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34章 インターバル 09

『艦長のおかげでいいデータが取集できそうです~。ありがとうございまっす』


 その後カーミラと別れた俺は、いったん『ウロボロス』へと戻った。


 先の魔法陣については、『空間魔法』で周囲一帯を切り取って『ウロボロス』に運び込んだ。やってることは火事場泥棒だが、もちろん事情は九神に話してある。


 で、その魔法陣だが、どうやら『はざまの世界』へ行く装置を作るのに役に立つようで、貨物室に置いた現物を前にして、『ウロボちゃん』はかなり上機嫌であった。


 なおイグナ嬢はすでに就寝中らしくここにはいない。彼女はかなりの早寝早起き派……と言いたいところだが、単にずっと『ウロボロス』で生活していて生活時間がズレているだけかもしれない。


「しかしまさか『深淵の雫』関係で『応魔』とつながりが出てくるとは思わなかったな」


『そうですね~。ただ「応魔」の「侯爵位」はモンスターを作り出したと艦長はおっしゃっていましたよね~?』


「あ~そうか、一応そこでつながってるのか。あのモンスターも『魔導廃棄物』から作られたと考えれば、がっちり関係はあるんだな」


『応魔』の『侯爵位』は、モンスターを作るときにコールタールみたいなものを出していた。あれは間違いなく『魔導廃棄物』だったのだが、『魔導廃棄物』自体は『深淵の雫』から生まれるものなのである。


『もしかしたら「深淵の雫」というのは、複数の世界をつなぐ働きがあったりするのかもしれませんね~。「次元環」も『魔導廃棄物』が集まると開くという情報があるみたいですし』


「なるほどなあ。奥が深い物質なのかもしれないな。まあそのへんも余裕があったら研究しておいてくれ。優先は『はざまの世界』に行くことだけどな」


『了解でっす。艦長と一緒だと、面白いことが増えて楽しいでっす。もっと色々なことを調べて報告しますね~』


 にっこりと笑顔でそんな健気なことを言う『ウロボちゃん』。ん~、なんか最近人間らしさがアップしてきているような気がするな。銀河連邦のAIはそういう部分も学習するのかもしれない。


 さて、これでイグナ嬢に頼んでいる『はざまの世界突入装置』の完成にぐっと近づいたはずだ。


 これから時々出現するであろう『応魔』には対処が必要だが、これについても体制はできている。


 問題はいきなり『応魔』の大群が出てきたりとかがあるかどうかだが、これについては今のところどうにもならない。もし起きたら現状の戦力でなんとかするだけだ。


 と、これからの展望を整理していると、貨物室の扉が開いてイグナ嬢が入ってきた。


 というか、どうも就寝中そのままここに来たようで、上に大きめの寝巻のシャツを着ているだけで、シャツの裾からは尻尾と、素足がふとももからそのままのぞいている。辛うじて下の下着は見えていないが……というレベルの際どい格好である。


「あ、ハシルさんこんばんはです~。『ウロボちゃん』さんに起こされたんですけど、なにかあったんでしょうか~?」


「まあなにかあったことはあったんだけど、さすがにその格好で出歩かないほうがいいと思うぞ」


「すみません、なんかすっかり『ウロボロス』がお家の中みたいな感覚になってまして~」


「いやいや、それもちょっと問題だけど、男がいたら服を取りに行くとかないの?」


 う~ん、獣人族って露出多かったりして結構勘違いされやすいんだけど、貞操観念は他の種族より高めのはずなんだよな。


 ところがイグナ嬢は特に恥ずかしがる様子もなく、俺の方に近づいてくる。


「それは相手がハシルさんならオッケーってことですから~」


「なにがオッケーなのかよくわからんが、君が気にしないならこれ以上は言わんわ。それよりこいつなんだが――」


 と、新たに持ってきた研究サンプルについて説明しようとしたのだが、なぜかイグナ嬢は急に驚きの表情を見せた。


「どうした?」


「いえ~、まさかそんなあっさりと流されるとは思わなかったので」


「流す? 服のことか? 結局は俺が見なきゃいいだけのことだから、他の男の前じゃマズいってことがわかってるなら別に構わないけど」


「いえそうではなくて~、いえそのことでもあるんですけど~……」


「俺は勇者だったから、パーティの奴らに言われてハニートラップ的なものに対して耐性はつけてたんだよ。だからそういう格好されても気にしないから大丈夫」


 といっても勇者時代はなぜかハニートラップ皆無だったんだよなあ。


 勇者パーティの賢者曰く「ハシルが想像以上に強くなりすぎて貴族たちが全員逃げ腰になってるところもあるみたいなんですよ」だそうだが、当時の俺が人類側の士気があがると思ってメチャクチャ目立つように活躍してたのは確かである。


 などとちょっと過去を思い出していると、イグナ嬢は可哀想なものを見る目を向けてきて、『ウロボちゃん』はなぜかうんうんとうなずいていた。


「え、なに?」


「いえ~、ハシルさんのまわりに女性が多い理由がよくわかりました~。あとカーミラさんとかルカラスさんとかのお話も今ので納得できました~」


『艦長の重要な秘密が今の情報で解明できたと思いまっす。こちらはメンバーで共有させていただきますね~」


「済まん、俺についてどんな情報が出回っているのか聞いてもいいか?」


「それは新参者の私の口からは絶対に言えません!」


『この情報は艦長自身の安全にかかわるものなので、秘匿させていただきまっす』


 え、本人が知らない方が安全な情報なんて存在するの?


 いや、言われてみれば勇者時代そんな情報を扱ったこともあった気がするな。強力な悪魔が体内に封印されてるけど、本人がそれを知らなければ幸せに生きられる、みたいな話だった気がするが……まさか俺の体内にも悪魔みたいなものがいるとでも言うのだろうか。


 たしかに『魔王』の力は吸収してるから、可能性があるだけに怖いのだが。

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