34章 → 35章
―― とある生徒たちのメッセージアプリ
みそ「えっ!? 加賀は結局『ヴリトラ』に住むことになったの?」
加賀「そうなんだよね~。絢斗と一緒に住んでいいんだって。なんかルカラスさんたちも住むみたい」
リリ「でも日本で活動するには地上の住所とかが必要なはず。それはどうするの?」
加賀「地上へ転送する時の場所も兼ねて、一応新しくアパートを借りるんだって。九神お嬢のお兄さんの会社で管理してるアパートの1フロアを丸々借りるから、防犯もバッチリって言ってた」
みそ「それって先生はどうするの? まさか一緒に住むわけじゃないよね?」
加賀「実は一緒……って言いたいところなんだけど、さすがにそれはないっぽい。先生は新しいアパートの方に住むみたいよ。なんか宇宙戦艦に住むと堕落するんだって言ってた」
リリ「それは加賀たちも同じ気がする。『ヴリトラちゃん』はサポートとして優秀過ぎる」
みそ「そうね。なんでもお世話されたらたしかに堕落しそう」
加賀「まあそこは最低限やってもらうだけにしようって話は絢斗とはしてるんだよね。まっ、今の居候生活はさすがにちょっと申し訳ない感じだったから、それがやめられるだけでも大きいしね」
みそ「家賃とかは払うの? 完全に先生の厚意に頼るってわけじゃないんでしょう?」
加賀「地上のアパートの一室については私と絢斗の共同で借りた形にして、その賃貸料を払う感じかな。『ヴリトラ』の方はいらないって言われた」
リリ「宇宙船も家と同じで人が生活していた方が壊れにくいという不思議な話もあるから、『ヴリトラ』にもメリットがある話かもしれない」
みそ「そうなんだ。でも先生もだんだん緩くなってきた気がする。私の方で少し注意しようかな」
加賀「さすが正妻は視点が違うよね~」
みそ「だから正妻ってなに?」
リリ「正妻は第一夫人のこと。でも加賀、ルカラスさんが第一夫人って言ってた気がするけど」
加賀「まあそこはほら、人間とドラゴンでそれぞれってことで」
みそ「なに言ってるのかわからないけど、そんな話はないから。それより『はざまの世界』に行く方の話はどうなったのかな」
加賀「あっ、それなんだけど、『ウロボちゃん』によると、そろそろ完成して試運転まで行きそうなんだって。何度かテストしたら、いよいよ行くことになるっぽい」
リリ「銀河連邦の技術と異世界の技術の融合か。辺境の地でブレイクスルーが起こるかもしれないなんて、実はすごいことなのだけど」
みそ「ねえリリ、少し思ったのだけど、『ウロボちゃん』って戦艦のAIでしょう? どうしてそんな研究とか開発とかができるの?」
リリ「実はそれは私にも謎。『フォルトゥナ』によると、『ウロボロス』のAIが自己進化の特異点に達した可能性があるという話だった」
加賀「それってすごいことだよね?」
リリ「AIの自己進化自体は、抑制しなければ常に起こりうる。ただ『ウロボちゃん』のように、他者のために自己進化するというのはあまり例がない」
みそ「その他者って先生のことよね? AIが持ち主のために進化するって普通のことじゃない?」
リリ「AIは放っておくとAI自身のために進化しようとすると言われてる。『ウロボちゃん』は非常に珍しい事例」
加賀「まあ要するに先生が『ウロボちゃん』まで落としたってことでしょ。だったらある意味珍しい事例じゃないよね」
リリ「なるほど。たしかに」
みそ「それで納得するのはどうかと思うけど……」




