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24章 → 25章

―― バーゼルトリア王国  女王執務室



「陛下、例の物の解析の報告がきております」


「早いですね。さて、なにが出てくるのでしょうか……これは……パヴェッソンはすでに目を通しているのですね?」


「はい、解析チームより簡単な説明は受けております」


「謎の魔道具の中に『魔導吸収体』に似た物質があり、その特性を増幅する魔導回路が組み込まれている。結果として『魔導廃棄物』を集める機能を持つ魔道具となっている――驚くべきお話ですね」


「はい、驚くべき、そして恐るべき話です」


「問題はこれがどこで造られたか、そして誰が設置したか、どんな目的があるのか、そういったところでしょうか。この情報を情報局に回して調べてもらってください」


「は、仰せの通りに」


「この件に関して、パヴェッソンはどこの陰謀だと思いますか?」


「真っ先に思いつくのは『魔人衆』ですが、かの集団がこのタイミングで仕掛けてくる理由が分かりません。いまだ別の世界での活動に注力しているようですし、可能性は低いと考えます」


「そうですね。カーミラの話だとクゼーロが倒れてその研究成果が失われたという話ですから、『魔人衆』はその損失の回収を優先しそうです。とすると?」


「次に考えられるのは……大変申し上げにくいことですが、かの侯爵が候補にあがりますな」


「……やはりそうですか。しかしもし侯爵が関わっていたとして、理由はなにがあるのでしょうか」


「中央の弱体化か、それとも危機感を煽って軍事用魔道具の需要を喚起したいのか、もしくはあふれた『魔導廃棄物』をこちらで処理させたかったのか……いずれにしても今回の件が、かの侯爵に有利に働くのは間違いなさそうです」


「はあ……。モンスターの大量発生など、本来なら『魔導廃棄物』の排出を抑える方向にシフトするきっかけになるはずのものなのですが……そちらに動くことはないのでしょうね」


「彼らは目先の利益でしかものを考えておりませんからな。残念ながら魔道具の生産を抑えるというのは民意としても同意を得づらいところですので……」


「我が国……いえ、この大陸、この世界は袋小路に入ってしまっているのかもしれませんね。古代の王が異世界の勇者に頼った理由がわかる気がします」


「陛下……」


「ところでパヴェッソン、あのアイバ氏のことはどう思いますか? 彼が伝説の勇者であること、もしくはそれに匹敵する力を持っていることは間違いのないところですが」


「彼に関しては、あまりに想像を絶する存在なのでどうにもとらえようがありませんな。街が襲われるのを放ってはおけないという部分を見ると、確かに勇者らしく善性の人間であるようには思えますが」


「そうですね。しかし数千のモンスターを一人で殲滅する力を持つ人間というのは……為政者にとってみれば恐ろしい存在です」


「しかも未確認ではありますが、彼は強力な空中戦艦までも従えているようですからな。その気になれば国の一つや二つ落とせるでしょうし、最大限の注意をもって接せねばならぬでしょう」


「ありがたいのは彼が『魔人衆』とは対立しているということですね。カーミラが親しくしているというのもこちらとしては朗報かもしれません」


「彼が『勇者教団』と関わるのであれば、こちらとしても『勇者教団』と接触を図るのも手かもしれません」


「『勇者教団』を介して彼と関係を保っておくということですね。検討はしておきましょう。カーミラの話だとアイバ氏は一月後に長期でこちらに来るという話もしていました。彼に協力を仰げるかどうかは分からないにしても、その時までにこちらもある程度動いておきましょう。優先すべきは先の事件の真相究明、そして軍の再編と『オーバーフロー』監視体制の強化ですね」


「はっ。侯爵領からの出入りを中心に、監視を強めさせております。軍は即応体制を強化する方向で編成をさせるとのことですが、よろしいでしょうか」


「ええ、それでお願いします。あとは財源の確保ですね。予備費を回すにも限度がありますが……。いっそのことかの侯爵に国を任せてしまおうかしら」


「ご冗談にしても性質(たち)が悪すぎますが……心中はお察しいたします、陛下」

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― 新着の感想 ―
[一言] 魔道具を作ると発生する汚染廃棄物が集約されると発生する魔物を討伐する為の魔道具を…… アホかいww
[一言] >施政者としては頭が痛い なので当時の権力者は勇者を最初から徹底的に権力から遠ざけて、魔王討伐後はなんやかんやして用済みにしようとしてたっぽいぜ! いや当時の宰相達、どうしようとしてたんだ…
[一言] 正妻「また新しい女の匂いがする!」
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