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勇者先生 ~教え子が化物や宇宙人や謎の組織と戦っている件~  作者: 次佐 駆人


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42章 訳あり女子強化策 04

 その日の夜、俺は『ウロボロス』の艦長席に座っていた。


 隣には猫耳アクセサリつき銀髪アンドロイド『ウロボちゃん』が立っている。


『ウロボちゃん』には、昼間の校長に依頼された件はすでに伝えてあって、情報については一瞬でまとめてくれた。内容はダンジョンについての基本的な知識、俺が知っている限りのモンスターの知識、出てくる魔石や素材や魔導具に関する知識などである。


 ただよく考えたら、俺はそれらの知識の一部を九神家の当主仁真氏や、『白狐』の東風原所長、『アウトフォックス』のクラーク氏などには伝えてあるのだ。


 で、政府機関に直接情報を渡す前に、仁真氏と東風原氏には確認を取っておくことにした。


 結果として両氏とも俺の方で情報を伝えて構わないという事になったが、同時に彼らにもその情報は渡るようにした。彼らは政府関係者より現場に近い位置にいる人間なので、俺がそちら贔屓になるのは仕方ないのである。


 と、そこまではいいのだが、今ちょっと『ウロボちゃん』と相談をしていて、悩むことがでてきてしまった。それは、


「『魔力ドライバ機関』の技術を一部伝えるかどうか、それは確かに繊細な案件だな」


 ということである。


『ダンジョンが増えるのであれば魔導銃などの量産配備は必須だと思いまっす。単にダンジョンの情報だけを渡しても、対応できるようにはならないのではないでしょうか~』


「そりゃそうなんだけどなあ。だけどダンジョンで魔導具とかを手に入れられれば、それを分解して調べて作れるようになったりするんじゃないか?」


『いえ、魔石から魔力エネルギーを抽出する回路や、魔力エネルギーを物理現象に変換する回路は、艦長がお持ちの魔法や魔法陣に関する知識がないと解析も製作も不可能でっす』


「あ~……、確かにそうか。それで、『魔力ドライバ機関』を地球の技術レベルに落として再構築することはできるのか? できれば銀河連邦の技術は伝えたくないんだが」


 それをやると新良の光のない目がブラックホールみたいになるからなあ。新良は新良で最近かなり緩めになってきているけど、技術が地球に渡ることだけは許さないところがあるんだよな。その裏には、彼女の星が、偶然得られた銀河連邦の技術によって歪んだ進歩をしたせいもあるらしいが。


『一部可能でっす。ただし素材としてダンジョン由来のミスリルなどが必要になる部分はどうしようもありません~』


「それはダンジョンで手に入れてくれって言えばいいんじゃないか。じゃあそれで資料を作ってくれ」


『了解でっす』


 というわけで、校長からの依頼――実際からは政府からの依頼――はそれで終了である。


 と、そこで『統合指揮所』のドアが開いて、猫獣人にしてすっかり『ウロボロス』に住み着いた研究員のイグナ嬢が入ってきた。


「ハシルさん、ちょっといいですか~」


「いいぞ」


「昨日弟のところに行ってきたんですけど、ダンジョンの様子がちょっと変わってるって言ってたんですよ~。例の廃遊園地跡のダンジョンなんですけど、階層が増えたみたいなんです」


「あ~、あそこはちょっと特別なダンジョンっぽいからそうなるかもなあ。実は世界的にダンジョンが増えてて、多分しばらくは変化が起き続けると思うぞ」


「そうなんですね。ずっと研究室にこもってるので知りませんでした~」


 伸びをすると、骨からポキポキ音がするイグナ嬢。


 そういえば、獣人族って身体動かしてないと死ぬみたいなところのある種族なはずなんだが。


「イグナは運動しなくても平気なのか?」


「え? ああ、一応毎日軽い運動と筋トレはしてますよ~。イチハさんたちと軽く格闘とかもしてますし~」


「あ、そう」


「イチハ」というのは、アンドロイド兵の中でも『ウロボちゃん』直属の上位アンドロイドたちのことである。ちなみに「イチハ」「フタバ」「ミツハ」と3人いる。


「ところでイグナは今なんの研究をしてるんだ?」


「今やっているのは魔力による情報ネットワークの構築ですね~。『魔力ドライバ機関』を使うとデータの転送量が一気に増える可能性があるんですよ」


「すごいね」


 なんかもう完全に勇者とか関係ない話で技術開発が進んでいるようだ。もっとも『魔力ドライバ機関』自体は銀河連邦にも伝えたし、向こうは向こうでもっと凄いものを作り出す気もするが。


「それにわたしがいた世界は情報機器関連が非常に遅れているんです~。できればそれは変えたいですね~」


「そりゃ話が大きくなってきたな。あまりやりすぎると大変なことになるからほどほどにな」


 と言っておくが、そんなインチキ技術を異世界に伝えたら影響が大きすぎてマズい気もする。新良の星のように歪んだ進歩をしてしまうかもしれないしなあ。


「あっ、それと、この『魔力ドライバ機関』を使った情報ネットワーク技術は、魔力の偏在とかも調べることができるんです。それも上手くやると、距離を無視した感じでやれるんですよね~」


「すまん意味がわからん。具体的になにができるんだ?」


「魔力が多く集まっている場所を調べられるんです。しかも宇宙レベルで」


「宇宙レベルで? つまり例えばダンジョンが発生を始めている星とかを調べられるってことか?」


「そうなりますね。あとモンスターが大量発生している場所とかも可能です。それからハシルさんみたいに大量の魔力が出せる人とかも」


「なるほど、魔力を探知するレーダーか。そういや似たような魔導具は持ってるな」


『空間魔法』から水晶球を取り出す。『龍の目』という魔力探知用の魔導具だが、ずいぶん久しぶりに出した気がするな。


 それを見て、イグナ嬢はすごい勢いで近づいてきた。


「あっ、そういうものがあるなら早く出してくださいよ~。もしかしたらこれでさらに研究が進むかもしれません」


 そう言いながら、『龍の目』を手に取って眺め始めるイグナ嬢。


 まあ俺自身の探知能力が上がっているから、研究用に貸し出してもいいか。


 と、そこで俺は今の『魔力ドライバ機関』を使った情報ネットワーク技術の話を思い返してみた。魔力を宇宙レベルで探知できるということは――


「もしかして、『魔王』の居場所もわかるってことか……?」


 どうも諸々を一気に解決できる手段ができるような話が出てきてしまった。


 俺が今の研究を頑張って進めるように言うと、イグナ嬢は、


「ハシルさんがそう言うなら頑張りますね~! それともし完成したら、少しだけご褒美とかねだってもいいですか~?」


 などと言ってきた。


 イグナ嬢には技術開発で役に立ってもらっているのでOKすると、イグナ嬢は「じゃあ楽しみにしてます!」と言って『統合指揮所』から去って行った。


 ところがそのやりとりを、直前に入ってきた双党に聞かれてしまっていた。


「イグナさんだけはダメじゃないですか!?」


「いや、さっきのはかなり大きな話だったからな」


「でもハーレム内で差をつけるのは良くないと思いますっ! 断固抗議します!」 


 俺は速やかに、ふざけた小動物系ツインテール女子にこめかみグリグリを炸裂させたが、確か女子は差をつける扱いには敏感だと教員の研修で聞いた気がする。


「じゃあ結果を残したら全員願いを聞いてやる」


 と適当に誤魔化しておいたが、しかしなんか女子のお願いを聞くとか言うこと自体、教員として気持ち悪い気もするんだよなあ。


 双党は小躍りして喜んでいたが……妙なイメージを持たれないことを祈るばかりである。

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