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勇者先生 ~教え子が化物や宇宙人や謎の組織と戦っている件~  作者: 次佐 駆人


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42章 訳あり女子強化策 01

 惑星ドーントレスから帰ってから、しばらくは日常生活が戻ってきた。


 正直ずっと色々ありすぎて、なにが日常生活なのかわからなくなりつつあるのだが、俺の本来の姿はあくまで明蘭学園の教員である。


 教員としてはもう半年以上になるわけだが、先日研修で同期の2人、活発系美人の白根陽登利さんと、眼鏡イケメンの松波真時君と顔を合わせる機会があり、久々に同期3人で酒を呑もうという話になった。


 そんなわけで、金曜の夜、俺は駅の近くの大衆向けの居酒屋にお邪魔をしていた。


「あ、こっちですよ~」


 店に入るなり、俺に向けて手を降ってくる白根さん。俺はそちらに向かい、靴を脱いで座敷席についた。


「どうも、遅れました」


「全然待ってないですよ。私たちもさっき来たばっかりですから」


 松波君の言葉の通り、テーブルにはまだ水もおしぼりも来ていなかった。


 注文用タブレットの操作は白根さんに任せていくつかの注文を済ませると、まず話題となるのは学校のことになる。


「相羽先生は相変わらず担任をしてるんですよね? しかも部活も持っていて、夏休みの合宿とかも大変だったんじゃありませんでしたか?」


 と聞いてくる白根さんは、確かバレー部の顧問のはずだ。


 そういえば夏休みももう遠い過去のことのようである。


「あ~、そうですね。自分は部活は『総合武術部』を持ってるんですが、なぜかついでに『総合武術同好会』っていうのも持たされてて、その2つ別々に合宿をしたんですよね」


「えっ!? それってメチャクチャに大変なやつじゃないですか?」


「まあ生徒がよくやってくれてるんで、事前のセッティング以外は楽なんですけどね。あと女子部ですから俺一人で引率もできなくて、副顧問の女性の先生にもお願いをしないとならないのが申し訳なくて」


「ああ、副顧問の先生に気を使うのわかります。私もバレーの合宿で学年主任の先生に来てもらうのすごく恐縮しちゃって……」


 白根さんが渋い顔をすると、松波君がフォローをする。


「副顧問でも仕事ですから、白根先生が気に病むことじゃないですよ。もし白根先生が学年主任だったとしても、なにも感じないでしょう?」


「それはそうなんですけど。私が高校生の頃は顧問の先生一人で引率してた気がするんですよね」


「そうでしたかね。僕は覚えていない……というより部活を真面目にやってなかったですからねえ」


「えっ? 松波先生不良だったんですか?」


「いやそんな、部活自体が不真面目な文化部だったんですよ。物理部とかいう、なにをしていたのだか覚えてないような部活で」


 なんと松波君が文化部所属だったとは。てっきりテニスとかやってるものだと思っていたのだが。しかし部活サボってる疑惑くらいで「不良」扱いは白根さんもなかなか判定厳しめである。


 なんて思ってると注文した飲み物がやってきて、乾杯しつつさらに話が続く。


「あ、そういえば相羽先生、先日三留間さんと大紋さんがいなかったのは部活の関係だって聞いたんですけど、先生が引率したんですよね?」


 白根さんは中等部担当なので、『聖女さん』こと三留間さんと、『白狐』所属の絢斗を授業で教えている。三留間さんと知り合ったのも白根さん経由だったりする。


「ええ、『総合武術同好会』のほうでちょっとありまして」


「戻ってきてから三留間さんが少し雰囲気が変わって、少し自分に自信がついたように見えたんですけど、なにか心当たりはありますか?」


「ん~……、ああ、行った先で例の力を使って活躍したことがあったんですよ。それでじゃないでしょうかね」


 惑星ドーントレスから帰ってからということなら、向こうで多くの人を助けたことが自信になったんだろう。まあ彼女はもう名実ともに『聖女』だし、自信を持っていいと俺も思う。


「う~ん、そういうことなんでしょうかね。確かに彼女は先生のお陰で例の力を使っても倒れなくなったみたいですし……」


 と言いつつも、少しだけ納得いっていないという風の白根さん。


 だけど俺もそれ以上の理由は思い浮かばないのでなんとも言えない。まさか他の惑星に行って大勢の人間を助けたんですよ、なんてことまでは話せないしなあ。


 そこで早くも2杯目をタブレットに入力した松波君が、思い出したように口を開いた。


「そういえば神崎も先生の『総合武術同好会』に顔を出しているんじゃありませんでしたっけ?」


「神崎」とは、あのひねくれ魔法少女リーララのことである。その名を口にしても苦い顔をしなくなったあたり、松波君もリーララのトラウマから解放されたようである。


「一応そんな感じになってますね。どっちかというと山城先生のお子さんが入ってて、神崎はその付き添いみたいな感じですけど」


「ああ、メインは山城さんなんですね。なら納得です。でも彼女は武術なんてやっているんですか?」


「あ~、まあそうですね、どっちかっていうと呼吸法とかそういうのを学んでいる感じですかね。実は彼女も三留間さんとはちょっと違う特殊な力を持ってるみたいなんですよ」


 こちらもさすがに「魔法を学んでます」とは言えないんだよな。とはいえ三留間さんの『治癒能力』については周知の事実になっているので、白根さんも松波君も『不思議な能力』には理解があったりするのが面白い。


「なるほど、確かにあの神崎と付き合えるくらいですから、特別ななにかがあってもおかしくはないですね」


 妙な理解の仕方をしている松波君に俺は笑ってしまう。


 が、リーララのことを良く知らない白根さんには通じなかったようだ。


「その神崎さんっていうのは、前に松波先生を困らせていた生徒ですよね。そういえば詳しく聞いたことがなかった気がしますけど、どんな子なんですか?」


「神崎は大人をからかってくるタイプですね。それもなんというか、すごくギリギリを攻めてくる、面倒なタイプです」


 松波君の説明では通じなかったらしく、白根さんは首をひねった。


「ギリギリというのはどんな意味でですか?」


「ええと、それは……」


「あの年ごろの子にありがちな耳年増タイプですよ。男女間の話とか、ギリギリ性的にならない話なんかをしてくるんです。で、男の教員がそれに対応できず困るのを楽しむっていう、性質(たち)のよくないやつですね」


 言いづらそうにする松波君の代わりに俺が説明すると、松波君は「そうそう、まさにそういう感じです」と手を叩き、白根さんは「あ~……」と納得してくれた。


「大人の男を手玉に取ることに喜びを覚えちゃった子なんですね。それは松波先生も大変でしたね」


「僕がもう少し慣れていればなんとかなったんですけどね。だから相羽先生はすごいと思いますよ。簡単にあしらってしまうんですから」


「お尻ペンペンですよお尻ペンペン」


「ははは……」


 と2人は笑ったが、実際お尻ペンペンならぬこめかみグリグリはしてるからなあ。まあ最近はだいぶ大人しくな……ってはいないか。俺が慣れただけだな。


 などと職場の話をいくつかしたところで、話題は時事問題へと移った。


 かなり顔の赤くなった松波君が、焼き鳥をつまみながら、


「そういえば、最近地震が多くないですか? 日本だけじゃなくて、世界でも増えてるって話ですよね」


 と言うと、こちらも頬が赤くなった白根さんが反応した。


「あっ、それちょっとネットでも話題になってましたね。大地震の前兆じゃないかって」

 

「ちょっと怖いですよね。なんか地層とは関係なく、今まで起きなかったところでも起きてるらしいですし」


「へぇ~、そういう話もあるんですね。地下でなにか暴れてるんでしょうか?」


「昔はナマズが地震を起こしてるなんて迷信があったみたいですよ」


 うん、実際モンスターは暴れているんですけどね。などとは決して言えないが、その地震は多分ダンジョン出現と関係があるんだよな。


 だってここのところ、『ウロボロス』がダンジョンを連続で発見しているのである。


 その数は全世界で20を超え、そのうち俺や一部の人間が隠れて管理するのも難しくなってくる気がしている。


 一般人に知られるというほどではないが、各国の政府が秘密裏に対応しないといけないくらいにはなりそうなのだ。


「あれ、相羽先生が難しそうな顔してますね」


 白根さんがそういって俺の頬をつついてくるので、


「ああいや、地震がちょっと苦手なもので……」


 などと適当なことを答えつつ、急に酔いが覚めてしまうことにがっくりとするのであった。

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