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勇者先生 ~教え子が化物や宇宙人や謎の組織と戦っている件~  作者: 次佐 駆人


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40章 魔王の狙い  11

 魔王城ダンジョンの帰り、3回ほど『瘴気除去装置』の試運転をしてみた。


 かなり強力な魔導具で、魔王城ダンジョンの周囲の瘴気も、範囲内のものはきれいさっぱり除去してくれた。


 やはりこの魔導具は、「一度苦労してダンジョンを攻略したら、2度目からはダンジョンへのアクセスが楽になる初回限定アイテム」の可能性が高そうだ。


 俺は首都の行政府に戻り、調査結果を女王陛下に報告した。


 あわせて『瘴気除去装置』と、魔王城ダンジョンで手に入れた『五八式魔導銃』を献上した。これらがあれば魔王城の魔王もどきは倒せずとも、『オーバーフロー』を防止するための間引きくらいは行えるだろう。


「このような貴重な魔導具を頂いてよろしいのでしょうか?」


 と言う女王陛下だが、もちろんその分の報酬はいただいている。


「女王陛下もこれからも大変と思いますので、その助けになれば結構ですよ」


「アイバ様のお気持ちには感謝の言葉もございません。もし必要であれば爵位や領地なども用意いたしますので、いつでもおっしゃってください」


「いえいえ、自分はこちらの世界の人間ではありませんから」


 なんとも気前のいいことを言ってくれるが、俺みたいな意味不明な人間がうろうろするのも女王陛下としては困るだろう。勇者なんて必要な時に現れて、必要ない時には行方不明にでもなっていた方がいいのである。


 さて、なぜか異世界でひと働きすることになってしまったが、元は地球と異世界がつながっているという話である。今のところは自由に行き来できる状況ではないが、それが変化する可能性は今後十分にある。


 もし地球と異世界とつながったことが表に出て、国家なりなんなりがそれに対してなんらかのアプローチをかけるとしたら、それはもう俺が手を出す領分ではない。


 ただまあ、せめて『魔王』について片がつくまでは今のままでいておいてもらった方が、少なくとも女王様は気が楽だろう。


 これで地球と交流を持ちますなんて話が持ち上がったら、過労で倒れてしまうだろうからな。




 その後、俺はもと来た道を引き返し、ダンジョン経由で地球側のダンジョンへと戻った。


 地上に出るとそこはアメリカの『クリムゾントワイライト』本拠地跡だ。その場を管理するアンドロイドたちに異世界への通路の監視も頼んでおいて、俺は『ウロボロス』へと帰還した。


『艦長、お帰りさないませ~』


『統合指揮所』で、銀髪猫耳アクセサリ付きアンドロイドの『ウロボちゃん』が迎えてくれる。


『なにか新しい発見はありましたか~?』


「ダンジョンの先が異世界とつながっていたよ。で、異世界のほうに顔を出したら、向こうはダンジョンがかなり増えていた。しかも魔王城があった場所にもダンジョンができていて、昔に戻った感じになりそうだ」


『それは艦長がおっしゃっていた、地上にモンスターがはびこる危険な環境に戻るということですか~?』


「ほうっておけばそうなるかもな。ま、異世界も文明が進んでいるし、昔みたいにはならないだろう」


 そう答えながら艦長席に座って、クルーアンドロイドが持ってきてくれたお茶を飲んでいると、スマホに着信があった。新良からだ。


「どうした?」


『惑星ドーントレスの件で局長から連絡が来ました。調査艦隊の派遣をドーントレス政府に通達したところ、受け入れを拒否したそうです』


「そりゃまあそうだろうな」


『その後も何度か銀河連邦評議会とドーントレス政府の間で協議が行われたのですが、妥協点は見つからず、調査艦隊を強行派遣することになりました』


「なるほど」


『ところが、その直後にドーントレス政府……ドーントレス軍から緊急の救援要請が届いたそうです。惑星上でおびただしい数の怪物(モンスター)が発生し、複数の都市が危機的状況にあるとのことでした。さらには、大陸に巨大な穴が出現したという情報もあるようです』


「あ~……」


 どうやら俺が思ったよりも『魔王』の影響は広がりが早いようだ。魔王城がダンジョンとして復活したことをあわせて考えれば、事態は思ったよりも深刻なのかもしれない。これは真面目に向こうが出てくるのを待っている話ではなくなってきたな。


 思えば異世界でも、魔王城へは勇者パーティがかち込んでいったのである。ならば今回もなんとかして魔王城……魔王星へ乗り込むしかないのだろう。


 そのヒントが惑星ドーントレスにあるとありがたいのだが。

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