死亡、異世界
はじめまして
美鈴 太陽。人生道半ばでくたばったしがない大学生であり死にたてほやほやの死体……。
その死体の俺が、何故か生きてる。それも全く知らない場所で。俺は必死に死ぬ前のことを思い出した。
今日は休日。現実に友達なんていないのでネット友達とオフ会して現実の友達に昇格させるべく東京にて待ち合わせした。
のだが……うーむ、遅い。
先に約束の店に行っておくか。そう思って近道の路地に入ったんだが……。
まさか日本であんなテロが起きると思ってなかった。覆面の奴らと鉢合わせて、俺が撃たれたことがきっかけになって事件が始まった。まさか日本に生まれて日本で育った俺が銃で殺されるとは……。見事、テロの記念すべき第一被害者となった俺はこんなよく分からんところに来てしまったと……。
兎に角今は情報を集めるしかない。何が何だかまだ分かってない。周りを見よう。
とりあえず街にいることは分かる。例えるなら中世ヨーロッパって感じの。どうやら俺は別世界に転送されたらしい。いや、そう考えなければいけないくらいには意味の分からない状況だ。モンスターとかいるのかな。転送先はご丁寧に人目に触れない狭くて暗い路地。時刻は夕方くらい。街は静かだ。人はいるのだろうか。
……寒っ。
路地に吹く風も相まってこのままだと凍えそうだ。
うーん、困った。お金もないしそもそも宿が何処とか全くもって分からん。もっと事前情報をくれてもいいじゃないか。
寒い……あ、くしゃみでそう。
「「――クシュッ!」」
あ?
誰かとくしゃみが被った。後ろから聞こえたような。
振り返ってみるとそこには"人間"がいた。長めの金髪の女の子。路地の奥に立っていた。こちらを凝視している。
「ああ、暗くて見えなかったもので」
ニコニコしてその場を離れようとする。こんな所にいる奴はやばい人かホームレスか。絡まれる前に逃げよう。
「……あの、離して?」
などと思っていたのだが、いつの間にか腕をその子に掴まれていた。凄い握力だ。
やだなぁ。面倒なことにならなければいいが。
「お前今そこに出現したよな!?魔法を使った感じも痕跡もないし……いや、私は見たぞ!シュンッて!シュンッて現れたな!?どうやった!?」
面倒くさいことになった……。
つづくよ