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38章 出張、未だ終わらず  19

 勇者艦隊との合流はつつがなく終了した。


 まずは青奥寺、双党、新良、『ウロボちゃん』、イグナ嬢そしてライドーバン局長たち全員を『ウロボロス』に転送させた。


 アンドロイドの『ウロボちゃん』は『統合指揮所』に入ると、すぐにモニターに映った新たな『ウロボちゃん』と情報を共有したようだ。それでモニター上の『ウロボちゃん』は消えてしまったが、もともとAIなのでそんな扱いでいいらしい。


 勇者艦隊に分乗していた『ウロボロス』のクルーアンドロイドたちも全員が『ウロボロス』に戻り、『ウロボちゃん』の指示の元、艦内の再チェックを行っていた。もっとも『ウロボロス』は拿捕されてから奪還まで一日もかかっていないので、なにかされた形跡はほとんどないようだ。


 メンタードレーダ議長たちの姿を見て、ライドーバン局長は露骨にホッとした顔をしていた。さすがのスーパーエリートも今回の件はストレスが強かったようだ。


 青奥寺たち4人も。俺の顔をみて多少ホッとした顔をしてくれたが、


「まあもともと心配はまったくしてませんでしけどねっ」


 という双党の言葉通りで、感動の再開とかそんな感じにはならなかった。


「ところであちらのドーントレス星人の方たちは?」


 むしろ新良が指摘した宇宙エルフのお嬢様とメイドさんの方が気になるようだ。まあ自分たちに近い年頃の女子が増えてたら当然か。


「彼女たちはドーントレス星の総統の令嬢とそのメイドだな」


「は? なぜそのような方たちを連れてきたのですか?」


「それが実はな……」


 惑星ドーントレスでのあれこれを一通り話して聞かせると新良たちは色々な表情をしたが、結局は呆れ顔に落ち着いた。


「それで、彼女たちはどのような扱いになるのでしょう」


「メンタードレーダ議長が言うには、銀河連邦評議会の方で保護をして情報提供者として扱うそうだ。今後惑星ドーントレスとの間に色々とあるだろうし、彼女たちの存在は重要になるんだろうな」


「彼女を通してドーントレス政府との交渉をするつもりなのですね」


「だろうな。ただ総統は彼女ごと議長誘拐の証拠隠滅をしようとしていたから上手くいくとは思えないけどな」


「なるほど……。彼女の境遇を考えると大変そうですね」


「まあなあ。父親に殺されそうになるというのはさすがにどれだけの衝撃があるかは他人が推し量れるものでもないからな。その上で銀河連邦に協力するのかどうするのか、若い身空で大変なことだよ」


 と俺が他人事のように言うと、双党が俺の胸をつついてきた。


「でもでも、あの宇宙エルフちゃんがこんなことになったのも、結局は先生のせいなんじゃないですか?」


「なんでだよ」


「だって先生が人質にしなければ、一緒に殺されそうになることもなかったんじゃないかなって」


「あ~……まあ確かにそういう見方もできるかもしれんけどなあ……」


 確かに彼女を人質にしたのは、単にそれが手段として楽だったのもあるが、ドーントレス側にも同じ被害に遭ってもらおうというちょっとしたいたずら心があったからでもある。


 俺が頭を掻いていると、新良が助け舟を出してくれた。


「先生が人質を取ったことは間違っていませんし、結局は総統という人物が自分の娘より自らの政体を優先しただけの話です。つまり今回の件は、総統という人物が元から持っていた価値観や優先順位といったものが明らかになっただけで、先生がなにかの原因になったわけではないと思います」


「そういう言い方もできるか。ありがとうな」


 俺が礼を言うと、新良はわずかに微笑み、双党は「なるほど~」と腕を組んでうなずいた。


 そんな話をしていると、ライドーバン議長と話をしていたメンタードレーダ議長が、こちらへと歩いてきた。


『この度は本当にお世話になりました。ミスターアイバがいらっしゃらなかったら、銀河連邦には小さくない亀裂が入ることになったでしょう』


「助けられてよかったですが、どちらにしても亀裂が入るのではありませんか?」


『そうですね。今回の件で惑星ドーントレスには大々的な調査が入るでしょう』


「調査で済むとは思えませんが」


『もちろんそうでしょうね。後は向こうの態度次第ですが、最悪の場合は全面的な対立もありえますね。ですがミスターアイバのお話を聞く限り、ドーントレスでなにが行われていたのかは調べないとなりません』


「そうですね……。『魔王』……『導師』があの星で何をしていたのかは知りたいところです。それと他の星にもなにかちょっかいを出しているかどうかも気になります」


『ええ。ですから調査をしないわけには参りません。もしなにかわかったら、アルマーダ独立判事を通して連絡をいたします』


「わかりました。『導師』の件については私も協力できることがあればやりますので」


『心強いですね。その時はお願いいたします』


 メンタードレーダ議長が、お辞儀のような動作をしながらそう言った。


 その後勇者艦隊の船と、ライドーバン局長の宇宙船『アストライア』を俺の『空間魔法』に入れて、メンタードレーダ議長たちを銀河連邦主星まで『ウロボロス』で送っていった。


 といっても、さすがに主星の領宙域に正体不明の巨大戦艦が入っていくととんでもない問題になるので、領宙域外縁ギリギリで止まって、議長たちは迎えに来た船に乗って帰っていった。


 なお、宇宙エルフお嬢様はメイドさんともども俺のことを睨んでいった。双党の話ではないが、彼女が俺を恨むこと自体は仕方がないといえば仕方がない。


 彼女の父親が悪人だったとしても、それを理由に彼女が人質にされるいわれは本来はない。もっともだからこそ俺は最後彼女を解放するつもりだったのだが、父親である総統が思ったより冷血漢だったというのは想定外だった。異世界でも独裁者は何人も見てきたが、全員が自分の身内にだけは甘かったんだよな。


「では私もここで戻ることにしよう。今回はミスターアイバがどれほどの力を持つのかこの身で実感できて非常に有意義だった。今後ともアルマーダ独立判事をよろしく頼む」


 ライドーバン局長も握手を交わし、『アストライア』に乗って帰っていった。


 その後、俺たちも地球への帰途についたのだが、ギリギリ夜中に帰れる感じになるらしい。


 明日は俺と青奥寺たち4人も眠気に襲われながらの学校になりそうだ。

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