41章 惑星ドーントレスの危機 09
総統府ビルの地下施設に入った俺たちは、さっそく100体ほどのモンスターと遭遇、これを討伐した。
この分だと施設にダンジョンが開いているのは間違いなさそうだ。
通路を奥へと進んでいくと、すぐにモンスターが奥から次々とやってくる。すべて双党たちの魔導銃の射撃によって倒されていくが、数が多くきりがない。途中で青奥寺たち前衛陣にバトンタッチさせて、魔導銃の充填槽に魔力を補給するよう指示をする。
二つ目の隔壁は閉まっていなかった。モンスターを駆逐しながら進んでいくと、通路の右側に大きな穴が開いているのが見えた。穴の中は洞窟のようになっているようだ。
「先生、あれはダンジョンの入り口では?」
「だな」
新良の質問に俺はうなずいて、ダンジョンの入り口の前まで歩いていく。
「Cランクのダンジョンだな。ルカラス、悪いがちょっと奥まで行って静かにさせてきてくれないか。青奥寺たちも連れて行ってオーバーフローダンジョンの研修をさせてやってくれ。俺たちは総統を探しに先に進む」
「いいだろう。娘たち、行くぞ」
ということで、ルカラスを先頭に青奥寺、双党、レア、絢斗、三留間さん、雨乃嬢がダンジョンへ入っていく。
新良は銀河連邦独立判事として総統捜索を見届けなければならないので俺たちの方に同行する。
「あの方たちだけで大丈夫なんですの?」
ルカラスたちを見送ってから、お嬢様が少し咎めるような顔を向けてきた。
「まったく問題ないさ。特にあの銀髪のやつは小さな宇宙戦艦くらいなら落とせるからな」
「それは貴方と同じくらいの能力があるということですか?」
「俺ほどじゃないけどな。さあ、奥に行こうか」
俺と新良、お嬢様、お嬢様お付きのメイド、そして護衛4人になった調査隊は、さらに通路を奥へと進んだ。残りのモンスターを倒しながら進んでいくと、3つ目の隔壁の前にたどり着いた。
隔壁はモンスターの爪痕だらけになっていたがまだ健在で、その向こうにはモンスターの気配はなく、人間の気配がいくつもあった。どうやらこの向こうに生き残りの人間は立て籠もっているようだ。
お嬢様が隔壁を開くと、そこには椅子や机などを使ったバリケードが築かれ、その向こうに銃を構えた兵士たちがいた。数は20人くらいだろうか。彼らは俺たちが人間だとわかると露骨に安心した表情になり、次いでお嬢様の姿を見て慌ててバリケードから走って出てきて廊下の左右に整列した。
「ダ、ダイヤルビーお嬢様とは知らず失礼いたしました!」
隊長格の兵士が敬礼しながら声を上げた。
お嬢様はうなずいて、「お務めご苦労様です」と一言答える。この場にそぐわない言葉な気もしたが、お嬢様が平常時の受け答えをしたことで兵士たちは安堵したようだ。
「この奥にお父様……総統閣下はいらっしゃるのかしら?」
「はっ。総統閣下はこの奥の『特別指令室』にいらっしゃいます!」
「それはよかったわ。私たちはそちらに向かいます。貴方たちは引き続きここを守りなさい」
「はっ、かしこまりました!」
「それからもしこの後エルクルド星人風の女性たちが来たら、そのまま私たちのところに通しなさい。外の怪物はすべて倒してありますので、心配はしなくて大丈夫です」
「はっ!」
う~ん、こういうところはさすがお嬢様という感じだな。
俺たちは兵士たちの間を通って、さらに奥へと進んだ。
『特別指令室』は通路の突き当りがそのまま部屋の入口になっていた。両開きの分厚そうな扉ががっちりと閉まっていて、上の方に『特別指令室』の表示がある。
その脇にある操作パネルをお嬢様が操作する。すぐに扉は開かず、中の人間とやりとりがあったようだが、結局扉は無事に開いた。
そこは宇宙戦艦の『統合指揮所』のような、コンソールパネルやモニターが並ぶ広い部屋だった。その名の通り、ここは緊急時の指令室になる場所なのだろう。
部屋には20人ほどのエルフ型宇宙人がいた。男女は半々くらいだろうか、全員が上等な制服を着ているので総統の側近たちのようだ。
その中に一人、どこかで見たことがある気のする若い女性がいた。ドーントレス星人に知り合いはいないはずなので気のせいと片づけたいところだが、勇者の勘が気にしておけとささやいている。一応マークしておきつつ、俺は部屋の奥へと視線を移した。
そこは床が一段高くなっており、大きな机が鎮座していた。そして机の向こうに、厳めしい顔をしたエルフ型宇宙人の男が座っていた。見た目は人間の40代くらい、短く刈り揃えた銀髪に鋭い眼光、戦士と見まがうほどの体格の持ち主で、その威圧感は常人のそれではない。
以前ドーントレスに来た時に、ゼンリノ師と一緒にいた人物である。どうやらあれは影武者ではなかったようだ。
お嬢様が「お父様、無事でよかったですわ!」と声を上げると、その男……総統はギロリとこちらを睨んでから口を開いた。
「ダイアルビーか。なぜ戻ってきた」
「ここが私の星、私の国ですから戻ってきて当然です。お父様にお聞きしたいこともありましたので」
「私からお前に話すことはなにもない。それよりその後ろの男、あの時の化物だな。結局その男に利用されているのか」
「彼はこの星を救いに来てくださったのです。地下にいたモンスターも彼とそのお仲間が駆逐してくださったのですから」
お嬢様がそう言うと、総統は眉間を厳しく寄せ、忌々しそうに俺を睨んできた。
「このアビスビーストどもの氾濫も、貴様がゼンリノを殺したから起きたものだ。結局は貴様は自分で火を放ち、それをしたり顔で消しに来た詐欺師ではないか」
「お父様! それは責める筋が違いますわ。元はと言えばお父さまがメンタードレーダ議長を……」
「黙れ。あれは必要なことだったのだ。我らの星を繁栄させる『オメガ機関』の完成のためにメンター人の力がどうしても必要だったのだからな」
お嬢様の反論を強引に遮って、総統はさらに強い眼光をこちらに向けてくる。
「それで今回はなにが目的だ。銀河連邦評議会の走狗となって私を拘束しにでも来たか」
「あ~、まあ、それは頼まれているからやるけどな。その前に、ゼンリノ師がこの星でなにをしようとしていたか興味があるんだ。ちなみに今回のモンスター……アビスビーストの大量発生は多分ゼンリノ師が仕組んでいたことなんだが、それは知っているんだろうな?」
「なんだと……?」
「アビスビーストが出てくる穴をダンジョンと俺は呼んでるが、その最下層すべてに大量発生を促す装置が仕組まれていた。むしろそうでなければ、きちんと管理しているダンジョン7カ所が同時にああはならないからな。お前だっておかしいと思ったはずだ」
その指摘が図星だったのだろう。総統は顔をわずかに歪めて苦い顔をした。
「……それは、お前の言う通りだ。だがもし私がゼンリノの謀られていたのなら、私はゼンリノの本当の目的を知らないと言うことになるだろう」
「まあそれもそうなんだがな。ちなみに表向きはなんだと言ってたんだ。『オメガ機関』とかいう技術を持ち込んで、アビスビーストから取れる資源を新しい産業にしろとか言ってきたのか?」
「お前は察しが良すぎるようだな。もしやあのゼンリノと深い関係にあるのか?」
逆にこちらから情報を得ようとするあたり、さすがに抜け目ない男には見える。もっとも俺がここにいる時点で総統自身はもう『詰み』なので、俺のことを多少詮索されてもなんの問題もない。
「正確にはゼンリノが仕えている奴と、だけどな。そいつは多分、この星だけでなく、この世界そのものを自分の支配下に置こうとしている。そして、お前はその為に利用された、っていう線が濃厚だな」
「世界を支配? ずいぶん大きく出たな。2流のムービーでもそんな大仰な悪者は設定すまい」
「俺もそう思う。でも事実だからな仕方ない」
俺が芝居がかった動作で肩をすくめてみせると、総統は気分を害したように舌打ちをした。
【『おっさん異世界最強』小説4巻発売について】
別に連載している『おっさん異世界で最強になる』の小説4巻が本日に発売になりました。
本作でも人気の高いメカリナン国編になりますが、Web版から大きく改稿をしています。
全体の流れはもちろん変わりませんが、リューシャ少年とラーガンツ侯爵との新規エピソードが追加されております。
もちろん巻末書き下ろしもあります。
peroshi様のイラストも素晴らしく、リューシャ少年とラーガンツ侯爵の凛々しいお姿を拝むこともできる一冊になっております。
よろしくお願いいたします。




