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26章 留学生  13

 翌日の放課後、会議室を借りて青奥寺新良双党の3人とレアの間で話し合いをさせてしまった。形としては非常に学校的な対応になってしまったが、彼女らは妙にいきいきして話をしていた。


 訳あり女子同士だから気は合うのだろう。そういう意味では真実を伝えられない青奥寺や新良は多少ストレスを感じるかもしれないが、やりとりを見ている限りではレアもなにかあるとは感じつつもそれ以上は踏み込まないという雰囲気だった。


「ところでぇ、3人はアイバセンセイのことは知っているのでぇすよねぇ?」


 一通り互いの話が終わると、レアが俺のほうに矛先を向けてきた。


 青奥寺たち3人はうなずきつつ、俺の方をちらと見る。


「アイバセンセイって、どのくらい強いか知っていますかぁ? この間は技をかけることができましたけど、あれは本気ではなかったんですよねえ?」


 それに答えたのは新良だった。


「相羽先生が本気をだすと誰も勝てない。格闘技の世界チャンピオンでもまったく相手にならないと思う」


「そこまででぇす?」


「まあ……忍者だから」


 結局新良たちともそういう口裏合わせをしてしまった。いざとなったら俺がクゼーロ退治まで手伝ったという話まではするつもりである。


「そうなんですねぇ。なんていうか、この学校はフシギな感じがしまぁすね。アオウジサンたちもそうですが、アイバセンセイもいてダイモンもいて、校長センセイも普通の人じゃないと聞いていまぁす」


 『ダイモン』は中等部にいる大紋絢斗(あやと)のことだ。彼女のことは『白狐』つながりですでに知っているのだろう。校長に関しては、転校の際に校長に正体を見破られたことから一般人ではないと理解しているわけか。


「それを言ったらアメリカにだっていろいろあるでしょ。レアの家だって、ね」


 双党がそう言うと、レアは「まぁそうでぇすけど」と言って肩をすくめた。


 なるほど、レアもただ『アウトフォックス』の機関員というだけではないのか。そりゃ日本に青奥寺家や九神家、宇佐家みたいなのがあるんだから、アメリカにもあって当然ではあるな。


「でもそうすると、アイバセンセイにはもう少しお話を聞きたい気がしまぁすね。それとソウトウサンとダイモンサンの力も正確に知りたいでぇす」


「じゃあ今夜『白狐』に来る? そこでなら見せられると思うよっ」


「オ~ウ、ぜひお願いしまぁす」


「じゃあ相場先生もお願いしますねっ。先生がいないと私はともかく絢斗は全力を出せないので」


 双党が俺の胸をつんつんとつっついてくる。巻き込まれるのはちょっと癪だが、レアは俺の力を知りたいみたいだからちょうどいいか。  


「わかったわかった。じゃあ今日の夜な」


 なんか変な話にはなったが、ひとまず青奥寺と新良については、レアも手は引っ込めそうな感じである。まあもとからそっちはあまり関係はないし、彼女的にも『アウトフォックス』的にも優先順位は低いのだろう。


 隠すべきは俺の正体ではあるが……それについては俺がどこまでめんどうくさいを我慢できるかなんだよな。




 というわけで夜の『白狐』の本拠地である。


 看板の出ていない中小企業の社屋みたいな建物で、中に入ってまず向かうのは所長室。そこで『白狐』の長である東風原(こちはら)所長に挨拶をする。


 いつものデキるオーラ全開のメガネイケメンだが、今日は顔を合わせて早々苦笑いを見せた。


「相場先生、今回は済まないね。『アウトフォックス』が探りにくるのは分かってたんだが、まさかこういう形でくるとは思わなくてね。一応学校には連絡は入れておいたのだが」


「ええ、校長から事前に話は聞いていたので心づもりはできていました。しかし彼女が何を探りにきたのかはちょっと意外でしたね。まさか九神家と宇佐家に目をつけているとは思いませんでした」


「そうだな。一応九神の援護を得たとは伝えていたので仕方ないといえば仕方ないんだが、やはり『白狐』が中心になってクゼーロを倒したという話にはとってもらえなかったようだ」


「向こうも『クリムゾントワイライト』の幹部の力は知っているでしょうからね」


「うむ。まあ一度手を出して相当痛い目を見たようだからな。彼らは幹部を倒すのに一個旅団が必要だと評価しているようだ」


「実際は全軍出てギリギリ倒せるくらいだと思うんですけどね。まあそれよりもレアですが、双党と絢斗の力は全部見せても問題はありませんか?」


「ああ、それは構わない。ただその場合、相場先生も同等以上の実力者ということが知られてしまうが」


「それくらいは仕方ないかなと思ってます。実は俺もクゼーロ退治を手伝ってました……くらいにとらえてくれればそれで十分かと」


「なるほど。日本にいる隠れた忍者が手を貸した、という筋書きかな。勇者とは言わなくていいのかね?」


「多分信じてもらえないですし、信じてもらえたらもらえたで異世界関係を突っ込まれそうですからね」


「ふ、たしかにな。まあその辺りは適当に頼むよ」


「ええ、適当にやっておきます。それじゃ訓練場をお借りします」


 俺が部屋を出て行こうとすると、東風原所長が思い出したように呼び止めた。


「ああ済まない、さっき連絡があったのを忘れていた。どうやら『クリムゾントワイライト』のアメリカ支部が日本に手を伸ばし始めてきたようだ。すでに何人かは()()()()だが、すでに他にも国内に入ってきているかもしれん。奴らもまずはクゼーロの件を調べるはずだ。君のことを嗅ぎつけるかどうかは分からないが、双党やレアの近くには現れるだろう。注意してほしい」




 訓練場に行くと、ツインテール少女の双党と、美少年風美少女の絢斗、そして金髪ポニーテールのレアがすでに仲良くトレーニングマットの上で汗を流していた。


 俺の姿を見て3人が駆け寄ってくる。


「お久しぶりです先生、今日はよろしくお願いします」


 絢斗は最近はずっと『定在型深淵窟』の対応に行っていて『総合武術同好会』には参加していない。顔を合わせるのはたしかに久しぶりな気がする。


「ああ久しぶり。絢斗は少し力が増した感じがするな」


「あはっ、わかりますか? ()()()トレーニングのおかげでかなりいい感じに仕上がってますよ。以前よりは先生相手でも戦えるはずです」


「それは楽しみだ。ええと、とりあえず絢斗と双党と立ち会えばいい感じかな?」


「レアはそれでいいよね?」


 双党が聞くと、レアはうなずいた。


「はぁい、それでダイジョウブでぇす。できればその後に、ワタシも本気のセンセイと立ち合いたいでぇすね」


「オッケー。あまり遅くまではできないから、すぐに始めようか」


 俺が軽く準備運動を始めたところで、いきなりトレーニングルームに警報が流れた。間違いなく緊急事態的なアレである。


 ほぼ同時に、東風原所長がトレーニングルームに現れる。


「『クリムゾントワイライト』が現れたという連絡が入った。双党と絢斗はすぐに出られる用意をしてくれ。A装備だ」


「うぇ、A装備ってことは上位エージェントですか?」


 双党が聞き返すと、東風原所長は首を横に振った。


「いや、どうも化物が複数現れたらしい。今対処できるのはお前達しかいない。急いでくれ」


 おっと。どうもさっきの所長の話がすぐに現実のものとなってしまいそうだな。


 しかし化物というのはちょっと気になるな。恐らくはモンスター……『深淵獣』のことなんだろうが、さて、どんな奴がどうやって連れてきたのやら。せっかくだから見学させてもらうか。

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