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37章 出張先、銀河連邦 01

「え、球技大会の教員チームって男性教員入るのアリなんですか?」


 昼休み、熊上先生と来週予定されている球技大会の話をしていてそんな話題になった。


「教員の数が少ない上に教員チームも複数競技エントリーするからね。男性教員ありどころか相羽先生は2つ出てもらわないとならないよ」


「ええ……。まあ出ろと言われればでますけど、それってどうやって決まるんですか?」


「たぶん明日あたり掲示板にエントリーシートが張り出されるから、それに自分で名前を書く感じかな。ただ各競技の教員チームにはそれぞれキャプテンやる先生が決まってて、その先生がスカウトに来たりもするよ」


「なるほど。でも、教員は各競技の監督もあるんですよね?」


「そこはウチの生徒会と体育委員が運営をガッチリやるから大丈夫。教員は緊急時の対応だけだし、むしろ相羽先生は教員チームにでることが業務と言っても過言ではないよ」


「そんなんでいいんでしょうか」


「いいのいいの。それより相羽先生が本気だしたら全競技優勝できたりしないかい?」


「いえ、実は球技はそこまで得意ではないので大丈夫です。球技ってそれぞれ独自の技術とかセンスとか必要ですし、それに結局チーム競技ですからね」


「無敵の勇者も球技は苦手か」


「それに教員チームが優勝はマズいですよね?」


 と聞くと、熊上先生の向こう座っていた妖艶の化身、山城先生が反応した。


「あら、そんなことはないわよ。毎年バレーボールは決勝までいくし。女性の先生で経験者が何人かいて強いのよね」


「えげつないですね。生徒は現役部員は出られないルールなのに」


「教員だって現役じゃないからルール通りよ」


「あ~確かに」


「それより生徒が結構話をしてたわよ、相羽先生はどの競技に出るのかって」


「球技下手だから気にしなくて大丈夫って言っといてください」


「きっとそういう意味で注目しているわけではないと思うけれど。まあその方が相羽先生らしくていいかもしれないわね」


 山城先生が妙に意味深な笑みを浮かべると、熊上先生もうんうんと何度もうなずいた。


「そういうのは意識しないのが一番だからね。いつも通りやればいいだけだよ」


「はあ……?」


 う~ん、まあ男性教員のカッコいいプレーを見たいとか、そんな興味もあるんだろうか。


 もしそうだとすると、残念ながらその期待には応えられない可能性は高いんだよな。


 なにしろ勇者の能力を持ってしても、あの不規則に動く(個人的感想)ボールを思うままに操るのは難度が非常に高いのである。




 帰りのHRをしに2年1組教室に行くと、後ろの黒板に、クラスの球技大会チーム分けの表が大きく書かれていた。


 こちらも出たい競技の欄に自分で名前を書く方式らしい。


 競技はバレー、サッカー、バスケットボール、卓球、テニスの5種目だ。


 種目数は多くはないがこれは明蘭学園が1クラス35人前後だからで、これでもギリギリな感じである。


 なお青奥寺はバレー、新良はバスケットボール、双党はサッカー、レアはテニスを選んでいた。訳あり女子だがバラバラなのがなんとなく面白い。


「みんなそのまま聞いて~」


 帰りのホームルームが終わって俺が教卓から離れると、体育委員の生徒が前に出てきてクラスメイトを呼び止めた。


「明日から球技大会に向けての練習があります。学年クラスによって使える日時が決まってるので、こちらの表を見てその時間に練習に行ってください」


 などと説明を始めるが、このあたり教員の手を煩わせることなく生徒だけで動いているのに感心してしまう。しかし思えば自分の高校時代も生徒会や委員会はそこそこ仕事はしていた気もするな。


 俺が廊下に出ると、後ろから「先生先生っ」と呼び止められた。


 そういう呼び方をするのは小動物系ツインテール女子の双党しかいない。


「なんだ?」


「先生はなんの競技に出るんですか?」


「それは明日あたりに決めるみたいだ」


「どうやって決めるんですか?」


「生徒と同じで自分の出たい競技に自分でエントリーする形式らしい。ただ俺はたぶん複数出ないといけないっぽいな」


「あ~、一応若手ですからね」


「新卒の新採教員つかまえて一応若手ってなんだよ」


 などと話していると、青奥寺、新良、レアが自然と集まってくる。


 そういえば最近は学校でも彼女ら4人とこうして話すシーンがかなり多くなってしまった気がする。


 担任としてはよくないことなのだが、一応同好会の顧問だからセーフだろう、というのは青奥寺の言だ。


「先生が球技をやっているところは見たことありませんが、普通の人よりは上手ですよね?」


「青奥寺の言いたいことはわかるが、期待には応えられないな」


「もしかして苦手なんですか?」


「学生時代からあまり得意じゃなかったんだよ。今も身体能力だけでカバーできる競技なら無敵だろうけど、道具を使う競技はそういうわけにもいかなくてな」


「なるほど、わかる気がします。私も得意ではないので」


 青奥寺がシンパシー感じますみたいな態度を取るのは珍しい。人間苦手分野が被ると仲間意識が強まるのはよくあることである。


「青奥寺は苦手という話だが、他の3人は得意なのか?」


「私は結構得意ですねっ。ボールは友達的な感じなので」


 確かに双党は器用なところがあるので、球技は得意そうなイメージはある。


「私は一通りの競技はできます。平均よりは得意ですね」


「璃々緒は一年の時バスケットボールに出て大活躍して、バスケ部の先輩にかなり真剣にスカウトされてたよね~」


「あの時は少し困った」


 なるほど新良は背も高いし、あの運動神経で球技のセンスもあるとなれば、球技大会では無敵になってもおかしくはない。2年の今だと後輩から黄色い声援を浴びそうだ。


「ワタシは球技はとても得意でぇすね。テニスは中等部(ジュニアハイ)の途中までやってまぁした」


 言われてみるとレアはテニス選手っぽい雰囲気はあるかもしれない。体格もかなりいいので、経験者となると相当に上手いのではないだろうか。


「まあ全員総合武術同好会会員として恥ずかしくない競技を心掛けてくれ。それと俺が出ている試合はなるべく見ないように」


「あっ、じゃあ全試合見に行きますね! 生徒会の方で撮影もするはずだから、そっちにも話をしておきます」


「それだけはやめろ」


 手を挙げてくだらないことを言う双党に釘を刺しておくと、そこに金髪縦ロールの九神がやってきた。


「皆さん楽しそうですわね」


「球技大会の話をしていてな。九神は……やっぱりテニスか?」


 と俺が言うと、九神は首をかしげた。


「あら、どうしてそう思われるのですか?」


「完全に勘だ。ただお前はコンタクトスポーツはやらなそうだからな」


「まあそうですわね。家からも避けるようには言われておりますし」


「世海はテニス、昔プロに教わっていたんでしょう? 1年の時はチームがすぐ負けてしまっていたけど」


 青奥寺が驚き情報を言ってくるが、九神ならおかしくないと思ってしまうのが恐ろしい。


「ええ、教養みたいなものだと言われて習いましたわ。今年はチームにテニス経験者が複数おりますので、優勝争いにからむと思いますわよ」


「そう。競技が違うから応援しておくから」


「ふふ、ありがとうございます」


 おっと、青奥寺と九神の素直な仲良しシーンはレアだな。双党すら手を口に当てて驚いている。


「テニスならワタシも負けませんから、セカイ、勝負でぇすよ」


「ええ、期待しているわレアさん。ではごめんあそばせ」


 普段より2割増しくらい大きな動きで縦ロールをなびかせて去っていく九神。今日は妙にお嬢様感がアップしている気がするな。


 まあともかく、こういったやり取りを含めて、生徒の違う一面が見られるというのは面白い。正直自分が競技に出るのはかなり憂鬱なのだが、球技大会自体は楽しめそうだ。

 いつも『勇者先生』をお読みいただきありがとうございます。


 さてこちら『勇者先生』ですが、第3巻の発売が2025年5月25日に決定いたしました。

 こちらもイラストレーターの竹花ノート様のイラストが素晴らしい一冊になっております。

 新たに歩くR18ことカーミラと、ボーイッシュ超人中等部生の絢斗の2人がビジュアライズされていて、とても見ごたえのある一冊です。

 個人的には挿絵の絢斗がかなり気に入っております。

 もちろん加筆修正も入っておりますので、こちらも発売中の1、2巻ともどもよろしくお願いいたします。


 なお同じく連載中『おっさん異世界最強』の方も5月10日に2巻が出る予定です。

 こちらもよろしくお願いいたします。


 さらには『月並みおっさん』の方も2巻まで発売中ですので、こちらもよろしくお願いいたします。

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