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40章 魔王の狙い  02

 そんなわけで色々と魔王関係で慌ただしい中で、夜は大分冷え込む季節になってきていた。


 明蘭学園は平常運転で、冬休みまではテスト以外のイベントはなにもない。


 そんな中、水曜の朝の打ち合わせの時に、明智校長が時々俺に視線を送ってくるのが気になった。


 といっても、重要な話があれば校長室に呼び出されるはずだし……と考えていて思い出した。校長を『ウロボロス』に招待することになっていたのだが、ここのところのドタバタで延期にしていたのだ。


 そこで空き時間に校長室に行って話をしたところ、


「週末を待っているとまた予定が入りそうですね。今日夜空いているのですがいかがでしょう」


 と、女優系美人の校長はすごいことを言ってきた。


 いやこれ、笑顔に謎の圧があるからかなり楽しみに待ってたんだろうなあ。申し訳ない気持ちもあって即オーケーした。


 もちろん放課後の総合武術同好会では、今夜校長を『ウロボロス』に招待するという話は青奥寺たちにも通しておく。ここで気を抜くと即処刑コースだからな。なぜ教員同士の付き合いに彼女たちの了解が必要なのか謎だが、そんな謎を解明するより話を通した方が100倍早い。


 と、それはともかくとして、ふと生徒から見て明智校長ってどんな評価なのかが気になった。美人な上に校長講話もかなり上手いので人気はあると思うのだが。


「なあ、皆から見て校長先生ってどういうイメージなんだ?」


「え? 美人ですごく優秀なんだろうなって思いますね。講話の時のお話も面白いですし」


 というのは青奥寺の答えである。


「ですね~。最初に見た時はあんな若い先生が校長先生なの? ってすごく驚きましたけど」


「銀河連邦では年齢関係なく長をやることはあるので、若さにはなにも感じませんでした。ですが優秀な方だとは感じています。私のこともすんなりと受け入れてくれましたし」


「裏の世界をよく知っているセンセイでぇすよね。ワタシのことも正体をすぐに見抜いてきまぁしたし」


 双党と新良とレアが続くが、やはりいいイメージを持ってはいるようだ。もっともウチの生徒は表立って教員の悪口なんて言わないだろうが。


「ところで先生は、校長先生とはそんなに仲がいいんですか?」


 逆に聞いてきたのは青奥寺だ。目つきは普通だが、普通でもかなり鋭い感じなので俺としては妙な答えは返せない。まあ普通に回答しても妙な答えにはならないんだが。


「秘密を共有しているから他の先生よりは多少仲はいいかもしれないな。俺自身一年目で担任やって皆の相手もして転校生も預かってって無茶ぶりされてるから、校長先生も気を使ってくれるしな」


「そういうのってやっぱりあるんですね。そういえば、相羽先生は校長先生に頼まれて表に出せないことを解決していたりはするんですか」


「そういった感じの話はないな。保健の関森先生の手伝いを頼まれたくらいか。個人的になにか頼まれたのは今回の『ウロボロス』見学が初めてだな」


「そうですか」


 青奥寺はまだなにか言いたそうではあったが一応は納得したようだ。


 すると次は双党がつついてきた。


「ところで先生、校長先生は私と絢斗が『ヴリトラ』で生活してるって知ってるんですよね? それと魔法の練習をしていることも」


「ああ、そこは隠さないで報告してる。双党と絢斗と、それとリーララについては私生活や家族関係について校長先生も事情を知ってるからな」


「そうなんですね~。じゃあ先生は保護者みたいな扱いですか?」


「監督者くらいの扱いじゃないか。すごく微妙な扱いだから、間違っても表の世界で変なことはするなよ」


「しませんよそんなこと。せっかく手に入れた最高の環境なのに」


「卒業したら引っ越せよ」


「ええ~っ!? いやですぅ~」


 駄々をこねながら、腕にしがみついてくるツインテール小動物系女子。


 話を聞いていた絢斗もやってきて、「ボクは高等部を出るまではいいんですよね?」と聞いてくる。


「絢斗はそうだな。そうするとさすがに絢斗が卒業するまでは双党も待ってやるか」


 と言うと、双党はニヤッと笑って「でも先生のハーレムに入れば大丈夫ですよね?」とかルカラス汚染のひどいことを言ってくる。


 俺が呆れてものを言えないでいると、青奥寺と新良が双党の両腕をつかんで道場の端に連れて行って、説教を始めてくれた。うむ、さすが同級生としても聞き捨てならない冗談だったな。愚かなり双党。


 そんなことをしていると、スマホに校長から「いつでも大丈夫です」という連絡が入ったので、俺はそこで同好会を解散、青奥寺たちを道場から追い出した。


 いったん職員室に戻って「お先に失礼します」をして校門を出て、適当なところで姿を消しつつ『ウロボロス』に転送してもらう。


 正直『ウロボロス』の転送は便利すぎて、使い慣れると普通の移動が苦痛になってくる。


「普通はエネルギーも使いますし規制もかかっていますので、銀河連邦内ではそこまで自由に使えません」


 というのが新良の話だが、そうじゃないと人間が堕落しまくる気はする。


『ウロボロス』の『統合指揮所』に転送された俺を、猫耳銀髪アンドロイドの『ウロボちゃん』が迎えてくれた。


「済まんがこれから指定した人をここに転送してくれ。それとその人にこの『ウロボロス』について一通り説明して、主要な場所も案内してあげてほしい」


『了解でっす』


 すぐに転送されてくる、女優系美人の明智校長。服は動きやすそうなパンツルックの私服だが、それでもお洒落なのはさすがとしか言いようがない。とはいえ初めての転送に驚いたらしく、さすがに目を丸くしていたが。


「驚きました、これが転送なのですね」


「ええそうです。ようこそ『ウロボロス』へ。とりあえずここが『統合指揮所』といって、この宇宙戦艦の指令室になります。それからこの間も会ったと思いますが、こちらがこの船のAIアンドロイドの『ウロボちゃん』です」


『ウロボちゃん』が明智校長の前に進み出る。


『「ウロボちゃん」でっす。よろしくお願いしまっす』


「あら、貴方はこの間家に来た子ね。今日はよろしくお願いしますね」


 そう言いながら、明智校長は『ウロボちゃん』をしげしげと眺め始めた。


 しまった、『ウロボちゃん』の服装はいつもの露出度多めの銀色未来アイドルスーツであった。もう完全に見慣れてしまった俺はなにも感じないのだが、一般人が見たらかなり危険なコスチュームである。


 明智校長は視線を俺と『ウロボちゃん』の間で往復させながら、なにかに気付いたようにうなずいた。


「……ええと、校長先生、『ウロボちゃん』のその格好は最初からで、自分の趣味とかではありませんので……」


「そうなのですか?」


 と、明智校長は『ウロボちゃん』に向かって質問した。


『このような格好が地球では好まれると学習した結果のスタイルでっす』


「確か新良さんが用意したデータが元になっているのでしたね」


『そうでっす。今日は私が明智校長先生を案内しまっす』


「それは嬉しいですね。お願いします」


 ふう、どうやら俺の好みとかいう冤罪は回避されたようだ。


 胸を撫でおろしている俺に気づいたふうもなく、『ウロボちゃん』は三次元モニターを起動して、そこに『ウロボロス』の船体画像を表示させた。


『ではまず、このリードベルム級戦闘砲撃艦「ウロボロス」がどのような船であるのかからご説明いたしまっす』


 その後、一時間半ほどかけて、『ウロボちゃん』は明智校長を案内してくれた。


 船を『ラムダ空間』から通常空間に移動させて、地球や月の裏側なども見せたりするらしい。


 俺はその間『統合指揮所』の艦長席に座ってボーッとしたり、艦長専用の私室――高級ホテル並みの部屋に改装されている――に行ってゴロゴロしたりした。


 案内終了の連絡が入ったので、俺が『統合指揮所』へと戻ると、そこには『ウロボちゃん』と、すごく楽しそうに微笑んでいる明智校長がいた。

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