2章 → 3章
―― とある喫茶店での女子3人の会話
「という感じで、先生のほうから私に力を貸すと言ってくれたの。勇者っていうのはいまだによく分からないけど、やっぱり悪い人じゃないみたい」
「ちょっと待って、それってズルい。先生の力が借りられるなら私も借りたい時がいっぱいあるんだけどっ。背後の機関のことも探れって言われてるし、美園の方からお願いして?」
「そんなことお願いできるわけないでしょ。今回のことで先生には色々借りができちゃったし……。かがりが自分でお願いしてみたら?」
「え~、先生ってちょっといじわるなところがあるんだよね。ビルにいたことすぐに認めなかったし」
「それはかがりがいきなり家に行ったからでしょ。先生は先生なんだから、ちゃんと礼儀をわきまえないと」
「そうかな~。だって璃々緒にもちょっといじわるだったんだよね?」
「いえ、私の場合はちょっとした勘違いがあっただけなので。それに最後は助けてくれたから感謝はしてる。ただ助けてくれた目的は不明だけど」
「目的かあ。私のときも助けようとしてくれたみたいだけど、生徒だから助けただけみたいなこと言ってたし……」
「あれだけの力をもった人間が何の目的もなく動くことはないと思う。必ず私たちに近づいた意味があるはず」
「私たちと同じように、裏があるのは確かだと思う。そのために私はもう少し先生と接触してみるから。最近『深淵窟』の発生が増えてるから機会は多くなるはずだし」
「先週の『深淵窟』はどうだったの? 先生の強さは?」
「正直今の私じゃよく分からないくらい強い。『乙型』の上位種も一瞬で倒してたみたいだから……。そういえば妙な技を使っていた気がする。手から何かを飛ばして『乙型』の腕を吹き飛ばしてたの」
「えっ、なにそれ。何かを投げたんじゃないの?」
「ううん、投げる動作はしてなかった。手をのばしたら、その先から何かが飛んだ感じ」
「ESP? その可能性もある……? 飛行できるのもその能力……?」
「超能力者ってこと? 璃々緒のところだと超能力って科学的に認められてたりするんだ?」
「いえ、あくまでまだ仮説。ただ『違法者』の中には奇妙な力を使う者もいるのは確か」
「まあCTエージェントを動けなくしたり、壁に穴をあけたりもしてたからね。特別な力をもっているのは確かっぽいかも」
「やはり継続的な監視が必要、か」
「先生についてはそうするしかないでしょう。それよりかがり、今回『乙型』の『雫』が複数手に入ったからまた……」
「うん、九神のお嬢のところに流れるってことだよね。CTがまた動き出すかもしれないから警戒はしとくね」
「そうして。でもこのタイミングで世海が帰って来たのは偶然なのか……やっぱりちょっと怪しいな。お母さんには止められたけど、少し調べてみてもいいよね」