43章 束の間の静けさと魔王の足音 02
九神家でのディナーの翌日。
その夜、俺は『ウロボロス』の『統合指揮所』の艦長席で、猫耳アクセサリ付き銀髪アンドロイド『ウロボちゃん』と話をしていた。
『先日艦長からいただいたオリハルコンを使って、アンドロイドの強化、及び六一式魔導鎧の複製を始めていまっす。それから六一式魔導盾については、すでの11%のアンドロイド兵が装備を終えていまっす』
「さすが動きが速いな。というか、盾ってそんなに簡単に量産できるものなのか?」
『銀河連邦から汎用工作システムを新たに10台手に入れましたので、製造スピードは大きく上がっていまっす』
「ああ、そういえばそうだったな」
以前俺が解決した惑星ドーントレスの件について、メンタードレーダ議長から「報酬としてなにをお渡ししましょうか」と言われ、『ウロボちゃん』に相談して『汎用工作システム』なるものを譲ってもらったのである。
その名の通り膨大なエネルギーと引き換えになんでも作ってしまう『汎用工作システム』だが、『魔王』との決戦が近い今、24時間フル稼働で動いているらしい。
もちろんその為には凄まじい量の資材が必要となるわけだが、それは今世界各地にあって、徐々に増えつつあるダンジョンから集めまくっている。
各ダンジョンはもちろんアンドロイド兵たちが派遣されてダンジョン攻略を24時間体制で行っており、得られたアイテムや魔石は貯まり次第『ウロボロス』や『ヴリトラ』等勇者艦隊の艦艇が転移で回収することになっている。
それに銀河連邦から報酬として別に得た資材なども合わせると、もはやなにがどうなっているのか俺もまったく把握できていない状態である。
ちなみに太陽系にはアステロイドベルトと呼ばれる小惑星帯が存在するが、そこにも艦艇を派遣して希少金属などを採掘しまくっているらしい。
「ちなみに今アンドロイド兵はどのくらいいるんだ?」
『現在約2万体が各艦に配属されていまっす。その中でオリハルコンベースの上位アンドロイドは500体になりまっす』
「2万……」
なんか気が遠くなる数である。
ちなみにウチのアンドロイド兵は、一体で地球の陸軍兵士5000人分の働きができるらしい。まあもちろんそれは単純に戦闘力だけの話だが、それでもそのアンドロイドが2万体というのは危険な数字である。銀河連邦でも戦闘用アンドロイドは製造が厳しく規制されているという話なので、さすがのメンタードレーダ議長もこの話を聞いたら倒れるかもしれない。
『艦長のお話では、魔王という存在はどこかの惑星、もしくは小惑星を拠点としている可能性が高いと思いまっす。そこを攻略するには、やはり多くの兵士が必要になると思うのでっす』
「あ~、まあ確かにそうかな?」
俺としてはまだ『魔王城』のイメージが強いので、少数精鋭で突っ込んでいくつもりでいたが、言われてみれば魔王都市とか作ってる可能性もなくはない。
今の『魔王』の配下といえば、あのバルロとゼンリノ師と、それから『魔人衆』の構成員たちだろうか。
だがもともと『魔王』は『魔族』と言われる人間とは別の種族の長である。その『魔族』は今のところ確認されていないが、『魔王』が力をつければどこからか呼び出してくる可能性もなくはない。『魔族』は基本的に人間とは相容れない存在なので、もしこの世界に現れたら全滅させる必要がある。
「……そう考えると、やっぱり奴の居所をさっさと掴んで乗り込んだ方がいいな。『ウロボロス』、イグナ嬢が言っていた魔力を探知する装置はどうなっているんだ?」
『「魔力ネットワークシステム」ですね~。そちらはイグナさんがずっと研究中ですが、現在太陽系内くらいなら偏在魔力を探知できるようになったみたいでっす』
「まさか太陽系内に怪しい場所なんてないよな?」
『はい~。そういうのはないみたいですね~』
「ならいいや。じゃあその探知範囲が広がればいいわけだな。といってもまだ太陽系内ということは時間がかかりそうだな」
『そのことなんですが、「魔力ネットワークシステム」の端末を銀河系内に多数設置すれば、それで探知範囲は一気に広げることができるようになるはずなんでっす。今その端末とリンクシステムを作っているんですが、それが完成したら、艦長の方から、端末を銀河連邦の各惑星に設置することを連邦にお願いしていただきたいのでっす』
「それはメンタードレーダ議長に頼めばできるかもしれないな。完成したら言ってくれ」
『了解でっす。イグナさんも艦長にお願いを聞いてもらうんだって頑張っていますよ~』
「そういやそんなことも言ったな」
今話題にした『偏在魔力の探知』だが、これが銀河レベルで可能になれば、『魔王』の居場所がわかるかもしれないという話なのだ。
イグナ嬢がその技術を現在研究中なわけだが、完成したら願いを聞くと言ってあるのである。まあそれがバレて、他の娘さんたちにもなにか大きなことをしたら願いを聞くと約束させられたのだが。
『ところで艦長、わたしも色々と艦長のために働いていると思うのでっす』
そこで急に俺の前に来て、前かがみになって上目遣いをしてくる『ウロボちゃん』。
どこで学習しているか、要所要所であざとい動作をしてくるの『ウロボちゃん』だが、最近妙に距離感が近い気がする。
「それは俺もずっと思ってるよ。『ウロボロス』は本当によくやってくれてるし、俺もメチャクチャ助かってる。もう『ウロボロス』なしの生活はありえないくらいだな」
ちょっと言い過ぎかな、とも思ったが、正直今『ウロボロス』を取り上げられたら生活習慣を修正するのが大変なくらいには世話になってしまっている。
俺の言葉を聞いて、『ウロボちゃん』はニッコリと笑顔になった。普段無表情気味なので、近くでそんな顔をされると少しだけドキッとしてしまう。う~ん、やはりあざといな。
『でしたら、わたしのお願いも聞いていただけないでしょうか~。もちろんお時間ができた時で結構ですので~』
「ん~、まあ『ウロボロス』には世話になってるしな。で、なにを頼むつもりなんだ?」
『話に聞く「デート」というものをしてみたいのでっす。いかがでしょうか?』
「デートって……。まさかまた双党あたりになにか言われたのか?」
『いえ、これはわたしがずっと考えていたことでっす。是非艦長と一日デートをしてみたいのでっす』
「まあ、それくらいなら構わんが、俺もほとんど経験ないから大したことはできないぞ?」
『艦長を一日独り占めできるだけで十分ですから大丈夫でっす。是非お願いしまっす』
「オーケー。時間を作れたら言うわ」
と気軽に了解すると、『ウロボちゃん』は両手を胸の前であわせて『ありがとうございまっす。とても嬉しいでっす』とまたニコリと笑顔を作った。う~ん、やっぱりあざとい。
しかしデートとか言うとまた青奥寺たちになにか言われそうだが、まさかアンドロイド相手にどうこうということもないだろう。
それより俺、デートなんて一度も経験ないんだが……と思ったが、そういえばリーララとは出かけた気がするな。あの時の学びが活かせればいいんだが、果たしてアンドロイドにも通用するのだろうか。ちょっと不安である。




