4章 → 5章
―― とあるアパートの一室での、女子3人の会話
「璃々緒の部屋っていつもキレイだよねっ。女子力の高さを感じる」
「キレイというか何もないだけ。必要なものはフォルトゥナから転送するし」
「この間は驚いた。璃々緒の宇宙船に移動したのもそうだけど、私の中の常識があんなに簡単に崩れるなんて思わなかった」
「美園はマジメだからね~。私なんて楽しくて仕方なかったけど」
「宇宙人の軍隊が攻めて来たのに楽しいっていうのは、かがりの方もそれはそれで変だと思うけど」
「そうかなあ。あ、でも、いつも戦ってるCTエージェントも宇宙人みたいなものだからっていうのはあるかも。璃々緒の話も聞いてたしねっ」
「私もさすがにフィーマクードの強襲揚陸艇が来るのは想定外すぎた。正直なところ、先生がいなかったら大変なことになっていたと思う」
「璃々緒がいてもダメだったの?」
「さすがに軍を相手にするのはアームドスーツでも簡単じゃないから。それにあの『深淵獣』という生物、私の銃があまり通じてなかった」
「あ、やっぱりそうなんだ。でも先生から借りた銃は効きまくってたけどなあ」
「私が借りた刀も凄い切れ味だった。『深淵獣』の乙型の外皮があんなに簡単に斬れるなんてありえない」
「なんか今回の件で先生の謎がさらに深まった感じがするよね。宇宙人と喋ってたのも驚いたけど、その後の攻撃がホントに容赦ないんだもん。あ、そういえば強襲揚陸艇の中はどうなってたの? 先生が制圧したんだよね?」
「ほとんど戦った跡がなかった。全員外傷一切なしで死んでたから」
「ええっ? 化学兵器でも使ったってこと?」
「魔法で心臓を止めたって言ってた。血で汚れると大変だろ、って言われたけど、本当に平然と言うから少し驚いた」
「なんかやっぱりヤバい人なのかな~。普段話してると普通の人だけど」
「戦いのときだけ人が変わるんじゃない? 私たちのことは心配してくれてるし、悪い人じゃないと思う」
「雰囲気としては連邦の軍人に似てる。本当に戦いが身近にあって、あまりにそれが自然になってるという感じ」
「っていうことは、やっぱり元勇者で戦いに明け暮れてたって感じなのかな」
「先生の能力を考えるとそれが一番説明がつく気はするけど……」
「私は別に戦いに容赦がなくても信用できるならそれでいい。今回の件ではなにかお礼はしないといけないし」
「璃々緒もマジメだね~。でもお礼ってなにするの?」
「噂だと昼はいつもコンビニ弁当らしいから、弁当を用意するのもいいかと思ってる。どうせ自分の分は毎日作ってるから」
「えっ!? 璃々緒、それはダメでしょう。女子生徒が男の先生に毎日お弁当とか、問題ありすぎると思う」
「あっ、美園ちょっと焦ってる感じ」
「違うから! 噂とかになったら、っていうかそんなの一発で噂になって先生クビになるまであるでしょ」
「大丈夫、弁当は先生の部屋に転送すればいい。私が渡したとは絶対にバレない」
「ええ……でもそれは……どうなんだろう」
「まあいいんじゃない? 夜もスーパーの半額弁当漁ってるって言ってたし、担任の先生に栄養不足で倒れられても困るしね」
「かがりもいつの間にそんな話聞いてたの? あまりプライベートを聞くのは失礼でしょう」
「そんなこと言ってないで美園も情報収集しようよ。九神のお嬢も本格的に身辺調査してるみたいだし、先越されちゃうかもよ?」
「な・ん・の先を越されるっていうの」
「ちょっ、美園目が怖いってば~」