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15章 銀河連邦からの依頼  05

 モンスター部屋の向こう側は雰囲気が一気に研究所らしくなった。壁や天井の材質が明かに建築用のものに変わり、照明も埋め込み式のものに変化した。


 感じとしては近未来的な病院と言うのが一番しっくりくる。妙な薬品の臭いも漂っているし。


 反応はすぐにあった。通路の奥から警備ロボットのようなものがいくつも走ってくる。


 ロボットと言っても床を走る円筒の上にセンサーと銃らしきものがついただけの、ロマンのかけらもない姿のものだが。


「ガードシステムですね。パルスラムダガンを装備しています」


「大丈夫だ」


 俺は前面に『アロープロテクト』を展開する。警備ロボの銃口から光が連続で閃くが、50センチほど手前でその光が同心円状に拡散しては消えていく。SF映画のシールドみたいな感じだな。


 こちらは反対に『タネガシマ』による射撃で警備ロボを次々と破壊する。残骸を踏み越えながら奥に進んでいくと、今度はパワードスーツを着た兵が5人現れた。首に黒い布を巻いているのでこれもフィーマクードの兵である。


 すぐに倒してしまってもいいのだが、コイツらには聞きたいことがある。俺は『拘束』魔法を発動、全員を直立状態で動けなくする。いきなり身体が動かなくなるなど恐怖以外の何物でもないだろうが、まあ情けをかけるような相手でもない。


 先頭の奴のヘルメットを取ると、豚みたいな顔をした奴だった。『あっちの世界』のオークにちょっと似てるな。


「こちらに調査隊が来ただろう。彼らはどうなった?」


「答エルト思ウノカ?」


 その余裕は恐らく後続部隊がいるからだろう。奥からさらに何人か黒いパワードスーツが出てくる。


 しかし新良が『レシーバガン』を連射すると一瞬で片がついてしまう。出力を上げたようだが拳銃型の武器とは思えない破壊力と貫通力だ。


「『レシーバガン』!? 独立判事ガナンデココニ!?」


 おっと余計なことに気付いてしまったようだな。俺は『精神魔法』を発動、オークの顔から表情が抜け落ち目が光を失う。


「調査隊はどこだ?」


「……調査隊ハ、ホトンドガ捕マッテ実験動物用ノ檻ニ入レラレテイル。場所ハコノ奥ニ進ンデ突キ当リヲ右……」


 オークが話す道順を暗記しておく。ついでにこの施設についての詳細も聞いてみたが、どうやら下っ端には知らされていないようだった。


 しかし調査隊はやはり制圧されてしまったようだ。わざわざ生きて捕らえたということは無論使いみちがあるからだろうが、ここが研究施設であること、そして「実験動物用の檻」という言葉からは嫌な想像しか生まれない。


 俺は5人の兵士の心臓を『拘束』して脇にどかし、新良と共に先を急いだ。




 現れる警備ロボとパワードスーツ兵士を排除しながら先ほどの情報通りに進んでいくと、通路の突き当りにある扉の前にたどり着いた。いかにもこの先危険みたいな黄色と黒のマークのついた頑丈そうな両開きの自動扉である。


「この奥は多数の反応がありますね。実験動物と言っていましたのでそれらもいるということでしょうか」


「恐らくな。ただ向こうもそろそろ俺たちがヤバい侵入者だと気付いてるだろうし、ここらで何か仕掛けてくるかもな」


「調査隊を人質に取るとかでしょうか?」


「ありそうだ。ま、どっちにしろ出たとこ勝負だけどな」


 言いながら『掘削』魔法を発動。分厚い扉に大穴を開ける。するといきなり警報がけたたましく響きだした。


 侵入者がいても鳴らなかった警報が今鳴るということは、この中に居る『実験動物』とやらは非常に危険なものというわけか。


 中に入ると、そこは幅5メートルほどの通路が向こう50メートル続いている部屋だった。


 左右には金属線入りのアクリルボードみたいなもので仕切られた部屋がいくつも並んでいる。中にいるのはなんと『深淵獣』だ。ローパーのような『丁型』、6足トラ型の『丙型』、カマキリ型の『乙型』など、見たことのある連中が閉じ込められ、俺たちの姿を認めると襲い掛かろうとして透明な板にぶつかって弾き返されている。


「やはりフィーマクードは『深淵獣』を研究しているのですね」


「だな。しかしよく捕獲したもんだ」


 話しながら調査員が閉じ込められている部屋を目指す。『気配感知』によると一番奥にいるはずだ。


 その部屋の前に行き中を覗き込む。


 そこには10人程の人間が膝を抱えて座っていた。人間に似た者もいれば獣人っぽい者、リザードマンっぽい者もいる。一様に憔悴(しょうすい)しており何人かは怪我をしているが、どうやら命に別条のあるものはいないようだ。


 俺がアクリルボードを叩くと、全員がこちらを見て驚いたような顔をした。中には新良のアームドスーツを見て指をさしている者もいる。


『掘削』を発動しアクリルボードっぽい仕切りに穴をあけると、そこで新良が前に出た。


「独立判事、リリオネイト・アルマーダだ。調査隊を救出に来た。ここにいる者が全てか?」


 調査隊の面々は一瞬だけ「おお……」と感嘆の声を上げ、すぐにその中のリーダー格らしきゴリラ顔の獣人男性が立ち上がって言った。


「救出感謝する。だいぶ前に3人がどこかに連れていかれた。実験をするとか言っていたので危険な状況にあると思う」


「分かった。そちらも救出に行こう。ところでネイザリン・ブライトはいるか?」


「彼女もその連れていかれた一人だ」


 その答えを聞いて新良が俺の方を振り返った。友人の危機は去ってないというわけか。どちらにしろさっさと助けに行かないとな。

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