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16章 → 17章

―― 総合商社『九神』 社長室


「……そうか、今回は本当に危なかったのだな。お前が無事でよかった。相羽先生には重ねて礼を言わねばなるまい」


「……『深淵窟』が3つ? 青奥寺家から連絡があったのか。やはり『深淵核』濫用の歪みが出ているようだな」


「ああ、だがおかげでようやく尻尾がつかめた。これで次は現場を押さえられるだろう。お前の身に危険が及ぶのもあと少しだ」


「相羽先生に? しかしこれ以上彼に頼る訳にもいくまい。今回は宇佐家の者も全員動かす。東風原(こちはら)にも応援を頼んだ。問題はあるまい」


「宇佐の腕が……? そんな薬が本当にあって市場に出れば、億の声を聞くこともあるだろうな。相羽先生はいったい……いや、勇者なのだったな」


「ああ、(みどり)ちゃんのことはな……。だが何度も言っているが、あれはお前の過失ではなかったのだぞ。ただ犯人が見つからないだけだ。お前が気を病む必要はない」


「権之内にもそれは伝えたのだがな。私が言っても奴には言い訳にしか聞こえなかっただろう。仕方がないのかもしれん」


「それもこれももう少しで決着がつく。私としても重い話だ。藤真をどう処するかも含めてな……」




―― 九神家 使用人住み込み部屋


「んん……ここは……お嬢様……?」


「宇佐、よかったですわ……。ここは貴方の部屋です。今回もよく私を守ってくれましたわね」


「お嬢様を守る……いえ、今回ばかりは情けない姿をお見せしてしまいお恥ずかしい限りです。相羽様にも力をいただきながら、ミミズ一匹倒せないなど……」


「あそこに着くまで宇佐がずっと一人で戦っていたのではありませんか。あれは私の采配ミスなのです。もう少し落ち着いていれば、宇佐に無理をさせることもありませんでしたわ」


「そのようなことはございません。『深淵窟』にあのままとどまっていても、次々現れる『深淵獣』に押されるだけ。お嬢様の判断は間違ってはいませんでした」


「ありがとう宇佐。本当にあなたが無事でよかったですわ」


「お嬢様にそうおっしゃっていただけるならこれ以上の喜びはありません。ところで、結局は相羽様に助けられたということでしょうか? なんとなくですが、相羽様の腕に支えられていたような気がするのですが……」


「ええ。そういえば宇佐は腕を奪われたことは覚えていて?」


「はい、よく覚えております。この左腕を……左腕……私の左腕がなぜあるのですか? まさか夢だったと……?」


「いえ、それも相羽先生がお治しになったのですわ。『エクストラポーション』とおっしゃっていましたでしょうか、奇跡の薬をお持ちだったようです」


「失った腕を元に戻せる薬……相羽様はいったいどこまで……」


「それと宇佐の武器も片方が食べられてしまったでしょう? それも代わりを置いていってくださいましたわ」


「これは……すさまじい力を感じます。このようなものを簡単に渡すなど、相羽様はなにをお考えになっているのでしょうか」


「本人は『頑張った人間には相応の報酬が必要だろ』とおっしゃっていましたわ。きっと先生の経験からくる独特の価値観がおありなのではないかしら」


「不思議な方ですね。しかし相羽様には返しきれない恩ができてしまいました。さすがに何もしないわけにはいきませんが……」


「それは私も同じですわ。父がなんらかのことはするでしょうが、正直なところ金銭で済むレベルを超えている気がしますわね。今の難題が片付いたら一度きちんと先生にうかがってみましょう。それまではあなたも好意を素直に受け取っておいていいんじゃないかしら」


「わかりました、そのようにいたします」


「宇佐は美人だから交際を申し込まれたりして。ふふっ、さすがにその時は断ってもいいかもしれないわね」


「お嬢様……!? そのようなことはないと思いますが……もし求められたら確かに困ります。私にはお嬢様をお守りするという役目がありますので」


「夫婦で守っていただいてもよろしくてよ」


「お嬢様……! もう、お戯れはおよしください。でももし本当に……いえ、なんでもありません!」

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― 新着の感想 ―
[一言] 英雄色を好むとはいうけど カラフル過ぎませんかねw
[気になる点] あれ? 親父殿がなんか黒っぽく見えてくる……ここまでの反応におかしなモノは無かったから入れ替わりか憑依か。 それともただの考えすぎか。
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