聖女を追放した国のその後
「おい、エリザベート、大根を持ってこい」
「はい、陛下、グスン」
「「おい、陛下が大根を持って踊っているぞ。我らも負けないぞ!」
「「ワッショイ、ワッショイ」」
俺は国王、今日は、近隣の村での収穫祭に参加した。
大根を持って踊るのが、この村の風習だ。面白い!
こうなったのは訳がある。我国は大国だった。
我の即位式前に、婚約者だったこの国の聖女を婚約破棄をして、追放した。
だって、テンション上がらないんだもん。相手も、何か気持ちが通じないみたいだから、聖女の職を辞めさせて、追放した。
彼女がやっている儀式は、何かの儀式で、誰にでも出来ると思ったからさ。
いや、ある程度、修行を積んだ聖女で無ければ出来ない結界じゃないと意味なくないか?
そして、聖女の資格があるもう一人の侯爵令嬢エリザベートを新たに婚約者に指名した。
そしたら、魔物が大挙して押し寄せて来やがった。
あの追放した聖女は女神様の愛し子なんだと
国は分断、各貴族は独立、各村は自分たちで塀や堀を作って自衛をしている。
唯一残った王都とその周辺の村々を保持し、こうして一年、耐えきった。
やったぜ、俺君。
「私の結界がないと魔族が押し寄せてきます」だと?
分るか!結界は、見えないだろうが、そんなもの。人間って見えないものは信じられないんだ。
だから、滅多に地上に顕現されない女神様に、代えて、女神像を作って崇拝しているのに。
今でも、あの女と、この現象に関係があったとはわからない。
帰って来て、あの結界を張れば分るが、そんなこと頼む気もない。
追放された聖女は、隣国の王子に見初められて、あっちの国で聖女をしていると風の便りで聞いたしな。いろいろ何か発明して、ワッショイワッショイ状態らしい。
面倒くさい。
それに、あれだ。聖女一人に国防を頼り切っているって何なの?国としておかしくないか?
これが普通だ。有るべき姿に戻ったのだ。
そもそも、魔族は暇じゃ無い、人間領域のど真ん中の我国に、突然魔族の軍団が攻め入るか?聖女がいなくなるのを虎視眈々と何百年も待っているか?
何で、我国を?意味不明だ。
来たのは知性がない魔物。大きくて魔熊、小さくて、魔アナグマ。
魔熊を騎士団に対処されればいいが、魔アナグマは、夜、畑を狙って来やがる。それが厄介だ。
「エリザベート、魔アナグマが来たぞ。お前も来い」
「はい、陛下、グスン」
「エイヤー」
「それ、それ、私の聖魔法をくらいなさい!」
「ギァ」
「陛下と王妃様が魔アナグマを撃退したぞ。神話の勇者様と聖女様みたいだ」
「うむ。皆の者、ご苦労。大変だが、これからも頑張ってくれ、エリザベード、あれをやってくれ?」
「はい、陛下、グスン、それ、祝福の光の舞」
パラパラと控えめに、光の粒子が村人たちに注がれる。
「有難うございます。聖女様!」
☆☆☆
「おお、今日は、魔アナグマの鍋か、具材は我らが守った畑の野菜だな。うむ。美味しい。エリザベート腕を上げたな!ハハハハハハ」
「陛下、有難うございます。(ポ)」
こうして、我らと残った家臣一同で、国をもり立て、若干ながら、貴族も戻ってきた、領土も少し戻ってきた。
その他は独立、隣国に併合
何とか、小国ぐらいにはなれたか。
「うむ、これでいいのだ。小国が我国の背丈だったのだな」
☆☆☆30年後
「父上、いや、陛下、私は留学先の卒業パーティで、王族の婚約者から無実の罪で、断罪された聖女様を連れて来ました。是非、我国で聖女をして頂き、昔のような大国に戻りましょう」
ケ、息子の隣に、聖女がいやがる。手をつないで、(ポッ)としてやがる。
「あ、そ、婚約は認めるし、我国で保護するけども、聖女の仕事は、祈りと、慈善活動ぐらいにしろ。結界は張らなくていいからな。結界を張っても、人の兵士が通るのなら、0点だ。国防として意味がないし、不便だ。
それが、我国のありよう。他国に併合されようとも、それも運命だ」
「え、陛下、私、真の聖女が結界を張れば、魔物に侵されなくなります。是非にやらせて下さい」
「うっせー、聖女はエリザベートで充分なの」
朕はこうして、聖女に頼らない国にした。
今までがおかしかったのだ。
我国は、魔物の対策を立ることに成功し、魔者を退治する冒険者という職業も生まれた。
エリザベートは、村々を回って祝福をしている。嬉しそうだ。
こうして、我国は真の聖女が必要のない国になった。
最後までお読み頂き有難ございます。