1/23
夢の中のあと。
夢を見る。
雨が降りしきる中、誰かが自分の名を呼んでいる夢を。
視界はいつも朧げで。
ひんやりとした冷たい雨が、自分の体温を奪っていくのだ。徐々に、徐々に、ゆっくりと、確実に。
「しっかりしろよ、なぁ! ――!」
揺れる黒髪を見て、この状況でしっかりしろとはなんとも無理があるんじゃないかと、皮肉のひとつでも言いたくなる。自分の身体は、上と下で分かれてしまっているのに。
「うわあああん! にいさま! にいさま!」
そう泣き叫ぶ少女を見て、少しだけ後悔をした。泣かないでほしい。泣かせたくなかったのに。この少女には、笑顔でいてほしいのに。
「――」
自分はそこで何か言うのだ。いや、言ったはずなのだが、この雨と泣き声の中では、恐らく誰の耳にも届いてはいない。
そうして目を開けているのも辛くなった頃。
決まって自分は、汗だくで夢から覚めるのだ。