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勇者先生 ~教え子が化物や宇宙人や謎の組織と戦っている件~  作者: 次佐 駆人


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40章 魔王の狙い  09

 一人で訪れた異世界。


 女王陛下に謁見をしていた俺は、その場で『禁断の地』――すわなち『魔王城跡地』で異変が起きたことを知った。


 魔王関係となれば勇者の仕事、というわけで、当然の流れとして『禁断の地』は俺が見に行って調べてくることにした。


 後で女王陛下が派遣した航空調査隊も来ることにはなるだろうが、勇者のチェックは必要である。


『機動』魔法で飛んでいくこと十分ほど、眼下に広がる大地から急速に緑が失われ、赤茶けひび割れた不毛の荒野に変化していく。


 さらに飛んでいくと、荒野のど真ん中に巨大なクレーターが見えてくる。俺が『魔王』と相打ちになった後、魔王城が大爆発した跡らしい。


 一度ルカラスと来た時は、その地下に怪しげな施設があって『魔王』復活を確信したわけだが、今回はちょっと様子が違っていた。


「あ~……そういう感じか……」


 巨大クレーターの中央あたりから、黒い瘴気が噴煙みたいに吹き出していた。しかもかなりの量で、吹き出している範囲は直径100メートルくらいはあるだろう。


 問題は、その瘴気の中にうっすらと黒い建物の姿が見えることだ。


 ねじくれたツノが四方八方に突き出たような巨大な建物。


 言うまでもなく、というより口にもしたくないが、それは間違いなく『魔王城』であった。


「まさか『魔王』が別に復活したわけじゃないよな。まあ行ってみればわかるか」


 この世界では1500年ぶりの『魔王城』復活だが、俺の主観的な時間だとあそこで『魔王』とやり合ってまだ一年も経っていない。目の前で復活されても面倒だなくらいの感慨しか湧いてこない。


 いや、前回入った時は結構覚悟を決めて行ったはずなんだが……今の俺だとコンビニに立ち寄るくらいの気軽さしかないんだよな。


 吹き上がる瘴気の中に突っ込んでいき、クソでかい城の正面入口の前に降りる。


 瘴気の濃さは前と同じくらいか。普通の人間なら10分くらいでぶっ倒れるレベルのキツさであるが、青奥寺たちなら余裕だろう。


 入口は縦横5メートルはありそうな大きなものだ。だがなぜか扉はなく、ただ穴が開いているだけだった。前に来た時は扉があったので、見た目は似ているが同じ『魔王城』ではないのかもしれない。


「魔王城ならお前の出番だな」


 と言って聖剣『天之九星』を取り出すと、その刃が微かに震えたのがわかった。どうやらコイツもここがどこなのか理解したようだ。


 大きく口を開いた『魔王城』に、いざ突入する。


 中は一見、俺の知っている『魔王城』と同じだった。黒いゴツゴツした石で作られた壁や天井が広がり、床は黒い大理石のようなものが敷き詰められている。


 一見すると城のロビーにも見える広い空間で、三方には通路が続いていた。


 とりあえず正面の通路に入ってみる。剣を振り回して暴れられるほど広い廊下で、このあたりも以前の『魔王城』と一応は同じである。


 歩いていると、前方からモンスターの気配。現れたのは上半身裸のマッチョ悪魔『グレーターデーモン』だ。


 上半身マッチョとはいえ顔立ちは整っていて、身につけている装飾品は高級感がある。上位悪魔族にありがちな見た目である。『深淵獣』でも似た奴がいたが、やはり本物はぐっと知性が感じられる風貌だ。


 グレーターデーモンは背中の羽根を広げながら滑るように接近してくると、両手に持った氷の剣を振り回してきた。


 こちらが並の冒険者ならなにもわからず五寸刻みにされていただろうが、残念こちらは一度『魔王城』攻略済みの勇者。カウンターで氷の剣ごと真っ二つにして終わりである。


 次に現れたのは、『ロイヤルガード』という、赤い板金鎧がそのまま動いているようなアンデッドモンスターだ。槍と盾を持ち、複数で現れて物理で押してくるモンスターだが、聖属性最強の剣『天之九星』の前にはブリキのオモチャ同然である。


「どうやら出てくる敵は俺が知ってる『魔王城』と同じか。だけどここは明らかにダンジョンだよなあ」


 俺がそう口にしたのは、通路の角を何度か曲がってみて、迷路状になっているとわかったからだ。


 元の『魔王城』は普通の城で、中の構造はきちんと城らしい間取りだった。ところが今いるこの『魔王城』は迷宮になっているただのダンジョンであった。


「ということは、『魔王城』が復活したんじゃなくて、『魔王城』を模したダンジョンが新たに作られたということか?」


 どうやらその可能性は高そうだ。そしてその方がこちらとしてもありがたい。今更新たな別の魔王復活とかやめてくれという感じである。


 サクサクと先に進むと、大きな両開きの扉が現れる。もちろんボス部屋なので、遠慮なく入っていく。


 いたのは『カオスブロブ』という、スライム系最上位モンスターだ。


 見た目はぶよぶよした極彩色の巨大スライムだが、半透明ではないので中の核は見えない。しかも常に四方八方から触手が突き出ていて、見た目だけでお腹いっぱいになりそうな趣味の悪さである。


 まともに戦うのも面倒なので、右手を前に出して魔法陣展開。


「『トライデントサラマンダ』」


 三重螺旋の炎の槍がカオスブロブに突き刺さり、そのまま大爆発を起こしてブヨブヨを木っ端微塵に吹き飛ばした。


 宝箱は『五八式魔導銃』三丁で、光属性魔法『ジャッジメントレイ』が撃てる強力な奴だ。俺はすでに持っているものなので、これは女王陛下に献上して役立ててもらおう。


 ボス部屋の奥には上りの階段があった。城なので上るタイプのダンジョンらしい。


 俺はふうと息を吐き出し、階段を上っていった。

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