって!」
「そうよ、イケメンなんて滅多に見られない絶滅危惧種よ!」
怖い、怖い、二人が怖い!
堪らずその場から逃げ出したが二人が追いかけ来た。
「待ちなさいっ!!」
誰が待つか、このまま逃げてやる! ダメならまた繁華街まで逃げてやる。
「ブフッ!!」
二人に追われ逃げるコトに必死になっていた生で前を見ていなかった。前方不注意で何かに顔からぶつかった。
「痛っ!」
こんな所に壁なんかあったかと、触ると壁にしては感触が柔らかかった。
「大丈夫かい?」
「!?」
声の主に驚いた。
何故ならさっきまで話していたアラン・スミス、張本人だったのだ。私はアランさんの胸を壁と勘違いして触っていたのだ。
に"ゃーーーぁぁぁっ!!! やっちまったぁ!!
謝ろうとしても驚いて言葉が出ないでいるとアランさんの後ろから女の子達が出て来た。
「ちょっと、ぶつかったら謝りなさいよ!」
ゾロゾロと付いて来た他の女の子達もそーよ、そーよと声を上げた。
「大丈夫ですか!!」
ドンッ!! と私を突き飛ばし相川が前に出た。
「怪我は無いですか?」
私そっちのけでアランさんと話しをしている。
「ちょっ~相川、おまベヘェッ!!」
バンッ!! と今度は後ろから押され地面に倒れた。
「アランさんですか? 私二年の泉って言います!」
地面に倒れた私を踏みつけイケメン研修生アランさんに一直線に向かう。
おいっ!!
よろめきながら上体を起こし服に付いた汚れや埃を払った。
「アランさん、どうして屋上に?」
目をハートにした相川が質問をした。するとイケメン研修生アラン・スミスはニッコリと笑顔で答えた。
「校舎の中を把握しようと思って歩いて回っていたんですよ」
イケメン研修生アランの笑顔に女子達はバターの様に蕩けた。
「でしたら私に任せて下さい、私は風紀委員で父はこの学校の理事をしていますから!」
学校の隅から隅まで知っていますからと研修生アランに案内を勝手出た。相川はポイント稼ぎか自分の良さをアピールしようとしているようだ。
「ズルイわよ、私達が先に案内してたんだから!」
他の女の子達と喧嘩になった。
「でしたら皆で案内をお願いします」
またニッコリと笑顔を向けられ私以外の女子達は黄色い声を上げて蕩けた。
何アレ? 女を侍らせてるホストか?
容姿を武器にしたいなら教師じゃなくてホストになれよと心の中で思ってしまった。私そっちのけで相川と泉先輩は他の女子達の中に加わりキャーキャー言い出した。
「それじゃあ校内を案内しますね」と相川が先頭に立つと、他の女子達は研修生の周りを固めた。
「君も一緒にどうだい?」
イケメン研修生アランさんが手を伸ばしたが私はその手を取らず丁重にお断りした。
「いえ、私はいいです」
それだけ周りにいるなら私はいらんだろ。
「じゃあ、私は先に」
相川と泉先輩を残し、いた堪れず屋上から出た。
周りの女子達の様にキャーキャー言うのは自分のキャラじゃないと思ったのもあるけれど近くで見て、あの研修生は異様だと感じた。
結論からして近寄っては行けない人物だと思ったからだ。詳しく説明は出来ないが私の本能が継承の鐘をガンガン鳴した。
学校にいる以上、仕方無いが最小限の関わり会いで研修生アラン・スミスとの接触は控えるコトにした。
皆は気づいていないが、研修生アラン・スミスという人物からは普通の人には感じるコトの無いモノが彼の身体から漂っているのだ。
視覚では認識出来ないモノだか私にはそれを全身に感じとるコトが出来る。
それが何かを私は知っている。アラン・スミスから感じたモノーーー、あれは武術経験者特有の"氣"というヤツだ。上手く抑えている様だが反って近寄りがたい雰囲気を醸し出し、危険だと自分の直感を信じた。