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28章 → 29章

―― ババレント侯爵邸 侯爵執務室


「侯爵閣下、作戦『八本のバラ』、準備整いましてございます」


「うむ。領軍の方はどうか」


「王都奪還の準備も整ってございます。陸軍、空軍、そして女王捕獲のための特務部隊も万全でございます」


「王都奪還ではなく、王都救援だ。女王陛下も捕獲ではないぞ。あくまで身柄の確保をするだけだ」


「そうでございました。侯爵閣下のお心をお量りできず申しわけございません」


「ふふふっ、まあどちらになるかはあの小娘の態度次第ではあるがな。だが事前の王都内での『オーバーフロー』の対処はこちらの想像以上であった。こちらに何人もスパイを送り込んでいたことも考えれば、侮ることはできん」


「『八本のバラ』に関しては、完全に秘匿された作戦になっておりますので問題ないかと。同時に王都内に複数の『オーバーフロー』を起こす準備もさせていますので、女王陛下がいかに優れていても、対応は不可能でしょう」


「遠隔で『オーバーフロー』を起こす技術か……。あやつらの力を借りるのは業腹ではあるが、今回は万全を期さねばならんからな。しかしあの小娘め、このタイミングで『魔導廃棄物』を完全に出さない技術など発表しおって。こちらの動きを読んでいたわけでもあるまいが、なんとも間が悪い」


「あの発表については、完全にこちらも把握していない話でしたからな。『魔導吸収体』研究の中止発表の直後ということを考えると、あちらが本命だったのかもしれません」


「まさか『魔導吸収体』研究を隠れ蓑に別の研究をしていたというのか? あまり意味がある策とも思えんがな。どちらにしろ、その新技術とやらもまとめてこちらが手にしてしまえばよいだけよ」


「……その技術は、『導師』様にとっては非常に都合が悪い。可能ならすべてを消してくれと言われている」


「バルロ、いきなり入ってくるなと言っているはずだぞ」


「……気になる話がこちらにも届いたのでな。悪いが王都に突入する特務隊に、こちらの者を3名程同行させてもらうぞ」


「なんだと。そんな勝手なことが許可できるはずなかろう」


「……お前が許可しようがするまいが、勝手にやらせてもらう。安心しろ、それ以外のことで邪魔をするつもりはない」


「貴様……ふざけたことを。そこまで執心するなら、お前自身が出ればよかろう」


「……俺はまだ万全ではないのでな。それからこれは忠告だ。もし一人で『オーバーフロー』を抑えるような化物が現れたら……そいつは無視しろ」


「なんの話をしている? 一人で『オーバーフロー』を抑えるだと?」


「……この間ここに侵入してきた奴だ。俺より強い。アレがでてきたら、それだけで戦況がひっくり返る可能性がある」


「バカらしい。お前ほどの強者とて、戦場ではひとつの駒にすぎん。それだけで作戦が覆されることなどありえん。それに我々は救援部隊だ。正義は我らにある」


「……お前の考えは間違ってはいない。重要なのは、そいつに無駄に関わるなというだけだ。関われば身の破滅を招く」


「気に食わんが、お前がそう言うならそうなのだろうな。一応心には留めておいてやる」


「……『魔人衆』も『導師』様も、お前の失敗は望んでいない。今世界は、失われた黄金の時代へと還ろうとしている。そうなれば、お前の望む『神の遺物(アーティファクト)』も手に入れることができるようになるだろう」


「ふん。すでにダンジョンからいくつか『神の遺物(アーティファクト)』は手に入れている。お前達の言うことに間違いはなかったようだ。ゆえに今のところは信じてやる」


「……それがいい。我々の利害は一致している。では、こちらも準備があるのでな……」

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