25章 → 26章
―― とあるマンションの一室
「はぁいママ、今日も一日お仕事終わりましたでぇす」
「お疲れ様レア。今日は散々だったみたいね。まさか日本に『シャドウ』が現れるなんて」
「そうでぇすね。いつかは手を伸ばすと思っていましたが、このタイミングというのはすこし驚きましたでぇすね」
「本当にね。せっかくソウトウとダイモンの力を測れるチャンスだったのに」
「あ~、それに関してはむしろラッキーだったでぇすね。実戦での対応力を見られましたから」
「あらそう。なら同行させてもらえたのもラッキーだったわね。それでどんな感じ?」
「想像以上に戦闘能力も対応能力も高いでぇすね。『シャドウ』については十分な情報がなかったはずなんでぇすが、現場で少しのアドバイスをしただけで余裕で対応をしていまぁした」
「あれを初めて見て冷静に対処できたってこと? やはり相当経験を積んでいる……それとも日本でも『シャドウ』はすでに出現していた?」
「いえ、『シャドウ』自体は初めて見たと言っていまぁしたし、たしかにそんな反応でぇした。それでも普通の『シャドウ』は核のことがわかればあっさり倒していまぁしたね」
「やっぱり日本のエース2人は能力が高そうね」
「そうでぇすね。特にダイモンの格闘能力は人間のレベルではありませぇんね。『シャドウマスター』とも1対1で対等以上に戦っていまぁしたし。ソウトウも一部不思議な力を持っている気がしまぁした。ただもっと気になるのは、彼女たちが化物と戦い慣れているということでぇすね」
「日本でも違う種類の化物が使われていたってことかしら? クゼーロは人間型のエージェントにこだわっていたという話だったけれど」
「そこは引っかかるところでぇすね。実はメイラン学園には、他にも強い力をもつ女の子がいるのでぇすが、獣と剣で戦う子がいるのでぇす。その時は聞き流したんでぇすが、今回の件でワタシの勘に引っかかってきまぁした」
「ハリソン家の勘ね。それは調べる必要がありそう」
「アオウジさんと言うのでぇすが、今後調べてみまぁす。ただ彼女も鋭いので、難しいかもしれまぁせんが」
「そこは頑張ってもらうしかないわね。……あら? その服破れてるけど……しかも血までついてるじゃない」
「これは『シャドウリーダー』にやられたんでぇす。防刃スーツなしだとやっぱり危険でぇすね」
「大丈夫なの?」
「それが……例のアイバセンセイが治してくれたんでぇすが……」
「治す? どういうこと? 傷跡も残っていないみたいだけど」
「そうなんでぇす。不思議なヒーリングパワーであっという間に治してしまったんでぇす。どういうことか判断に困っていまぁす」
「ニンジャって話だったけど、ニンジュツってものなのかしら。そんな不思議な力があるとはにわかに信じられないけど」
「そのアイバセンセイなんでぇすが、『シャドウリーダー』すら一撃で倒す腕なんでぇす。しかもこれ……」
「なにこれ? ガラス玉……? ……!? もしかしてこれは『シャドウ』の?」
「そうでぇす。『シャドウ』の核でぇすね。聞いたら『シャドウ』に手を突っ込んで素手で奪ったみたいでぇす」
「はぁ!? そんなことできるの? たしかに『シャドウ』の本体自体は無害みたいだけど……」
「アイバセンセイはニンジャマスターだからできると言っていまぁした。多分いま一番調べなければならないのはアイバセンセイだと思いまぁす。実は『シャドウリーダー』が、アイバセンセイに対して『ミツケタ』としゃべったんでぇす」
「……それも驚きの情報ね。『シャドウリーダー』がしゃべるのも、アイバセンセイと関係があるのも」
「クリムゾントワイライトとしても、クゼーロを倒した相手を探しているのだと思いまぁす。その相手として、アイバセンセイを探していたんだと思いまぁすね」
「たしかにそう考えれば整合性はとれるわね。しかしそうすると、クゼーロを倒した一番の立役者はアイバセンセイ、そういうことになるのかしら」
「そうなると思いまぁす。『白狐』が情報を伏せていたからにはなにか意味があると思うので、そこも調べたほうがいいと思いまぁす」
「隠す意味、ね。切り札を隠すのはおかしなことではないと思うけど」
「アイバセンセイは『白狐』の協力者ではあっても、所属しているわけではないのでぇす。だから『白狐』がアイバセンセイの存在を隠したなら、それは本人の意思である可能性が高いと思いまぁす」
「つまりアイバセンセイ自体が『白狐』以外からのコンタクトを嫌がっていると?」
「そういうことでぇす。だから無理になにかすると、今後協力を得ようとしたときに問題になると思いまぁす」
「……そうね。レアの判断は正しいと思うわ」
「なので今後もじっくりとつきあっていきたいと思っていまぁす。アイバセンセイ自身は話のわかる人間だと思いまぁすので、こちらの態度が重要でぇす。間違っても強硬手段には出ないように注意をしておいてくださぁい」