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15章 銀河連邦からの依頼  04

 『ラムダ転送』で地上に降り立った俺は、自分とアームドスーツ姿の新良に欺瞞(ぎまん)魔法をかけた。『機動』魔法で空に浮かび、スーツのジェット噴射で空を飛ぶ新良と共に件の入り口まで向かう。


 途中で捜査局の武装調査船が幹線道路上に着陸しているのが見える。とりあえずそちらは『深淵獣』の襲撃などは起きてないようだ。


 さらに飛行を続けると飛行場のような広大な敷地が見えてきた。どうやら話にあった宇宙港……宇宙船の発着場のようだが、滑走路などはかなり荒れていて、すでに放棄されて久しいことがうかがえる。


往還機(シャトル)整備用の格納庫(ハンガー)内に地下への入り口があるようです」


「ハンガー……あれか」


 管制塔のような建物から少し離れたところに、巨大な倉庫のようなカマボコ型の建築物が見える。近くに大型バスに推進装置をとりつけたような乗り物が着陸している。調査隊のものだろう。


 俺たちは大きく開いたハンガーのハッチから中へと進入した。機材がいくつか残っている中、奥の床に明かに後から開けられたような地下へのスロープがある。大きさは自動車が1台ぎりぎりで下りていけるくらいのものだ。


「ここですね。追跡装置(トレーサー)にも反応があります」


 俺と新良は地下への入り口の前に着地する。


「よし、さっさと入って助けに行くとしよう」


『気配感知』によると近くには何もいない。ただスロープの奥からすごく感じ慣れた気配、というか魔力が漂ってくるんだよな。恐らくこの先、地下の奥にはダンジョンがあるに違いない。ともあれこの星に『深淵獣』がいるということなら、むしろそれは当然である。俺達は警戒をしつつ、地下へと下りて行った。




 地下道はやはり人工的なもので、壁や天井などもしっかりと簡易的な建築材で覆われていた。ところどころライトも設置されていて歩くのに支障はない。ここがフィーマクードの施設であるならば監視カメラや防衛装置の一つもあっていいとは思うのだが、そういったものも見当たらない。ただまあその理由は何となくわかる。


「不思議ですね、ここがフィーマクードの研究所ならば警備があって然るべきですが、まったくその痕跡がありません」


「わざとそうしてるのさ。もし誰かが間違って調べに来たとして、浅い所でドンパチやったら逃げられてしまうだろ?」


「まさか奥までおびき寄せてから逃がさないように始末するために……?」


「多分な」


 そう考えると調査隊はまんまと罠にハマったということになる。後は彼らがどこまで粘れるか、どこまで装備を整えていたかによるな。


 しばらく歩いていると、奥の方から何かが接近してくる気配がある。この感じは『深淵獣』、多分『ヘルシザース』とかいう奴だな。


 ガサガサガサという音とともに姿を現す巨大カマキリ。もちろん部分部分に装甲が取り付けられていて操られているものだということが分かる。これでこの場所がフィーマクードの秘密基地だということが確定したな。


 こちらは欺瞞をしているがこのままだとぶつかってしまう。壁際に寄ってやりすごすのも無理だろう。欺瞞スキルは近距離だとバレてしまうからな。


 仕方なく『ロックボルト』一発で頭部を粉砕してやる。『ヘルシザース』本体は消え、それに取り付けられた装甲や機材が床に落ちた。その機材の中にカメラやセンサーのようなものがあった。


「どうやら偵察用の奴だったみたいだな。これで俺たちが侵入したのはバレただろうな」


「大群で来るということでしょうか」


「どうかな。まあどちらにしろ進むだけだ。ああそうだ、新良にこれを渡しとく」


『空間魔法』から『魔導銃タネガシマ2号』を取り出して渡してやる。『深淵獣』相手では新良の『レシーバガン』の効果は薄いようだからな。


「ありがとうございます。かがりが欲しがっている銃ですね。お借りします」


 さらに奥へと進む。通路脇に扉がいくつか見えてくるようになり、いかにも人が活動する場所のようになってきた。扉の向こうは部屋のようだが、ただの倉庫のようなので無視して先を急ぐ。


「先生、この先に反応があるようです」


「ああ、俺も感じる。集まってきてるな。この先の部屋に入ったら囲む感じか」


『気配感知』によると『ヘルシザース』20匹ほどがこの先にある扉の向こうに、円形に並んでいるのが分かる。多分扉の向こうが広めの空間になっていてそこで包囲するつもりなんだろう。


「『アロープロテクト』をかけておく。もし防衛装置みたいのがあるなら新良はそっちを優先して対処してくれ」


「わかりました。その時は『深淵獣』はお任せします」


 通路の突き当たりにある大きな扉を開く。なんとなくダンジョンボス前みたいだが、ここはまだそれではなさそうだ。


 その部屋は円形の空間になっていて、30メートルほど向こうに出口の扉が見える。周囲の壁にも扉が並んでいて、かなり異様な部屋だ。侵入者を囲んで一網打尽にするための場所なのだろうが、なんとも凝ったことをするものだ。なんとなく『あっちの世界』のダンジョンにあった『モンスター部屋』っぽい。


 俺たちが部屋の中ほどまで進んだ時周囲の扉が一斉に開き、そこから20体の『ヘルシザース』が出てきた。調査隊もこの罠にハマったのだろうか。だとするとかなり絶望的ではあるが……。


 ともあれ問題はコイツらをどう始末するかだが、視線を感じるのでカメラが複数設置されているようだ。とすれば相手にはまだ(くみ)しやすしと思わせておいたほうがいいだろう。


 俺は『魔導銃タネガシマ3号』を取り出して構える。


「新良、防衛装置はなさそうか?」


「スキャンしましたが監視カメラがある程度ですね。カメラは破壊しますか?」


「いや、そのままでいい。とりあえず俺たちが銃で戦うように見せておこう」


「相手に誤った情報を与えるのですね?」


「そういうこと」


 そう言っている間に『ヘルシザース』は俺たちを取り囲み、そして一気に迫ってきた。


 俺と新良は『タネガシマ』を連射し巨大カマキリを次々と粉砕していく。実は俺はちょっとだけ魔法も併用していたがまあ見分けはつかないだろう。


 30秒ほどで殲滅(せんめつ)が完了する。新良の射撃の腕も大したものだ。初めて使う銃なんだがな。


「かがりがこれを欲しがる理由が分かりました。不思議な武器ですね」


「新良の持ってる銃の方が技術的には上だと思うけどな。まあ魔法ベースだから面白くはあるよな」


 そんな話をしつつ、奥の扉へと向かった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 2号3号ってことは1号は置いてきてるんですね、さすが先生ソツが無い
[気になる点] 一部新良の名前が新居になっていました
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