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24章 再訪1日目  08

「確かお前が所属してる『魔人衆』ってこの国とは対立してるんだろ。なんでこんなところにいるんだ? スパイでもやってんのか?」


「まあそんなとこだな。ここのところこの国も一気に雲行きが怪しくなってきててよ。正確な情報が欲しいんだと」


 俺たちは今、ちょっと高級そうなレストランで昼食を取っている。カーミラとリーララは久しぶりの故郷の食事に舌鼓を打っているが、俺の対面に座るレグサ少年は仏頂面でむしゃむしゃやっている。


 まあちょっと強引に連れてきたからな。彼にとっても不本意だろうが、こちらにとっては情報収集するにはかなり好都合な出会いなので諦めてほしい。


「雲行きが怪しいってのはなんだ? 戦争でも近いってのか?」


「そんな感じ。つっても俺たちとやろうってんじゃないぜ。なんか王家とどっかの侯爵家が対立しててて、今にもぶつかりそうなんだってよ」


「内輪揉めかよ。面倒なことになってるな」


「こっちはいつもこんな感じだぜ? 外と戦うか内と戦うか、大っぴらにやるか見えない所でやるか、大なり小なり大抵なにかやってる。ロクでもねえ話さ」


「それは一般人にはキツい話だな。その上モンスターまで現れ始めてんだろ?」


「それな。実は王都周辺の遺跡でもモンスターが現れ始めてるって話があって、それを調べるのもオレたちの仕事ってワケさ」


「遺跡にモンスターが? それってダンジョンになってるってことか?」


「そのへんはまだ分かんねえ。ランサスやドルガはそうじゃないかって言ってるけどな」


 ランサスは『赤の牙』のリーダーの金髪イケメン剣士、ドルガは鬼人族の巨漢魔導師だ。恐らく2人が『赤の牙』の頭脳担当なんだろう。


 しかしこっちの世界でもダンジョン復活か。いよいよ『魔王』復活みたいな話になってきたな。


「ところで勇者のおっさんはなんでこっち来たんだ? 例の王家が研究してるっていう『魔王』が気になってんの?」


「それもあるが、俺のいる世界にダンジョンが急に増えてきていてな。その原因がこっちにあるんじゃないかと思って調べに来た。怪しいのは『魔導廃棄物』ってことで、今回はその排出状況を見にきた感じだな」


「へえ、そんなことになってんのか。確かにそりゃ『魔導廃棄物』のせいかもな。だけど調べるってなに調べるつもりなんだよ」


「ああ、俺が調べるわけじゃなくて、それはもっと()()()奴に頼んでる。俺が今ここにいるのは半分は観光と、半分は王家の関係者に話を聞くためだ」


「いくらおっさんが伝説の勇者でも王家は会ってくれないと思うぜ。貴族とか王家なんてのは、基本下々の言うことなんざ聞きやしないからな。てめえらのケツに火がついてんのに、それでも聞く気があるのかどうかは怪しいくらいだしよ」


「まあそこはなんとかなるらしい。な、カーミラ?」


 俺が水を向けると、カーミラは手を止めて「うふっ」と笑った。


「ええそうよぉ。ワタシが話を通せば今の王家のトップが会ってくれるはずよぉ」


「マジかよ。アンタ『勇者教団』の人だろ。そんなコネあんの?」


「ええ、なにしろ学生時代のお友達だからねぇ。もっとも普通にお城に行っても門前払いでしょうけど」


「それじゃダメじゃん。今王城は結構な厳戒態勢取ってるみたいだし、無理はしない方がいいぜ」


 レグサ少年はそう言って肉を頬張った。


 なんかこいつも結構態度が軟化してるよな。まあもともとは悪い奴じゃないっぽいけど。


「そこはなんとかなる。直接会いに行く手段があるからな」


「まあ勇者のおっさんが会えるっていうなら会えるんだろうな。会ったら魔道具の大量生産はやめろって言っておいてくれよ。あれのせいで『魔導廃棄物』が出てんだからよ」


「ワタシのお友達はそれも分かってるはずなんだけどねぇ。一応話は聞いておくわぁ」


「頼むぜ。それとそっちのちっこいのはなんなんだ? 勇者のおっさんの子ども?」


「ちっこいの」というのはもちろんリーララのことだ。その言葉を聞いて、リーララは食べるのをやめてレグサを睨んだ。


「はぁ~? わたしがこんなおじさんの子どもなワケないでしょ。それと『ちっこい』ってなに? アンタだって人のこと言えないでしょ」


「けっ、ずいぶんと口の悪いガキだぜ。勇者のおっさんは先生なんだろ? しっかり教育してやれよ」


「コイツの場合もう手遅れだから」


「おじさん先生は清音みたいなおとなしい娘が大好きだからね~。これだからショウニンセイアイシャは困るのよね」


「小児性愛者な。しかも違うからな」


「なんだか勇者のおっさんも大変だな。だけどそいつ結構強いよな。何モンなんだ?」


「この子は『王家のゴミ処理魔女』なのよぉ」


 答えたのはカーミラだったが、その言葉を聞いてレグサ少年は眉をひそめて複雑そうな顔をした。


「マジか、こんなちっこいのがやってるのかよ。ヒデえ話だな」


「別に同情なんていらないし~。それにわたしたちにとってはそこまで悪い扱いでもなかったんから、勘違いしないでね」


「そうかよ。まあ『魔導特務隊』関連は養成機関ごと廃止されたって話だしな。ほそぼそとフォローだけは続けてるみたいだが、それもいつまで続くんだかな」


「『魔導特務隊』っての、こいつみたいに他の世界に行って『魔導廃棄物』を処理する人間のことか?」


「そうさ。『魔導廃棄物』がほかの世界で悪さしたら恨まれるからな。ビビった王様がなんとかしろって喚いて作られたのが『魔導特務隊』ってワケさ」


「ああなるほど。もしほかの世界と戦争なんてなったらマズいからな」


「勇者のおっさんみたいのがいたら終わりだしよ。ったく、根本的に解決しなきゃどうにもならねえってのに」


 そう吐き捨てるように言うレグサ少年は、どことなく大人びているというか、世を憂いている感じがする。なるほど彼らもそれなりの正義があって活動はしているということか。もっとも『クリムゾントワイライト』が地球でやってることはどうにも正当化のしようがないが。


 しかしなかなかいい話を聞くことができたな。後はカーミラの伝手を頼って王家のトップとやらに会って話を聞いてみるか。

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[一言] 魔人衆がまともでウケるわ。
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