27章 → 28章
―― 惑星イエドプリオル フィーマクード総本部最上階 総統の間
「あれほどの化物だったとは、読み違いをしたわ! しかも『ヴリトラ』を含めて艦隊を多く失ったのも問題だが、ギルメルトとジェンゲットを失ったのも小さくない。よもや未開惑星に手を出して私が追い詰められるとは……」
『……ズワウルよ、どうであった?』
「……!? 導師!」
『随分と憔悴しておるな。なんぞあろうたか』
「……は。例のアンタッチャブルエンティティのいる星に艦隊で向かったのですが、見事に返り討ちにあいました。ギルメルトもジェンゲットも失う結果に……」
『相手は戦艦一隻と聞いていたが?』
「それが、アンタッチャブルエンティティ自体が妙な能力を持っているらしく、こちらの攻撃が一切通じず……」
『その映像は残っているのか』
「は、用意しましょう」
『……これは……この顔、この技、この魔法……忘れはせぬ、忘れはせぬが、なぜ奴がこの時代に生きている……』
「導師……もしやこの男が以前お話になっていた……」
『紛うことなき勇者よ。しかも我が知る勇者より数倍も力を増しておる。こやつがいては、我が悲願はならぬ。いや、こやつの排除こそ我が悲願の一つか。しかし今の我ではこやつを排除できぬ。力を……取り戻さねば』
「導師ですら及ばぬと……信じられませんが……」
『我の力は一度こやつに奪われた。それを取り戻さねばならぬ。そのためには星が必要だ。モンスター……アビスビーストを解き放てる星がな』
「ならば用意しましょう。その星を」
『うむ。しかし勇者がこの世界にいるとなるとことは慎重に運ばねばならぬ。アビスビーストを放つ星を嗅ぎつけられるのは避けねばならぬ』
「ならば船団を組み、別の未開惑星に向かいましょう。すでに2、3、原始的な生物のいる惑星を見つけております」
『ズワウルよ、ようやった。ならば我はそちらへ向かおう。そなたはいかがする』
「今回の損害を知られれば、銀河連邦がかさにかかってここイエドプリオルへと攻めてくるやもしれません。ゆえにここは捨て、もう一つの拠点へと移動をいたします」
『勇者一人のために色々と揺すられるものよ。いや、奴はもとからそのような存在か』
「奴を倒す策も練らねばなりませんな。しかしどちらにせよ今は雌伏の時かと」
『その通りだ。1500年以上も待ったのだ、今さら待つことに苦はない。力を取り戻し、我が世を統べるその時まで、力を貸してもらうぞズワウル』
「は、かしこまりました導師」