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34章 インターバル 07

 明智家の書物のデータベースについては、その日のうちに『ウロボちゃん』が処理し、地球のPCでも利用できる形式にして出力してくれた。ただし(地球側の技術的には)データ量が恐ろしく多いということで、週明けに記憶メディアを直接明智校長に渡すことにする。


 その後『ヴリトラ』に移動した俺は、すっかりリビングと化した貨物室で土曜の夜を満喫していた。


 ソファに座り、テーブルの向こうの壁掛けテレビを見たり、明智家データベースを端末で見たりしながら、ダラッと過ごしている感じである。


 なお横にはダークエルフ秘書風アンドロイドの『ヴリトラちゃん』が控えていて、ルカラスもソファでくつろぎ中、その隣でクウコが狐状態で丸くなっている。


 貨物室では他に、『ヴリトラちゃん』が整備をしてくれた魔法の射撃用レーンで、金髪縦ロールお嬢様の九神世海と、眼鏡美人メイド宇佐さんが魔法の練習をしている。


 ちなみに九神はもともと『深淵の雫』を扱う術に長けていたためか、魔力発生器官ができるのも早く、元からの魔力も人より多かった。なので魔法もすぐに使えるようになったのだが、ウチの生徒はスペックが高すぎて驚くばかりである。


 一方で留学生のレアは、まだ俺の近くで魔力吸引トレーニングを行っている。彼女ももともと鍛えている人間のため魔力が見えるようになるまでは早かったのだが、魔力発生器官ができるまでにはもう少しかかりそうだ。


「う~、まだ魔力を吸い込むと痛いでぇすね」


「こればっかりはどうしようもないんだ。とにかく頑張ってくれ。ただし無理はするなよ」


「わかっていまぁす。ミソノにもやりすぎると危ないと言われまぁした」


「ならよし」


 なお私服のレアは半袖のシャツにショートパンツという出で立ちである。肌を出しすぎな気もするが、アメリカンな彼女には似合っていると言えなくもない。


 ただメイド服姿の宇佐さんが時々こちらをチラチラと見ているので、女性でも気になるレベルの露出なのはたしかだろう。


 問題はトレーニングをしながら、レアが微妙にこちらににじり寄ってくることだ。彼女は出身地のお国柄なのか単に彼女の性格なのか、スキンシップを好む傾向にあるらしい。しかも『訳あり娘さん』のグループに入ってから、妙に俺に対する距離が近くなり、最近ことあるごとに俺に抱き着いていこようとするようになってしまった。彼女としては任務の一環でそういう行動に出ているのだろうが、人前でやられると誤解を生むこともあるので避けてほしいところである。もちろんやめるようには常々に注意はしているのだが……。


 俺が端末に表示される明智家の資料を眺めながらコーヒーを飲んでいると、魔法の練習をしている九神のスマートフォンから着信音が響いた。


 九神がスマホを操作し、形のいい眉をきゅっと寄せた。面倒事が起きたサインだな。


「なにかあったのか?」


「ええ、どうやら九神グループの国内企業の施設で大きな事故が起きたようですの」


「事故? ニュースではまだやってないな」


「九神関係者のみに先行して伝えられている情報ですわ。医療系の先端機器を製造している工場が火事になったとのことですわね」


「そりゃ災難だな」


 工場の火事は時々聞く話ではある。現場は大変だろうし、重要な工場そうだから当該企業や周辺業界には影響はあるのだろうが、勇者が出張る話でもない。


 もちろん九神もそんなつもりで話はしていないだろう。スマホをしまい、彼女は魔法の訓練に戻った。


 と思ったら、今度は俺のスマホが鳴った。見るとカーミラからの電話だった。


「どうした?」


『先生、悪いけど力を貸してほしいのよぉ。今九神グループの工場が火事になってるんだけど、どうやら悪者が火をつけたみたいでねぇ。しかもその工場って、『深淵の雫』関係の材料を扱っているところで、ここがこれ以上燃えちゃうと、結構大勢の人間に影響がでるんだそうよぉ』


「それは大変だと思うけどなあ。う~ん……」


『あとぉ、貯蔵されてる「深淵の雫」が、ちょっと妙な反応をしてるみたいなのよぉ。勇者としても放っておけない事態になるかもしれないわぁ』


「あ~、マジか……。わかった、一応行くわ。場所はどこだ?」


 送られてきた座標は50キロほど離れた場所だった。


「すまんレア、ちょっと出かけてくるから魔力はルカラスの方を吸っててくれ」


「オウ、なにか事件でぇすか?」


「ああ。さっき九神が言っていた事故現場に行く用事ができた」


 と答えたら、当の九神が反応した。


「相羽先生、どういうことですの?」


「カーミラから連絡で、どうも火事になった工場にある『深淵の雫』が、妙な反応をしそうなんだそうだ。それをちょっと見てくる」


「そのようなことが……。申し訳ありません先生、よろしくお願いいたしますわ」


「それとカーミラの話だと火事は放火っぽいぞ。後で話があるかもな」


「放火、ですか。あまりいい予感がしませんわね。あの工場は色々と探りを入れられている施設だそうですから」


「あ~、それでカーミラが対応してるのか……」


 カーミラは今、九神家で対産業スパイの仕事を請け負っていると言っていた。その関係ならカーミラが火事の現場にいるのも納得がいく。


「まあとりあえず行ってみるわ」


 俺は『ヴリトラちゃん』に頼んで、指定された座標付近の上空に、転送をしてもらった。

お詫び


 大変申し訳ありませんが、こちら「勇者先生」につきまして、現在「2日に1回」の更新となっているところを、今月2月から「3日に1回」にさせていただきたいと思います。

 理由は本業と書籍化作業の多忙化によるものです。別サイトで連載を増やしたのも理由の一つですが……(平身低頭)

 

 楽しみにしていただいているところ誠に申し訳ございません。

 今後とも「勇者先生」をよろしくお願いいたします。


 なお「勇者先生」の2巻が2月25日発売になります。師匠こと雨乃嬢の登場や、惑星ファーマクーンでの活躍がメインになる巻です。


 さらには「月並みおっさん」の2巻も2月17日になります。両方ともによろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
リビングで家族(ハーレム)みんな好きなことやる感じが良いですね。
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