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40章 魔王の狙い  01

「それでスキュアとその部下の人たちを全員連れてきちゃったんですか?」


「まあな」


 呆れ顔の小動物系女子、双党の質問に答えつつ、俺はコーヒーに口をつけた。


 ここは『ヴリトラ』の貨物室のリビングスペース。


 スキュアとゼンリノ師の一件がとりあえず片付いたので、その報告会兼反省会(?)を青奥寺たちとしているところである。


 ちなみに今テーブル回りのソファに座っているのは俺のほか、青奥寺、新良、双党、レア、ルカラス、カーミラ、九神の八人。そして九神の後ろにメイドの宇佐さんが控えている。


「レア経由で『アウトフォックス』に任せなかったのはなにか理由があるんですよね。もしかかして『赤の牙』みたいに奴隷として使うつもりですか?」


「人聞きの悪すぎることを言うな。あいつらは下手すると一般人よりいい暮らししてるからな」


 ふざけたことをいうツインテール頭に軽くゲンコツを落とす。


「それとスキュアたちをこっちで預かったのは仕方なくだ。なんか話聞くとさ、結局どいつもこいつも不幸な生い立ちみたいでな。それでなんか魔王にコロッと騙されたみたいな奴ばっかりなんだよ」


「しかし彼らは基本的に全員犯罪者では?」


 新良はさすがに独立判事としての指摘をしてくる。


 というか、まあもともと連中は『クリムゾントワイライト』というテロ集団なのだ。アメリカの法規に照らし合わせれば一生刑務所から出て来られない連中である。


「そこはもちろん理解してるさ。だから奴らには一生俺の言う通りに働いてもらう」


「具体的にはなにをさせるつもりですか」


「そこは『赤の牙』と同じだな。地球でもダンジョンが増えていくだろうし、そこの管理をやらせる。一応全員魔法は使える奴らだからそれなりにやれるだろう」


「しかし100人からの人間を生活させるのは大変だと思うのですが。住むところも必要ですし」


 これは九神だ。さすがに九神家の次期総裁だけあって少し視点が大きい。


「宇宙戦艦の一つを使うことも考えたんだが、それだとあまりに奴らが楽過ぎるから、ダンジョン近くの未開の土地を適当に開拓させることにした。隠蔽はできるから問題ない」


「そんな滅茶苦茶なことをなさるつもりなんですの?」


「無茶でもないさ。建築資材は『ヴリトラ』が作れるし、アンドロイドにも手伝わせるしな。だからそっちは気にしなくて大丈夫だ。いざとなったら異世界に連れてって冒険者でもやらせりゃいいだけだしな」


「先生がそうおっしゃるならこれ以上言うことはありませんわ」


 九神がそう締めくくるととりあえずは全員納得したようだ。まあ何人かは「もう諦めてます」みたいな顔をしているが。


 その一人であった青奥寺が、微妙に鋭い目を向けてくる。


「ところでそのスキュアさんからは詳しい情報は聞き出せたんですか? わざわざ支部長の力を永久に失わせてまでダンジョンを作り出して、それだけが目的だとは思えないんですが」


「それはランサス待ちだな。スキュアが話す気になったら連絡が来ることになってる。思想的なあれこれがあるから、すぐに心の整理はつかないだろうが」


「そうですか……。まあわかる気はしますけど、でももともと持っていた思想が変わるなんてことあるんでしょうか?」


「それはランサスたちも同じさ。日々の生活に追われてもらって、余計なことを考えられないようにする。後は本人たちの問題だな。改まらないようなら刑務所で暮らしてもらうだけだ」


「身柄を引き取る割にはそこはドライなんですね。それも先生らしいですけど」


 ということで、『クリムゾントワイライト』の連中についての扱いは決まった。


 といっても基本的には『ヴリトラ』に丸投げである。実はすでに指示はしていて、今アンドロイドに管理させている密林ダンジョンの近くにすでに居住地を作らせている。


 もちろん『クリムゾントワイライト』の連中もすでに現地にいて、一緒に汗を流して働いているはずだ。リーダーはダンジョンで少し話をしたバーゼルだ。居住地から密林を2時間くらい歩くと現地の村もあるので、そことの交流もゆくゆくは考えている。まあやるのはすべて奴らだが。


 と思い出していると、それまで興味なさそうにしていた白銀髪の美少女、古代竜のルカラスが口を開いた。


「それでハシルよ。魔王があちこちの星にダンジョンを作って回っていることについてはなにも対策をせんのか?」


「それなあ……。新良、ライドーバン局長はなにか言ってたか?」


「メンタードレーダ議長にはすでに伝えたそうです。それから評議会は、銀河連邦加盟惑星にはすべてダンジョンについての情報を通達し、合わせて『ゼンリノ師』を連邦レベルで指名手配しました」


「動きが早いな。それなら少しは抑えられそうか」


「『ゼンリノ師』が目撃された場合は私のところに優先的に情報が来るようになっています。先生にお伝えすればいいのですよね」


「奴は今のところ、俺以外対応するのは難しいからな。多少の被害を覚悟するなら銀河連邦の技術でなんとかなるだろうけど」


「それから惑星ドーントレスについては、連邦の調査艦隊を派遣することになりました」


「調査艦隊……って、それって事実上制圧しに行くってことか?」


「場合によってはそうなります。普通ならば調査を受け入れて、連邦による裁定を待つことになるのですが」


「総統とやらが受け入れるかどうかは怪しいな。だがドーントレスでなにをしているのかがわかれば、魔王のやりたいこともよりはっきりしそうだな」


「先生も参加されますか?」


「できるのか?」


「できると思います」


「なら話をしておいてくれ。ちょっと気になる」


 銀河連邦からしたら俺なんて部外者中の部外者だが、できるというならやっておいたほうがいいだろう。


 ドーントレスは魔力を使う技術を『オメガ機関』なんて名前をつけて研究してたみたいだし、そこも少し気になるところだ。


 魔力関係の技術ならウチの『ウロボちゃん』とイグナ嬢もやっているところだが、あれは俺が持ってる膨大な魔導具や希少金属、俺という魔力無尽蔵な人間の存在があってこその成果でもある。そこをどう補ったのかも一応は調べた方がいいだろう。


 それにもし、ドーントレスに今回地球に作られたものと同等のダンジョンができていたらことである。あれがオーバーフローを起こしたら、国どころか大陸一つが丸々滅びかねない。それも俺が先日渡した『魔力ドライバ機関』と銀河連邦の技術があればなんとかなるかもしれないが……。


 ともかく、惑星ドーントレスを調べることは必須といえるだろう。

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