42章 訳あり女子強化策 05
翌日の昼休み、校長室にて明智校長に『ダンジョン関連データ』の入った記録媒体を渡した。
「自分が知っている限りの情報を入れたつもりですが、もし質問があるなら適当な文書データを送ってもらえれば答えますので」
「わかりました、先方にそう伝えておきましょう」
「それから例の『魔力ドライバ機関』のうち、地球の現有技術で再現できるものに関してのデータも入っていますので、取り扱いには十分注意をお願いします」
『魔力ドライバ機関』に関しては、先日『ウロボロス』に来てもらった時に、明智校長はイグナ嬢に熱心に質問をしていたようだった。
だからこそ俺が言ったことの重要性に気付いてしまったようで、明智校長は驚いた顔になった。
「そのような技術を伝えてしまってよろしいのでしょうか?」
「魔導銃くらいは作れないとダンジョンの管理はできませんからね。青奥寺家のような人たちならともかく、現代人に剣で戦えというのは無理だと思いますし」
「確かにそうですが……」
「魔導銃はすでに双党も使っていますから、それとなく情報は『白狐』経由でも伝わっているでしょう。ああ、でもそんな武器の作り方を知っている人間がいるというのはマズいですかね」
今更だが、俺って法律を犯しまくっている人間なんだよな。
政府関係者から見たら色んな意味で無視できないはずなんだが、そもそも宇宙艦隊を持ってる勇者を逮捕しましたとか、正気を疑われるのも確かである。
それにその気になれば違反してる物証なんてすべて手が届かないところに持っていけてしまからなあ。『空間魔法』に入れてもいいし、異世界に持っていってもいいし、太陽系の外までは捜査の手は及ばないだろうし。
なんてことを思ったわけではないだろうが、校長は首を横に振った。
「それに関しては問題ありません。先生についても、対応の政府機関はアンタッチャブルと認めていますので」
「あ、そうなんですか? いつの間にそんな話に?」
「私や九神家や青奥寺家などから強く伝わっていますから。それに先方としても先生は益しかもたらしていませんからね。わざわざ藪をつついて蛇ならぬ龍を出す真似をするほど愚かではありません」
「なるほど」
確かに害がないなら放っておくのが一番楽だよなあ。なんで1500年前の異世界の王様はたちはそれができなかったんだろうか。いや、最後の方は勝手にさせてた気もするけど。
「ともかく、こちらはお預かりして必ず先方に渡します。ありがとうございました」
「よろしくお願いいたします」
という感じで、これでひとまず国としてダンジョンへの対応は徐々にできるようになっていくだろう。
まあ『魔力ドライバ機関』については、下手をするとパラダイムシフトまでは行かないにしても、世界の経済や軍事バランスを傾ける可能性もなくはない。が、それはダンジョンができてきてしまった以上、いつかはたどり着くもののはずだ。
ま、その情報が不正な方法でリークとかされたら、『ウロボロス』と俺がタッグを組んでいくらでも対処するつもりはあるしな。
それからしばらくは平常運転が続いた。
青奥寺たちは『魔法』の鍛錬に非常に力を注いでいて、30秒くらいならある程度自由に空を飛べるまでになっている。といっても実戦投入となるとまだまだかかりそうである。
しかし勇者の勘が、『魔王』の動き出しが早いのではないかと囁いているのも確かだった。それはやはり先日の惑星ドーントレスの一件があったからだ。
あの巨大ダンジョンの奥に開いた『次元の扉』が、『魔王』の銀河征服への切り札的なものの一つであることは間違いない。あそこから大量のモンスターとともに宇宙戦艦が出てきたら、ドーントレスは簡単に壊滅させられてしまうだろう。
もちろんダンジョンの出口に『ウロボロス』などが装備している『ソリッドラムダキャノン』でもブチ込めばいけるかもしれないが、あんなものを大陸に何発も撃ち込むことはできないはずだ。
更に言えば、Sランクモンスターの存在も気になる。
『ヘカトンケイル』『魔王もどき』『サタン』と3体のSランクモンスターをすでに倒しているが、3体出てきたということは、さらに多く出てくる可能性がある。なにしろ『ヘカトンケイル』については、異世界のババレント侯爵が保有していたのである。とすれば、『魔王』が同じものを量産できる可能性は高い。
「とすると、青奥寺たちにはもっと強くなってもらわないとなあ。少なくともAランクくらいとは戦えないといかんな」
などと、『ウロボロス』の艦長席でつい口に出してしまったりもするのである。
「なにブツブツ独り言言ってるの? あ、もしかしておじさん化始まってる?」
ふざけたことを言ってくるのは、ちょうど『統合指揮所』に入ってきた捻くれ褐色肌の魔法少女リーララである。おさげが可愛い清音ちゃんも一緒なので、魔法訓練の休憩がてらここに来たのだろう。
「リーララちゃん、お兄ちゃんに失礼なこと言わないで。お兄ちゃんはまだ若いんだから」
「若いって言っても私たちより10以上離れてるんだからね。清音もあんなおじさんさっさと見切りをつけて、普通の男子に目を向けた方がいいと思うよ」
「リーララちゃんは人のこと言えないでしょ。いつもお兄ちゃんのところに行ってるくせに」
「あれはわたしがおじさん先生の世話をしてるだけなの」
「じゃあこれからはわたしがするから、リーララちゃんはしなくてもいいよ」
などと、いきなり俺そっちのけで仲良くケンカ(?)を始める2人。初等部女子のじゃれあいは見ていて癒されるものである。
「あ、ほら清音、おじさん先生が気持ち悪い目でこっちを見てるでしょ。明らかにヘンシツシャの目だからね、あれ」
「リーララちゃんにかかると男の人みんな変質者になっちゃうでしょ」
「それくらいのつもりでケイカイしておかないとダメなの。清音は考えが甘いって気付いてよね~」
なんかほっとくとずっと2人で喋ってそうだな。まあ女子って基本そういうものか。
と思っていると、再びリーララがジトッとした目を向けてきた。
「だからその目! は今さら直らないからいいか。それよりAランクくらいと戦えないとってどういうこと?」
「わたしはお兄ちゃんが言うなら戦います!」
清音ちゃんが艦長席の前に来て、両手を握りしめて宣言してくる。
それ自体はほっこりするが、清音ちゃんが青奥寺たちの影響を受けすぎるのも考えものである。まあ魔法を得てしまった以上、清音ちゃんもそのうち進路については考えることも出てくるだろうが、それはせめて高等部に上がってからだ。
「清音ちゃんにはお母さんを守るって役目があるから、まずはそっちからかな」
「は~い、わかりました!」
と清音ちゃんとやりとりをしてから、リーララの質問に答える。
「今のAランクっていうのは、青奥寺たちはそれくらいのモンスターと戦えるようになっておいた方がいいって話だ。戦えるのが俺だけってわけにもいかないからな」
「Aランクってあのでっかいモンスターでしょ。あんなのとおじさん先生以外戦えるようになるの?」
「1500年前の異世界でも普通に戦ってたぞ。まあ基本的に軍がだけど、Aランクの冒険者パーティが複数で討伐することもあったしな」
「今みたいに魔導具が発達してないのにあんなのと戦ってたの?」
「その代わり自分の魔力をめちゃくちゃ高めていたからな。ああしかしそうか、魔導具の力を借りればいいのか。お前が使ってる飛行用の魔導具とか、魔力を貯めておける魔導具とかは普通に売ってるのか?」
「ん~、魔力を貯める奴は多分売ってると思う。『機動』の魔導具は軍用だから、一般的には売ってないって言ってたかな~」
「軍用ね」
「欲しいなら女王様に頼めば一発でしょ」
確かにバーゼルトリア王国のラミーエル女王陛下に頼めばすぐに用意はしてくれるだろう。
例の『魔王城ダンジョン』も気になるし、一度様子を見がてら異世界に行ってくるのもいいかもしれない。
なら週末行くか……と思っていると、リーララがチラチラとこちらの様子をうかがい始めた。
「おじさん先生、もし行くならわたしも行くからね」
「ん? ああ、まあ、そうだな。一応皆に声をかけておくか。今度は一緒に行動する必要もないだろうから、『ウロボロス』を連れてって自由行動してもらってもいいかもな」
「まあ皆強いしね。じゃあ私から言っとくから。時間は?」
ということで、異世界に魔導具の買い出しに行くことが決定した。
よく考えたら今の異世界の魔道具をもっときちんと集めて、『ウロボロス』やイグナ嬢に研究してもらってもよかった気がするな。
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